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雪乃日 朝日(YUKINOHI ASAHI)
2024年7月23日 01:58
静かなエントランスで、俺と水木は向き合っていた。「水木……。お前、何してんだよ」「……それは、どういう意味で? なんで俺がここにいるかってこと?」「しらばっくれるなよ。全部、今知ったんだ。なんでお前が、どうして!」 正当な理由があるなら知りたい。願わくば、水木じゃないと証明したい。「相変わらず納得できる理由がないとダメなんだな。お前は」 水木は悲しそうな表情で少し笑った。目には光がな
2024年7月23日 01:57
「はい。SSK株式会社の佐々木です」 スマホの画面をタップしスピーカーモードにする。「ああ、お世話になります。先日、お電話いただいた田中祐介の父です」「折り返しありがとうございます! 実は、祐介さんが3日前から会社に来ていなくて。連絡もない状態でしたから、心配になってお父様にご連絡した次第だったんです」「なんとまあ。うちのバカ息子が、ご迷惑おかけして申し訳ありません」 無邪気で明るい田
翌朝、会社に着くと黒崎さんはもう仕事を始めていた。カタカタと少し強めのタイピング音だけが鳴る部屋。これを、まさに気まづい空気と言うのだろうか。「おはようございます」「……おはよ」「あの、昨日はすみませんでした。生意気なこと言って。黒崎さんの言うことが正しいってちゃんと理解してます」 黒崎さんは、俺を見た後、俯きつぶやいた。「こちらこそ……言い方が悪くて、ごめん」 よし、ちゃんと言っ
2024年7月23日 01:56
「おお、葵かね。早速サマになっているようで感心だよ」 じいちゃんからの内線だ。「調査依頼なのだが、黒崎クンは席を外しているのかね」 表面的に俺を褒めながらも、黒崎さんを頼ろうとするじいちゃんは正直だ。「あと15分くらいで戻ってくるはずだよ。要件を聞いておこうか?」「いや、葵が初めて持つ案件だ。黒崎クンの戻る頃、そちらに向かおう」「つまり、営業三部の田中裕介さんが、昨日は休むと連絡が
2024年7月23日 01:55
・あらすじ SSK株式会社の跡取り息子である佐々木 葵《ササキアオイ》は、営業部での輝かしい実績を引っ提げて、祖父が顧問として担当する人事部特務課に異動した。しかし、待ち受けていたのは無愛想で冷淡な女性同僚、黒崎 柳《クロサキヤナギ》。噛み合わないバディでハラスメント対策の業務に取り組む中、突然事件は発生した。営業部のエース、田中 裕介が失踪し、謎の退職代行が動き出したのだ。田中はどこへ?何が真