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「英単語ターゲット」シリーズを語る


はじめに

 今回は、大学受験用英単語帳の代名詞でもある「英単語ターゲット」シリーズを紹介していきます。

 英単語帳の代表格として、ときに批判も受けがちなシリーズではあるかもしれません。それでも、「英単語ターゲット」シリーズならではの魅力も多くあります。

 まずはその特徴を確認したあと、魅力について語っていき、そして、よくある批判とそれに対する応答(反論ではなく)を行います。最後に類似の参考書についても紹介します。


 「英単語ターゲット」シリーズとして、本記事で具体的に扱うのは次の5冊です(この記事では、Amazonアソシエイトリンクを使用しています)。

ターゲット編集部編(2020)『英単語ターゲット1900 6訂版』(旺文社)

ターゲット編集部編(2020)『英単語ターゲット1400 5訂版』(旺文社)

ターゲット編集部編(2020)『英単語ターゲット1200 改訂版』(旺文社)

宮川幸久(2005)『基本英単語・熟語ターゲット1100』(旺文社)

花本金吾(2021)『英熟語ターゲット1000 5訂版』(旺文社)


 英語の勉強自体については、『大学受験英語の標準的な勉強法』という記事で詳しく書いているので、もしよければ読んでみてください。


特徴

 魅力について語る前に、まず簡単に「英単語ターゲット」シリーズの紹介だけしておきます。

 まず、最大の特徴は、入試データ分析に基づいた「出る順」の掲載にあります。単なる頻出語の羅列ではなく、最新の入試傾向を反映し、「出る」語句から順に学べてあるというものです。

 基本的なページ構成としては、各タイトルで細かな違いはあるものの、左ページに「見出し語」や「意味」「派生語・類義語・反意語」があり右ページに「例文」があるという形式です。

 各タイトルの収録語数については、その書名の通りです。

 レベルは、『英単語ターゲット1900』「共通テスト~国公立二次・難関私大」『英単語ターゲット1400』「共通テスト~中堅私大」『英単語ターゲット1200』「高校基礎~入試必修」『基本英単語・熟語ターゲット1100』「中学~高校初級」となっています。

 そのほか、学習したかどうかを記録するためのチェックボックスや、「基本動詞の使い方」「英検準1級によく出る単語200」などのコラムもあります。

 細かい説明は、これから魅力について語っていく中で触れていきます。


魅力

 「英単語ターゲット」シリーズは、あまりにスタンダードな参考書なので、魅力について語ろうと思っても、少し困ってしまうところがあります。

 でも、少し視野を広げてみてみると、「英単語ターゲット」シリーズだけにある魅力というのも、たしかにあるのです。

 「英単語ターゲット」シリーズというのは、最初に述べたように、英単語帳の代表格です。昔から、そして今も多くの人が使っています。そのため、「英単語ターゲット」シリーズには、多くの「拡張機能」があるのです。

 一般に、どの単語帳にも、それをより有効に使うための他の参考書が販売されていたりします。でも、新しい参考書だとそういうものはありません。逆に、最も歴史のある「英単語ターゲット」シリーズではそれが豊富にあります。


タイトルの豊富さ

 まず、本題に入る前に一つ、歴史があるからこその特徴として、タイトルの豊富さというのも挙げられます。

 多くの単語帳に、メインとなるタイトルとは別に、「入門編」「Basic」というのは用意されていたりします。しかし、それはあったとしても1冊程度です。

 「英単語ターゲット」シリーズには、それが豊富にあるのです。『英単語ターゲット1400』『英単語ターゲット1200』『基本英単語・熟語ターゲット1100』まであります。

 「英単語ターゲット」シリーズには、英熟語を扱う『英熟語ターゲット1000』もありますが、それも英単語帳のシリーズとしては珍しいとも言えます。

 自分に合ったレベルの単語帳を選べるという、この豊富なラインナップが、まず「英単語ターゲット」シリーズの魅力の一つです。


「英文で覚える 英単語ターゲットR」シリーズ

 さて、「英単語ターゲット」シリーズには、それを有効活用できる参考書が数多くある、と先ほど話しました。

 まず面白いものとしては、たとえば、「英文で覚える 英単語ターゲットR」シリーズというものがあります。

宇佐美光昭(2020)『英文で覚える 英単語ターゲットR 英単語ターゲット1900レベル 改訂版』(旺文社)

