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気がつけば、私は、、、。読書記録 ウツボカヅラの夢
読書記録 ウツボカヅラの夢
乃南アサ 先生著
双葉社
2008年
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今回は図書館で見つけた、乃南アサさんの
「ウツボカヅラの夢」です。
乃南アサさんは、「水曜日の凱歌」以来の2冊目の作家さんです。
◎あらすじ
主人公は斎藤未芙由(みふゆ)。高校を卒業したばかり。
でも、つい最近母を病気で亡くした。父は若い女性と再婚するといい、小学生の弟はなんとなく上手くやっていけそうだが、未芙由は家に居場所がなくなった。
ここ数年、入退院を繰り返していた母に代わって家事をしてきて勉強はあまり手につかなかったので、進路も決まっていない。
そんな時、葬式で出会った母の従姉妹にあたる鹿島田尚子が、
「よかったら、東京の私の家にきたら」
と声をかけてくれた。
未芙由はずっと長野で暮らしてきたので、東京の生活に憧れがあった。
父に話すと、父は引き留めることもなく、わずか3万円を未芙由に手渡した。
未芙由はもう家に帰ることは、諦めるつもりで、
東京にやってきた。
鹿島田尚子の家は、渋谷の先の閑静な住宅街にある二世帯の大きな家だった。
二階が尚子、夫の雄太郎、大学生の息子の隆平、高校生の美緒の4人と、一階に雄太郎の父母がすんでいた。
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◎気になった箇所
✳︎この家はあまりにもスカスカしている感じがする。4人家族は、最初から好き勝手に散らばっていて、何となく隙間風が吹いているみたいだ。
✳︎✳︎
この都会では、誰もが面白おかしく生きているように見えるけれど、本当にこの街を自分の街と感じて、生き生きと、のびのびと、すいすいと暮らしていけるのは、ある程度お金を持っている連中に限っての話だって。
◎感想
✳︎大学生、高校生、主婦、会社員の夫と言う家族構成では、平日みんな揃って夕食は難しいだろう。
でも誰か、家族の心をつなごうと気にかけている人が必要なのかもしれない。
家族はいわば生活する住処を共にするチームだ。帰ってきた時、勉強に疲れておやつをとりに来た時、朝出かける時、何気ないことばをかわす誰かがいて欲しい。
生きていくには誰かを支えて、誰かから支えられているという実感が必要なのかもしれない。
でも、自分はどうかと問われたら、仕事をして家事を回すのが精一杯で家族の心を支えていたか、と問われたら多分落第だ。
✳︎✳︎
都会での暮らしはお金をかけようと思えば際限なく豊かなものにできる。
そして主人公の未芙由は自分の進路もお金のあるなしで決められてしまうことを知る。
それから、流れに身を任せるかのように生きていくように思える。
お金のある人たちの周りにいて彼らの心の隙間を埋めるような生き方をしていた。
都会は情報が溢れて、華やかな場所、きらびやかな人々も多くいて刺激的な場所だ。
しかし他人と比較し身の丈に合わないものを求めすぎると、どこかで破綻していくのではないだろうか。
新鮮なもの、清潔なものを自分の生活に見合った基準で揃えられたら、それで充分ではないだろうか。
✳︎✳︎✳︎
このお話はウツボカヅラ、食虫植物の夢は虫を食べながら生きていく、誰かの存在を利用しながら逞しく生きていく少女の物語。
ミステリーのような、サクセスストーリーのような、この先もしかしたら自分も他の植物に食べられてしまう、かもしれないそんな予感のする物語だ。
登場人物が多いせいか、一人一人のキャラ設定に少し弱さも感じるが、ストーリーの展開がテンポよく先を気にしながらどんどん読み進めてしまう、良質なエンターテイメントだった。
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◎今日も最後まで読んでいただきありがとうございました😊