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#お仕事小説

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記事一覧

「はい。こちら人事部特務課です」_第5話_創作大賞2024_お仕事小説部門

「はい。こちら人事部特務課です」_第5話_創作大賞2024_お仕事小説部門

 静かなエントランスで、俺と水木は向き合っていた。
「水木……。お前、何してんだよ」
「……それは、どういう意味で? なんで俺がここにいるかってこと?」
「しらばっくれるなよ。全部、今知ったんだ。なんでお前が、どうして!」
 正当な理由があるなら知りたい。願わくば、水木じゃないと証明したい。
「相変わらず納得できる理由がないとダメなんだな。お前は」
 水木は悲しそうな表情で少し笑った。目には光がな

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「はい。こちら人事部特務課です」_第4話_創作大賞2024_お仕事小説部門

「はい。こちら人事部特務課です」_第4話_創作大賞2024_お仕事小説部門


「はい。SSK株式会社の佐々木です」
 スマホの画面をタップしスピーカーモードにする。
「ああ、お世話になります。先日、お電話いただいた田中祐介の父です」
「折り返しありがとうございます! 実は、祐介さんが3日前から会社に来ていなくて。連絡もない状態でしたから、心配になってお父様にご連絡した次第だったんです」
「なんとまあ。うちのバカ息子が、ご迷惑おかけして申し訳ありません」
 無邪気で明るい田

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「はい。こちら人事部特務課です」_第3話_創作大賞2024_お仕事小説部門

「はい。こちら人事部特務課です」_第3話_創作大賞2024_お仕事小説部門


 翌朝、会社に着くと黒崎さんはもう仕事を始めていた。カタカタと少し強めのタイピング音だけが鳴る部屋。これを、まさに気まづい空気と言うのだろうか。
「おはようございます」
「……おはよ」
「あの、昨日はすみませんでした。生意気なこと言って。黒崎さんの言うことが正しいってちゃんと理解してます」
 黒崎さんは、俺を見た後、俯きつぶやいた。
「こちらこそ……言い方が悪くて、ごめん」
 よし、ちゃんと言っ

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「はい。こちら人事部特務課です」_第2話_創作大賞2024_お仕事小説部門

「はい。こちら人事部特務課です」_第2話_創作大賞2024_お仕事小説部門


「おお、葵かね。早速サマになっているようで感心だよ」
 じいちゃんからの内線だ。
「調査依頼なのだが、黒崎クンは席を外しているのかね」
 表面的に俺を褒めながらも、黒崎さんを頼ろうとするじいちゃんは正直だ。
「あと15分くらいで戻ってくるはずだよ。要件を聞いておこうか?」
「いや、葵が初めて持つ案件だ。黒崎クンの戻る頃、そちらに向かおう」

「つまり、営業三部の田中裕介さんが、昨日は休むと連絡が

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「はい。こちら人事部特務課です」_第1話_創作大賞2024_お仕事小説部門

「はい。こちら人事部特務課です」_第1話_創作大賞2024_お仕事小説部門

・あらすじ
 SSK株式会社の跡取り息子である佐々木 葵《ササキアオイ》は、営業部での輝かしい実績を引っ提げて、祖父が顧問として担当する人事部特務課に異動した。しかし、待ち受けていたのは無愛想で冷淡な女性同僚、黒崎 柳《クロサキヤナギ》。噛み合わないバディでハラスメント対策の業務に取り組む中、突然事件は発生した。営業部のエース、田中 裕介が失踪し、謎の退職代行が動き出したのだ。田中はどこへ?何が真

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