 これは、「英単語ターゲット」シリーズに掲載されている単語を中心として構成された英文がまとめられているものです。

 これを使えば、「英単語ターゲット」シリーズを、「速読英単語」シリーズと同じように学んでいくことができます。すでに「英単語ターゲット」シリーズを使っている人で、自分の使った単語の復習をしながら長文を読みたいという人におすすめの参考書です。

 これは、『英単語ターゲット1900』対応のものだけでなく、『英単語ターゲット1400』対応のもの『英単語ターゲット1200』対応のもの『英熟語ターゲット1000』対応のものも、それぞれあります。


単語カード

 さらに、「英単語ターゲット」シリーズには、単語カードもあります。

ターゲット編集部編(2020)『カード英単語ターゲット1900 6訂版 Part1』(旺文社)

 『英単語ターゲット1900』については、Part1対応のものPart2対応のものに分かれています。単語カードは、他に、『英単語ターゲット1400』対応のものと、『英熟語ターゲット1000』対応のものがあります。


書き覚えノート

 単語を何度も書きながら覚えていきたいという人向けに、書き覚えノートというのもあります。復習と定着をあわせて、何度も書いていくうちに単語を覚えられるように設計されています

ターゲット編集部編(2020)『英単語ターゲット1900 6訂版 書き覚えノート』(旺文社)

 これには、『英単語ターゲット1400』対応のものと、『英単語ターゲット1200』対応のものがあります。


実戦問題集

 さらに、実戦問題集というのもあります。ここでの「実戦」は、身につけた英単語がしっかりと定着しているかを確認するというイメージです。意味や類似語句を確認する問題が載っています。

ターゲット編集部編(2020)『英単語ターゲット1900 6訂版 実戦問題集』(旺文社)

 この実践問題集は、『英単語ターゲット1400』対応のもの『英熟語ターゲット1000』対応のものがあります。


応用トレーニング

 実戦問題集と似ているので注意が必要なのですが、「応用トレーニング」というものもあります。

 これは、「英文で覚える 英単語ターゲットR」シリーズに掲載されていた長文に、問題をつけて、長文読解や英作文の問題演習をできるようにしたものです。

ターゲット編集部編(2022)『英単語ターゲット1900 6訂版 応用トレーニング』(旺文社)

 これは、『英単語ターゲット1900』対応のものと、『英熟語ターゲット1000』対応のもののみとなっています。


ターゲットの友

 ここまでが、「英単語ターゲット」シリーズを有効活用できる、"書籍"の紹介でした。「英単語ターゲット」シリーズには、「ターゲットの友」という"アプリ"まであります。

 説明の流れの関係で紹介が遅くなってしまいましたが、これは、勉強にかなり役立つとても良いアプリです。

 基本的には、英単語を覚えるためのアプリと言えます。しかし、かなり充実していてモチベーションを維持するための機能が数多くあります

 残念ながら完全無料ではないのですが(それでも無料で使える機能もそれなりにある)、このアプリ一つで、「英単語ターゲット」シリーズの各種タイトルに対応しています


mikan

 また、英単語勉強アプリ「mikan」で、「英単語ターゲット」シリーズを学ぶこともできます。こちらも各種タイトルに対応しています。


まとめ

 このように、「英単語ターゲット」シリーズには、その単語帳自体に大きな特徴はないものの、それを有効活用するためのものが数多く存在していて自分に合った勉強の仕方を選べるという大きなメリットがあるのです。

 これほどいろいろな機能が揃ってる単語帳というのは、歴史の長い「英単語ターゲット」シリーズ以外にはほぼありません。このシリーズを使っている方は、少し視野を広げていろいろな参考書を見つつ、自分に合った勉強の仕方を探してみると良いのかなと思います


よくある批判とそれに対する応答

 ここまで、「英単語ターゲット」シリーズの魅力について語ってきました。しかし、このシリーズに対しては、批判というのも多く向けられています。ここでは、その批判について考えていきます。

 批判をされている点は様々ありますが、重要なものをひとつだけ取りあげて、それに対して応答したいと思います。

 「英単語ターゲット」シリーズ自身がその魅力として掲げているものに、「一つの単語に一つの意味」というのがあります。

 英単語は日本語における単語と一対一で対応するものではないのに、無理に対応させることで、それぞれの英単語が本来持っている意味の広がりを見えにくくさせてしまうのです。

