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【書評】アメリカン・デス・トリップ ”暗黒の交響楽"
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これまで読んできた小説の中で、冒頭の書き出しで思い出せる印象的な一節というのは、あまり記憶にない
唯一、例外的に明確に覚えているのが、アメリカの暗黒小説の大家ジェイムズ・エルロイの"アメリカン・デス・トリップ"(原題:The Cold Six Thousand)
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アンダーワールドUSAのトリロジーの第二編で、前作でケネディ暗殺に暗躍した”アタッシュケースと銃を持つ”、3人の男たちの昏い続編が描かれる
60年代の激動のアメリカの、巨大な政治と犯罪の迷宮の中で次第に狂っていく3人の男たちの3視点の物語は、印象的な次の一節で幕を上げることになる
”ダラスへ送り込まれたのは、ウェンデル・ダーフィーという黒人のヒモを殺すためだった。
そんなことができるがどうかはわからなかった。”
この壮大で複雑な物語の、そして何より暴力的な暗示が明確に冒頭から表れている
・・・
そして物語は、ケネディ暗殺直後のダラスから産声をあげる
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前作同様に、史実と実在の人物をフィクションの中に大胆に盛り込み、60年代のアメリカが抱え込んだ、激化するヴェトナム戦争と燃え上がる公民権運動を背景に、自身の利益を確保するために実在の暗黒街のボスたちと、実在の狂った大富豪が暗がりの中で密談を始め・・・
”くそったれ野郎”のケネディの弟のロバートと、マーティン・”ルシファー”・キングの周りで、血煙が混じった嘘と裏切りの不穏な空気が立ち込め、3人の主人公たちが蠢き始める
今回は英語原書で再読ー完全に理解することは出来ないが、和訳は10回は読んでいるので何とかというところ
助詞を徹底的に省き、コンマやスラッシュを多用する楽譜のような異形の文体は、英語ではどのように表されているのだろう