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意外な人が意外な曲を選んで意外なアレンジをすると全く別の歌になる

すでに世にでた歌を別の人が歌うカバー。いやいや、もともと歌っていた第一人者が歌うのが一番いいだろうとずっと思っていて、カバー曲の魅力がさっぱりわからなかった。その歌をその歌手の声で歌っているのに慣れてるから違和感しかなかったからだ。歌がうまいと言われている人がうまく歌い上げていても、な~んか違うともやもやしていた。

声の力

それが一変したのがスキマスイッチの「奏」を玉置浩二がカバーした番組。切ない歌詞に哀愁ただようメロディー。もちろんスキマスイッチの二人の歌声もはかなげで苦しげで温かい・・・が、2番を玉置浩二が歌い始めたとき、ぞくっとした。いや、違う、なんか心の奥底から震えるものが湧き上がってきた。

スキマスイッチの場合は、最後になにか伝える「さよなら」に変わる言葉を模索するような感じで、玉置浩二の場合は、「さよなら」をいおうと決めているんだけど、それを言ってしまったらもうそこでこの縁は永遠に終わりのような苦しい胸の内を歌っているそんな違いを感じがした。

玉置浩二のあのミステリアスな歌声にのせると、苦しくて、切なくて、もうどうにもならない恋が見事に歌声だけで表現してしまうのがすごい。人の声音とはこれほどまでに違うものかと思った。

思い返せばこんなことがあった。おばあちゃんがなくなるとき。おじさん、おばさん、孫と数人が取り囲み、おばあちゃん、おばあちゃんと叫ぶ中、一番お世話をしたわたしのお母さんが最後にやってきた。耳元でそっとささやく。

「お母さん」

もう意識がなく、目もあかないのにも関わらず、声だけで涙を流したという。声は人の奥底まで記憶に残るものなのだ。

竹内まりやさん=恐ろしく引きづる女=怖い

竹内まりやさんとの出会いは火曜サスペンス。お母さんが好きだったもんで、いつも一緒になって、見ていたのだが、出てくる登場人物、みながみな重苦しいなにかを抱えていて、見ていてかなり息苦しくなっていた記憶がある。

そんなドラマの主題歌はこれまたどれもこれもくら~いおも~い感じで元気が出る歌はひとつもなかった。子ども心に「苦しい・切ない」はわかるはずもなく、見終わったあとはいつもただぐったりしていた。

そんな中流れてきたのが竹内まりやさんの「シングル・アゲイン」。タイトルからして、暗さ満開。また一人に戻っちゃった・・・という感じだろうか。しかも冒頭の

♪あなたを連れ去る あの女性(ひと)の影に
おびえて暮らした 日々は遠い♪

連れ去る、女性をひとと読む、影、おびえる、遠い・・・

これだけのネガティブワードを冒頭から散りばめてくる竹内まりやさん・・・どれほど重いなにかを抱えて生きているのか?と疑ったものだ。

そのあとにお母さんが好んで聞いていた「駅」も車の中で聞いた。

♪見覚えのある レインコート
黄昏の駅で 胸が震えた
はやい足取り まぎれもなく
昔愛してた あの人なのね
ーーーーーー
さりげなく 告げたかったのに♪

さりげなくも告げなくていい。別れたんだからほっといてくれ!と一人突っ込んだのを覚えている。

竹内まりやさん、あったことがないものの、怖い、超ネガティブ、勝手にそんなイメージをいだいていた。

そこから数十年後。友人から突然つげられた。

「今、竹内まりやにはまってんの」

もうこの友人とも話があわなくなるかも・・・と思ってしまうほど、竹内まりやさん=恐ろしく引きづる女=怖いが染みついていた。

元気を出してで元気が出た

そんな彼女がハマっているという曲が「元気を出して」

駅とシングルアゲインしか知らないくせに、珍しく応援メッセージ、人を後押しするようなタイトルだなと思い、ひとまず聞いてみた。

あれ?なんだろこの優しい気持ちになるメロディー。
あれ、この透明感あふれる声はあの竹内まりやさん

とあれ?の洪水をおこしながら聞き入っていると

♪チャンスは何度でも 訪れてくれるはず
彼だけが 男じゃないことに気づいて♪

そうなのよ!そうなのよ!まさにバカ男に振られた(←勝手に付き合っていると思っていただけ)直後だっただけに、グッサグッサと突き刺さった。

今まで避けていたのだが、ここで急に竹内まりやさんとはどういう人なのか?というリアル竹内まりやさんが気になり、御姿を拝見。

細くて、白くて、目がくりくりとした透明感あふれる人だった。
勝手に”貞子”をイメージしていただけにいろんな意味で衝撃の竹内まりやデーだった。

クレイジーケンバンドのケンさんが歌う「駅」

わたしを間違った竹内まりや像へと導いた「駅」

NHKの The Coversで今年デビュー45周年を迎えた竹内まりやナイト!が放送されていて、そこであのクレイジーケンバンドがカバーしたのだ。

あのくら~い歌を、男らしい声を持っているケンさんはどんな風に歌って、どんな雰囲気を醸し出すのか興味があった。あれから何年もたって、酸いも甘いも知り尽くした?かどうかは定かではないが、自分なりに単なる暗い歌ではないことはわかっている。が、やはり、別れたのにさりげなく告げたい気持ちはいまだによくわからない。

