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地域にしごとを創るということーSDGs de 地方創生カードゲームに参加して

東京から石川県小松市に引っ越して早半年を超え、実は引っ越す半年ほど前にすでに小松で創業していたので、わたしたちの EATLAB株式会社はこの6月1日で創業から1年を迎えました。

この1年は、まだまだメンバーが創業前からフリーランスとしてやってきたしごとに頼りながら自分たちがやりたいことのスタートラインに立つための準備で精一杯。

東京でこれまでやっていたメンバーがみんなで小松にベースを移して小松市で創業したにも関わらず、小松という地域に新たな価値を生み出すところまでいけたかどうかというとまだまだ怪しい…。そんな1年でした。

でも、先日、わたしがフリーランス時代からお世話になっているNPO法人issue+designが手がけるSDGsカードゲーム「SDGs de 地方創生」を金沢でやるイベントがあったのでこれはいい機会!と思い参加したところ、これからわたしたちが地域でしごとをつくっていくにあたり、いいヒントを得られた気がしたので、備忘録的に note にまとめておこうと思います。

1)「誰一人取り残さない」SDGsの考え方をゲームを通して理解する

https://sdgslocal.jp/cardgame/より

SDGs de 地方創生 というカードゲームは、2015年に国連が採択した Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の考え方をベースに地域のプレイヤーをゲーム参加者が演じながら持続可能な地域づくりをみんなで行うゲームです。

細かいルール説明はここでは割愛しますが、ゲーム参加者全員で一つの地域の構成員で、チームによって与えられたそれぞれの役所(様々な設定の一般市民や各使命を与えられた行政マンなど)が、はじめに与えられたミッションカードと予算とソリューションカード(多くの場合人)を切り口にそれぞれのミッションをクリアすべく動きつつ、暮らし・経済・環境・人口という地域全体のパラメーターも上げていく、というゲーム。ミッションや予算、ソリューションはミッションをクリアすればするほど新しく投入されていきます。

https://sdgslocal.jp/cardgame/よりミッションカード

日本のそれを反映するように、ほっておけば人口のパラメーターはじわじわと減らされていくルールになっていて、参加者の様々なアクションによってそれを食い止めなければなりません。

ゲームを通して、SDGsの採択文でも強調され、大切な理念とされている「誰一人取り残さない」というのはどいうことか、一つの課題をクリアすることで生じてしまう他への歪み、みたいなものをいかに理解できるか、そうならないためにはどうすればいいのか、などをゲームを通して理解することのできる非常によくできたゲームです。

2)ゲーム後の気づきで共有される、地域のあるある

ゲームは12分を1ターンとしながら4ターン行ったところで終了となるのですが、そのあとに、それぞれの気づきをチームごとや全体で共有しあいます。

そこで出てきたのが、

「ミッションを遂行したくても地域のフェーズと合わないとソリューションや予算が足りなくて難しかった(地域に仕事を創出したい市民役)」
「行政は予算はあるけれど、地域のプレイヤーがわからなくて何にお金を使ったら良いのかわからない(行政マン役)」
「行政側に補助金を出してくれと言いに来るにも関わらず、名前も名乗らない、どんなミッションを遂行したいのかも言わないでただ金の無心ばかりする(行政マン役)」
「自分たちのミッションの遂行ばかりを考えずに、とにかくできることをどんどんやって人口や経済も豊かにしていかないと、ソリューションや予算が足りなくてできることもできないからスピード感もってどんどん回していくことが大切(市民役)」

などなど、どれも一般社会のどこかで聞いたことのあるような話しばかり。

ゲームの4ターンというのは1ターン12分が3年の設定で進んでいき、ゲーム終了時には12年後の未来を見ることができるというもの。

各々がミッションをクリアするごとに人口・経済・環境・暮らしのパラメーターが動くので、持続可能な地域にするためにはこのパラメーターがどう動くと良いのか、考えながらミッションを遂行していくのですが、なんのミッションをクリアすればどのパラメーターが動くのかということはどこにも書かれていないのでなかなか思い通りにはいきません。