 これは、すごくもっともな批判です。実際僕も、「英単語ターゲット」シリーズに記載されている意味は答えられるけど、そのイメージやニュアンスを理解していなくて、長文の中でその単語を見ても、機械的にしか当てはめられない生徒を多く見てきました。

 もし、「高校1冊目の単語帳でおすすめのものは何か?」と聞かれても、英単語のイメージを理解しやすい、竹岡広信(2024)『改訂版 必携英単語LEAP』(数検出版)を薦めます。

 しかし、「英単語ターゲット」シリーズ「一つの単語に一つの意味」を掲げていることで、人によってはそれが覚えやすくなっていることもまた事実でしょう。

 英単語の勉強というのは、語源を意識したり派生語から覚えていくなど、いろいろな方法もありますが、しかし、ある程度真っ正面から丸暗記していくべき側面があることも間違いありません(そもそも単語力がないと語源や派生語を使って新しい英単語と繋げられない)。

 そうであれば、まずはある英単語を「一つの単語に一つの意味」として、意味の核になるものをゴリ押しで(?)覚えてしまうのも一つの手です。そしてその戦略を取るなら、「英単語ターゲット」シリーズは有用なものとなりえます。

 重要なのは、単語を学んだあとに、しっかり英語長文に触れたりして、そのイメージを広げていくことです

 まとめると、英単語の勉強では意味の広がりを意識すべきで、そう考えると「英単語ターゲット」シリーズは少し使いにくいかもしれないけれど、でも、場合によっては有用なものになるし、そこで英単語を覚えたあとにたくさんの英文に触れていけば何の問題もない、ということです。


類似参考書の紹介

 「英単語ターゲット」シリーズは標準的な参考書なので、わざわざ「類似参考書の紹介」などをせずとも、似た形式の参考書は多くあります。とはいえせっかくなので、いくつか紹介していきたいと思います。

 まず、「英単語ターゲット」シリーズには、大学受験向け以外のものもあります。

松井こずえ(2024)『TOEIC L&Rテスト英単語ターゲット1100 新装版』(旺文社)

 『TOEIC L&Rテスト英単語ターゲット1100』には、大学受験用の「英単語ターゲット」シリーズのような対応参考書はあまりありません。とはいえ、大学受験用と基本的な構成は同じなので、好きな人は楽しく使えるでしょう


 中学版の英単語ターゲットというのもあります。ただ、これは、「ターゲット」という名前はついているものの、大学受験用の「英単語ターゲット」シリーズと同じ構成ではないので注意が必要です。

旺文社編(2019)『高校入試 でる順ターゲット 中学英単語1800 四訂版』(旺文社)

 これには、書き覚えノートに似た形式の練習ノート、ほかに暗記カードもあります。また、英熟語を扱ったものもあります。


 また、「英単語ターゲット」シリーズの出版社である旺文社が出している参考書は、似た形式のものであることが多いです。たとえば、「英検 でる順パス単」シリーズは、同じ形式で定評のある英単語帳です。

旺文社編(2021)『英検準1級 でる順パス単 5訂版』(旺文社)

 このシリーズは、「英単語ターゲット」シリーズと同じく、対応の参考書が数多くあります。

 まず、「英文で覚える 英単語ターゲットR」シリーズに類似した「英検 文で覚える単熟語」シリーズがあります。

旺文社編(2022)『英検準1級 文で覚える単熟語 4訂版』(旺文社)

 他に、「英検 でる順パス単 書き覚えノート」もあります。

旺文社編(2021)『英検準1級 でる順パス単 書き覚えノート 改訂版』(旺文社)

 また、「実戦問題集」シリーズに類似した「英検 でる順パス単 クイックチェック」シリーズもあります。

旺文社編(2024)『英検準1級 でる順パス単 クイックチェック』(旺文社)


おわりに

 これまで、「英単語ターゲット」シリーズについて、その魅力や批判、類似参考書などを語ってきました。

 高校一冊目の単語帳は、自分で選ぶというよりは、学校から指定されて購入するということが多いと思います。その結果、有名な「英単語ターゲット」シリーズが一冊目の単語帳となっている人も多いことでしょう。時に批判されがちではありますが、十分に優れた単語帳です。

 対応した参考書を使ってみたり、真っ正面から覚えてその知識を主軸として2冊目の単語帳でさらに単語力を強化したり、「英単語ターゲット」シリーズを上手く使えるかは、本人次第です

 受験生の皆さん、頑張ってください!!

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