ズンジャカズンジャカのビートを刻みながら黒いハットをかぶり、茶色の渋いサングラスをかけながら歌う「駅」は、私が知っている駅ではなかった。人気のない駅のホームの先頭にたたずむあやしげな男、もしくは愛している女がいるものの、都会へ出ることを決意し、愛よりも仕事をとる男、寅さんのように自由気ままに世界を旅してあるく男、彼のまなざしは愛だの恋だのは求めてない、もっと広い世界を見るために駅にいるのだ。お前が幸せならそれでいい、俺の後ろ姿を見送らないでくれ、もう忘れよう、愛していたことは覚えているから・・・

そんな男の哀愁漂う歌に変わっていた。と思っていたらさすがリリー・フランキーさんめっちゃ面白い自論を展開。

出所してきた男が線路沿いを歩きながら日本海を眺めている・・・高倉健さんのステーションを思い出しましたね。

リリー・フランキー

音がない都会のビルの間を路面電車がひとつ通っていて、哀愁をメロウで包んで、ちょっと強がっている女性の歌に聞こえました。

上白石さん

金髪がやけに似合っていない上白石さんのコメントは、すみません、よく理解できなかった。哀愁をメロウで包む・・・どういうことなんだろう。そうすると強がっている女性になるのか?

女性の歌を男性が歌うとこうも印象が変わるのかとしみじみ思いながら聞いていた。

「意外な人が、意外な歌を選んで、意外なアレンジをすることがカバーの魅力」

と竹内まりやさんがおっしゃっていた。なるほどね。確かに、なぜこの曲を選んだんだろう、そしてどう歌おうと思ったのだろうと気になる。カバー曲の魅力は果てしない。

知らないアーティストに出会える番組

The Coversは定期的に見る番組ではなく、たまたまNHKのニュースをみていて、たまたま宣伝を目にし、たまたま気になるアーティストがでて、見ようと思って見る番組で、この番組はたまたまが続く。

そして、今回の竹内まりやナイト。こんな人がこんなカバーをしていたのか。この歌は竹内まりやの提供曲だったのかと新しい発見が盛りだくさん。

わたしの憧れの歌「けんかをやめて」
一度は自分のために男二人が争うのをみてみたい・・・という野望はもろくも崩れ去ったが、この歌も提供曲。

友人が力をもらえた「元気を出して」はなんと薬師丸ひろ子に提供。
わたしに間違った竹内まりやを埋め込んだ「駅」は中森明菜のアルバム収録曲だったのだそうだ。

この番組は誰かが誰かの曲をカバーする番組だが、この番組に出てくるアーティストは、歌がうまいことが条件のはずなので、かなりうまい人がどんどん登場する。そして、この人誰さん?のはじめましてさんもたくさんいる。けれど、玉置浩二しかり、見た目ではなくとにかく声がいい人が多い。

スターダストレビュー「元気をだして」
のびのある声音とハモリが優しい「元気をだして」は、ゆる~く元気になろうよとエールを送ってもらえるような感じ。

シシド・カフカ「不思議なピーチパイ」
カフカといわれると、海辺のカフカを思い浮かべるが、このお方、声がすこぶるかわいい。というか歌っているのを始めてみた。キュートなピーチパイを聞いて、気分はピーチパイになったが、ピーチパイの季節じゃないので、アップルパイを買いに行くことにした。

フジファブリック「純愛ラプソディ」
初めましてのバンド。歌そのものじゃなく、前髪が無造作に目のあたりにかかって、女性っぽいショートカットで上目遣いする姿がどうにもこうにも、上述したバカ男にそっくりで歌が入ってこなかった。嫌な思い出はいつもどこかでリフレインする。フジファブリックさんが悪いわけではありませぬ。

銀杏BOYZ「MajiでKoiする5秒前」
やんちゃなボーイがしかめ顔のママの背中をすり抜けてやってきたかのようなやんちゃなサウンド。広末が歌うとキューンなんだけど、峯田さんが歌うとMajiでKoiしたら5秒後に渋谷の交差点に鼻血だしてぶっ倒れそうな勢いのある歌になっていた。最後は、ボーイからガールになっちゃってる峯田さんがすこぶるかわいかった。私も、ずっと前から彼のこと好きだった誰よりもかも。

竹内まりやナイト!第2夜はNHK総合木曜日午後10時~
BSは午後9時半~

第1夜もきっと再放送あり。
竹内まりやさんが怖いと思っている方はふるってご覧ください。

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ゆきんこ
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