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【5分で読める】映画:ジョーカーに学ぶ映画の衣装デザイン

 前回の記事で美打ちについてお話をしました。美打ちをする上で監督・助監督が気にしなければならないことがたくさんありますが、今回は「衣装」について勉強してみましょう。
【美打ちについての記事はこちらから】

 今回、翻訳している記事は以下の記事です。

 映画を作る上で脚本は設計図であり、本当の映画作りは美打ちから始まります。美打ちによって映画の見た目が決まる上、各部署が登場人物、物語を作る上で必要なモノ、発注するモノが分かってきます。今回は映画:ジョーカーの衣装部がどのように衣装をこだわったのかを見てみましょう。

①登場人物に想像を巡らせる
 衣装を決める前にまずは登場人物のことを知りましょう。その人物について知れば知るほど彼、彼女が何を着るのかが分かってくるはずです。本作で観客がアーサーを最初に見るのは、セラピーのシーンです。ここからアーサーはどんな人間だと想像できますか?

【実際の脚本】

【実際のシーン】

 登場人物の衣装を決める上で意識しなければならないことは山のようにあります。しかし、基本的には「彼、彼女はどんな人間なんだ?」という質問に衣装で答えようとすることが衣装部の仕事です。だから、まずは脚本に書かれていることから登場人物について考えてみましょう。それでは、衣装担当のマーク・ブリッジがこの質問にどう答えたのかを見て見ましょう。

「アーサーは退屈な仕事に就き、母親と同居、そして貧乏であることが分かった」

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 こういった基本的な情報を手に入れたら登場人物の衣装に物語性を持たせましょう。例えば、彼が着る服はどれくらい古いのか、彼の服がどのように扱われているか。
 脚本に描かれているアーサーを知ることによって、脚本に描かれていないアーサーの生活に想像を膨らませることができます。
 ブリッジは続けます。

「彼が服を洗濯をする時はおそらく母親と一緒にいれてるだろう。使えるモノは高校時代のモノだろうと持っていそうだった。そして、アパートの部屋の隅にそれが積み上げられていそうだった」

 人物像とライフスタイルが固まったならば、次は衣装のデザインです。生地・色・ファッションスタイル・パターン。これらはすべて衣装デザインに含まれるモノです。ブリッジがどのようにジョーカーを理解し、衣装をデザインしたのか。

「アーサーの服装は彼のアパートのようにしたよ。古く、色あせている。そして、物語が進みアーサーの心情が闇へと落ちていくようになると服装の色も暗くなっていくようにした」

 とても小さなことではあるが、この細部へのこだわりが大きな影響を与えるのである。

②衣装がどのように使われるかを考える
 しかし、上記で述べたこと以外にも衣装部が意識をしなければならないことがあります。それは登場人物が物語上、どんな動きするかを知ることです。アーサーは劇中で走り、車に撥ねられ、殴られるシーンが存在します。つまり、衣装部はこういった行動ができる服の生地で衣装を用意しなければなりません。ブリッジはジョーカーの衣装が古着屋から買ったようなみすぼらしさを演出する必要があったと語ります。

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「その辺の古着屋で買ってきた服を使うことはできなかった。なぜなら複数の人間が同じ服を着なければならない場面もあったからね。(スタント)だから、衣装は1から作って、古着屋で買ったように見えるよう『ヨゴシ』をつけたよ」
*岩崎:『ヨゴシ』とは文字通り小道具や衣装などを汚すことです。それにより、生活感を演出することが目的です。

 アクション映画でなくてもそれぞれのシーンで行われる「動き」について、デザインした衣装がカメラにどう映るのかはしっかりと考えておきましょう。重要なのは、「彼、彼女はどういう人間なのか」「物語の中でどんな動きをするのか」です。

(岩崎:全編を通して必要な衣装を書き出しましょう)

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(岩崎:そして、シーンごとに必要な衣装をまとめましょう。登場人物が着る衣装が決まったら次は登場人物がどのシーンでどの衣装を着るのか、という情報が書かれた衣装香盤というモノがあります。これについてはまた別の機会にご紹介したいと思います)

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