役立たずだからイヌ
夏の時期、めきめきと生長してくる雑草たち。
その中でも、自分の腰くらいの位置まで成長してくるのがイヌビエだ。
ヒエっていうくらいだから食べられるんだろうか・・・と昔、しげしげと眺めていたら、ばあちゃんが近づいて来た。
「ご飯が今ほどないときはヒエを食べたもんだ。黄色く色づくと、刈り取って乾燥してな、そのあとはみんなで棒で叩いて脱穀してな、米と混ぜて腹を満たしたもんだ。石臼でひいて、粉にしていろんなものにいれて食べたもんじゃ」
「ということは、邪魔者といわれているこの雑草?ヒエ?は食べられるんじゃないの?」
「これはヒエの仲間だが、イヌビエで食用には向かん。役立たずのものにはイヌとつけるんじゃ」
「イヌは役立たずじゃないよ。番犬にもなるし、一緒に散歩にもいってくれるし」
「ほほお、確かにな。うちのコロ(ペット)もかわいいしのう。ただ、犬死なんて言葉もあるから、そんなところからきてるんじゃろか」
そのときは、ふ~んと思って流したが、いまだになんで役立たずの植物に「イヌ」とつけるのかいまいちわかっていない。
「お前はほんとに食べられないのか?」
といつもイヌビエを見ながら話しかけ、あのときのばあちゃんとの会話を思い出す。
お盆になると、実家に帰省し、そこかしこに散らばるじいちゃん、ばあちゃんとの思い出に触れる。いろんな知恵袋を持っていたじいちゃん、ばあちゃんからもっと教わっておけばよかったなと思う。そんなじいちゃんばあちゃんの年齢になった両親。今のうちにいろんな知恵を授けてもらおうと毎晩晩酌をしながら雑談をするのである。もっと話をしておけばよかったと後悔しないために。
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