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部位別レンコンの味わい方

冬の時期、煮物に欠かせないのがレンコン。お正月のおせちにも入っているレンコン。多数の穴があることから「未来が見通せる」「将来の見通しが良くなるように」といった願いをこめた縁起がいい食べ物として有名だ。

特にどんな料理がおいしいということもなく、甘味や酸味があるわけでもなく、シャキシャキとした食感を楽しむ食べ物と思っていた。

しかし、このたび門真れんこんなるものに出会い、今まで食べていたのはレンコンだったのか?!と衝撃を受けた。


門真れんこんとは?

大阪府にある門真市。最近では三井アウトレットパークがリニューアルしたり、その中にコストコが入店したりと商業施設で話題の街だ。

といったイメージで、農産物を作っているとは思っていなかった。大阪産(おおさかもん)を売り出そうと吉村知事がやっきになっているがリストされているのは泉州なすといった有名どころだけで、門真れんこんはリスト外。今からでも遅くはない、入れるべき大阪産である。

というのもこの門真れんこん。江戸時代から続いている農家さんが手掛けているまさに伝統野菜。しかも、超粘土質の中に入り、1本、1本、全力で魂を込めて、掘っている代物で、もうおいしいに決まっている要素満載なのだ。

その様子は最後に紹介するとして、まずは農家さんが経営しているれんこん屋で門真れんこんの部位別コース料理なる、珍しい料理をいただいた。レンコンだらけって、飽きるんじゃないかと思っていたが、どっこい。一品一品感動の嵐だった。

部位別門真レンコンコース

ロース、バラ、サーロイン、カルビ、スネ、イチボ、テール、タン・・・といえば牛肉の部位。

ここの部位が特に好きといった人それぞれの好みもある。しかし、レンコンの部位とは一体?!レンコンはレンコンで部位なんてあるのかと思っていたが、部位によって味わい、食感が違うのだ。しかも、門真レンコンはすこぶる甘い。レンコンってさつまいもでしたっけ?里芋でしたっけ?ともはや芋を食べているような柔らかさ甘さ。それが門真レンコンなのだ。

門真レンコンチップス

最近ではスーパーのスナックコーナーでもみかけるようになったレンコンチップス。ただ素揚げしただけのシンプルな調理法ながら甘味があとからあとからじんわりと口の中に広がる。

店主曰く、レンコンの一番新しいところを使っているのだそうだ。
新しいって何?ということで、掘りたて門真レンコンで解説。

レンコンが連なっているのを見たことがあるだろうか。最初にできたレンコンが肥大化し、そこから新しい節(レンコン)がぴょこぴょこ連なっていく。よって、根本の若い節が一番新しいことになる。見分け方は、若い子は小ぶりなのと、先端がとがっていること。

根本に近いほうが小ぶりで色白、みずみずしくてシャッキシャッキ。
最初に出来上がっちゃって粘土質の中で栄養分をたっぷり含んだほうは、太くてどっしり、色も茶色と白色が混ざったクリームっぽい色になり、ねっとりとした粘り気と甘味がある。

若い子は生や火をさっと通す料理、年寄は煮物や天ぷらなど油で存分に熱を加えた料理にあうということらしい。

門真れんこんサラダ


そんなわけで、若い子を使ったレンコンサラダは、さっと湯通しするだけでシャキシャキ食感だけれども、サックりとした食感も残るデザートのようなサラダに。いくらでも食べられる。

門真レンコンの白和え

江戸時代から続く郷土料理だそうで、この一品は食べてたまげた。白和えの胡麻風味ももちろんおいしいのだが、レンコンが超絶柔らかい。食感がもはや里芋並みに優しい柔らかさ。しかし、レンコン特有の繊維質もあり一度食べたら忘れられない斬新さがあった。

門真レンコン旨煮

このあたりからお年寄りレンコンの登場。お年寄りといっても柔らかさは天下一品。やっぱり芋にしか思えないほどほっくほく。これだけの旨味をもつのはなぜか。鉄分の含んだ重い粘土質の中でじっくり育てられるからであり、その粘土質の中で栄養が凝縮されるのだ。

店主はいう。
「旨いものほど手間暇がかかっている」

毎日おいしいものを育ててくれる農家さんに感謝をしながら一口一口食べさせていただく。

門真レンコンの天ぷらと串カツ

これぞ大阪グルメ。二度づけごめんのサラサラソースと岩塩が添えられるが、正直、素材の豊かな旨味をストレートに味わうなら何もつけないのがベスト。口中にあふれるレンコンの旨味にうっとり。

門真レンコン饅頭

これはもう高級料亭のお味。上品な甘さと香りが立ち、一口含むごとにうまさが広がる。レンコンの風味と出汁の香りがふわっと鼻から抜けつつ、饅頭と餡がごくりと喉を通る。なのに後味は軽い。これぞ美味の極み。

レンコンの炊き込みご飯

ここまでくるともう言葉はいらない。自然と箸の上げ下げがつつましくなっていき、一口、一口を丁寧に味わうようになる。すると食感だけではなく、甘み、風味、ボリューム全てが計算し尽くされたスペシャリテであると腹落ちする。

門真れんこん蓮根餅(はすねもち)

こちらも江戸時代から続く郷土料理。レンコンの中にお米をいれることで、腹持ちもするスイーツとなっている。レンコンはもちろんほっくほっくで甘い。きな粉と餡子をマリアージュすると、濃厚な甘さと香りが立ち、口の中で合わさると、やわらかい食感と風味が豊かな満足感へと昇華する。

これだけレンコンを食べてもあきることはないどころか、まだまだ食べたくなる。味覚の喜びを堪能できる料理の数々だった。

蓮根ならぬ蓮魂をみた

今回、ありがたいことに門真レンコンの収穫をみせていただける機会を得た。沼の中に手をいれ、手探りでレンコンを引き寄せていく・・・そんなイメージだった。

が、そんな生ぬるものじゃなかった。

単なる粘土質ではない。超スーパーウルトラ粘土質。鍬を入れるたびに全体重をのせて粘土質の中に鍬をさし、そしてかき出す。重い泥をひと堀するだけで重労働だ。この重い粘土質の中からレンコンを見つけたとしてもむやみやたらにひっぱれない。商品価値が下がるからだ。

丁寧に丁寧に泥をよせ、ゆっくりゆっくりたぐりよせていく。

どろんこ遊びをしているのではない。立ってられないほど重い粘土質の中からレンコンを掘っていくとこんな体制にならざるを得ないのだ。そ~っとそ~っとたぐりよせていく。

1本掘るのに20分はかかっただろうか。これだけの手間暇をかけて掘るからこそ、あの口に運んだ瞬間、甘く豊かな余韻を残す魅惑のレンコンになるのだろう。

門真市は道路建設、商業施設とどんどん発展している。だが、街がどんなにうつりかわっても、時代に左右されずに昔と変わらない味を守り続けてほしいと切に願った。

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ゆきんこ
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