ワークショップには実際にリアルのお仕事で行政側、補助金をいただくべく動いている企業の社長や社員、地域のソリューションを様々な仕事に変えている広告代理店の方、地域のソリューションを育てる立場にある教員の方など、様々な方がいたので、ゲーム終了後の気づきの共有ではリアルな社会と照らし合わせながら大きく頷く方や耳が痛い思いをする方も多くいました。

3)これからの地域にしごとを創り出すために

このゲームとそのあとの共有タイムを含めたワークショップに参加して、創業して1年足らずの私たちでもウンウンと共感したり身につまされたりするような感想を多く得ました。

そこで、まだまだやっとスタートラインに立ったばかりの私たちEATLABが今後、地域にしごとを創り出すためにはどうしたら良いのか、考えてみました。

3-1)地域のプレイヤーを把握する

今回、ゲームを通して出た感想をヒントに感じたのは、より持続可能で住みやすい地域になるためのミッションの優先順位の決定や効率的な予算やリソースの配分のためには、地域内でどんな人がどんなことをやりたいと思っているのか、情報共有が肝となるということ。

もちろん、これは税金という形の予算を持っている行政マンにとってもそうですが、サービスという形で地域に価値を出していこうとする企業にとっても同じこと。競合がいっぱいいる中でしのぎを削って価格競争に巻き込まれるのではなく、地域には何をしているどんな人たちがいて、何がなくて何に困っているのか、そんな中で自分たちには何ができるのか考えることがすごく大切だなと。ちゃんと見渡せば、東京よりもないものはたくさんあるし、困っていることだってきっといっぱいあるはずです。

そのためにも、地域の人たちが多く集まるお祭りやイベントごとにはどんどん顔を出そうとあらためて思いました(笑)。

3-2)自分たちが何者のなのかで何をしようとしているのか、共通言語で説明できるようにする

ゲーム後の感想の共有のときにも出ましたが、

「行政側に補助金を出してくれと言いに来るにも関わらず、名前も名乗らない、どんなミッションを遂行したいのかも言わないでただ金の無心ばかりする(行政マン役)」

これ、正直耳の痛い話でした。

補助金に関わらず、新しいサービスを使ってもらいたい時の営業、協力者を求める場合などなど、その地域にこれまでなかったことをやろうとすればするほど、わかりやすい共通言語で自分たちのことをわかってもらう努力をしなければなりません。

私たち自身、レンタルスペースやシェアオフィスがほぼない地域でそんなことを始めようとしているのにも関わらず、いまいちここがなんなのかよくわからん、と言われてしまうのはまだまだ言葉が足りていないからかも。

SDGsは近い将来、そうした共通言語としての中核を担う存在になるかもしれませんが、それにはまだまだもう少し時間がかかりそう。SDGsだけではなく、その地域にローカライズされた共通言語を駆使して言葉を尽くさなければなりません。

小松に来て、正直何を言っているのか半分くらいしかわからない業者のおじさま方、最後まで必要なことを言い切らないハイコンテキストな文化に苦手意識があったのですが、苦手などと言っている場合ではありません。

新しい国に留学して新しい言語を獲得するつもりでそうしたローカライズされたコミュニケーションの中に私たちも入っていかなければ…!と思った次第。私と久しぶりにあったら、なんか喋り方変わってる?と思うことがあったら、それは小松人に馴染もうと努力した証だと思ってそっとしておいてくださいね(笑)。

3-3)行政との対話を続ける

北陸地域は特に、その地域性として自営業率、社長率が高い傾向にあります。

昔から繊維産業の盛んな地域で、機場と呼ばれる布を織る工場や、様々な伝統産業の産地でもありその工房もたくさん。規模の大小はあれど、たくさんの経営者がいるのです。

そのためか、行政に頼らずそれぞれが独立して自分たちで様々なことを手がけていて、行政と市民に多少距離感があるようにも感じられます。もちろん行政を頼らなくても世の中にいくらでも仕事があり、行政が頑張らなくても市民が元気、人口はどんどん増えているし街の景気も上向き、という状況ならそれでも良いのかもしれませんが、そうとも言い切れないのが今の時代。

