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虚妄の夢と恋

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#エッセイ

失恋3

失恋3

濡れない雨に乾かされて重くなる服を脱いだ
ふたりで傘をさして歩く夢は寝言のようだ
あなたの眼差しは温かいが床は冷えている
わたしの震えは予感だったのかもしれない

黒い雲に青い空が抵抗することはできない
ふたりは空を飛べたなら大地に抵抗できた
あなたの青い空を信じていたが黒い雲を数えた
わたしの黒い雲は測れなかった

数えることはまるで愛を失うための儀式のようだ
愛するためにはなにもかも数えてはい

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失恋2

失恋2

私は嘘つき
それは真実を知っているから
嘘をつける

嘘がばれたとしても
真実はばれないから
嘘をつける

みんな真実なんて望んでいない
嘘つきの私を嫌悪して
乾杯なんてしている

みんな優しいのね
だから特別に
教えてあげるわ

彼の愛を失ったことが真実
言われてみれば納得するでしょう

失った愛を私が失うために
彼の愛を求め続けた
彼もみんなのように私を嫌悪した

私はようやく失うことができた

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失恋

失恋

失恋はけっしてふたりがバラバラに散ることではない
失恋はふたりの最後の共同作業なのである

明るく振舞いあって
幸せだと言いあって
楽しげに歌おう

別れの悲しみを抱えているふたりにとって
失恋した者は失恋した者としての演出をこらす

別れ続けるふたり
失ったものを失うために求めて過ちを繰り返したこともある

頬を伝う雫が絶え間なく流れ出て
言葉でない言葉が口から漏れ出る時

怒りや憎しみや恨みや

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