もちろん、なんでも行政や補助金に負んぶに抱っこが決して望ましいわけではありませんが、この人口減少時代に各地域が効率よく予算やリソースを再分配して持続可能に発展していくための交通整理は、やはり行政にしかできません。

そのためにも、「あいつらに話しても何もしてくれん」と初めから思い込んでしまうのではなく、お互いに常に対話姿勢をとっていくことが重要なのではないか、今回のカードゲームを通してあらためてそんな風に思ったのでした。

3-4)地域のゴールを意識する

小さな会社だと、意識的にCSR活動などを行なっている余裕はなかなかありません。でも、「風が吹けば桶屋が儲かる」というとんちや、蝶が止まっただけなのにその後の未来が大きく変化する「バタフライ効果」にもあるように、ひとつの課題はそのほかの課題と連関していると考えるのがSDGsです。

今回のゲームでも、

自分のミッションのクリアばかりにとらわれずに他の人のミッション遂行を手伝ったり、様々なミッションをスピーディに回したことが結果として自分のミッションクリアへの近道となった

という感想を持っている人がいましたが、実社会でも、一見関係ない課題をひとつ解決したら他の課題解決の糸口が芋づる式に見えてきた、ということもあるのだと思います。

もちろん、自分の会社のプロジェクトが進むことは大事ですが、それがうまくいかないときや周りの協力が得られないときには、常に、これは地域のゴールからそれていないだろうか?という一歩引いた視点を持つことがひとつの道しるべとなるのではないか、そんな風に思ったのでした。

3-5)とにかく続ける

これが一番難しい。

でも、細々とでも、上記の4つを意識しながら立ち上げたプロジェクトを、簡単に終わらせたら、元の木阿弥。

これらのポイントを意識したプロジェクトはそう簡単に目先の利益が上がるものではないかもしれません。地域のゴールは多くの場合が人口が今より増えるとか、地域に若者の仕事が増えるとか、3年や5年でなんとかなるものではないからです。もっと、地域の30年後、50年後、なんなら100年後を見据えて腹をくくってじっくりと向き合わないものが多いから。

でも、目先の利益にとらわれて、ニーズの赴くままに経済活動を回してきたから、今の地域の現状がある。

これからは長い目線で続けられる、やり続けることのできる経営体質が必要なのではないかと思うのです。

だって、地域が地域のゴールに近づいたとき、自分たちのプロジェクトが続いていなかったら悲しいじゃないですか。

100年はなかなか見通せないけど、10年後も20年後も細々とでも続けていられるためにはどうすればいいのか、本気で向き合いながら今やるべきことを考えたいものです。

鍵となるのはオープンマインドで“共有し対話“すること

どうしても地域という小さな社会で暮らしていると、周り近所が近すぎて気になったり、人の足を引っ張ろうとする人が出てきたりと、なかなかオープンマインドになれないこともあるかもしれません。

でも、大事なのは何事も地域で”共有し対話”していくこと。

自分たちがやりたいことにいっぱいいっぱいになって視野が狭くなってしまったら、今回のワークショップを通して見えてきた地域でしごとを創り出すための5つのヒント

①地域のプレイヤーを把握する
②自分たちが何者のなのかで何をしようとしているのか、共通言語で説明できるようにする
③行政との対話を続ける
④地域のゴールを意識する
⑤とにかく続ける

を常に思い出せるようにしたいと思います。

長くなりましたが、今日はこの辺で。

今回わたしが参加したSDGsカードゲーム「SDGs de 地方創生」は全国津々浦々、様々なところでワークショップを開催されています。自分たちの地域を新しいフィルターで見るとても良い機会になるので地域で暮らしている人や移住を考えている人には特におすすめです。近くで開催されていたら参加してみては。


「SDGs de 地方創生」をつくった issue + designの代表筧裕介さんが先月出版された書籍「持続可能な地域のつくり方ー未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン」では、今回のカードゲームで得たような地域づくりのヒントをより科学的に解説し、その事例や技術とともに丁寧に紹介しています。わたしも一部取材のお手伝いをさせていただきました。こちらもぜひ。



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