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いわゆるバブル世代であっても、皆がバブルの恩恵を受けたわけではありませんけどね

最近、若い人たちが、またバブル世代を叩く風潮がありますな。

確かに、バブル時代は経済的に日本社会が浮ついたと言える部分もありました。後処理も大変でしたし。

しかし、バブルの時代に、国民みんなが良い思いをしたわけではなく、ほぼ無関係という人もまた多かったのです。バブル世代といっても、その当時の年齢や立場によって全然違うわけですし。

もちろん、全体的に景気の良い時代ではありましたから、何か事を起こすと風に乗りやすくはあったと言えます。

一般的な生活を送っている人間からすれば、定期預金の金利などは凄かったですし、就職もバブル崩壊後の就職氷河期と比べたら全然楽でしたが、大手企業にはやはり良い学歴がなければ入れませんでしたし、どの時代でも良い所に所属するには厳しい選別がありました。また、バブルだからといって、会社員の給料が図抜けて高くなったわけではなく、ただ「会社の経費をだらしなく使えた時代」という感じでした。あとは、政府が調子に乗ってバカげた税金や保険料の使い方をしていたというのはあり、その関連で儲かったところはあります。

私はバブルと言われている時代に20〜26歳ぐらいでしたが、私個人はその期間はだいたい創作・職人系の見習いでしたので、給料は良くて新入社員ぐらいか(バブル当時はアルバイトの方が若い会社員よりも全然月給が高かった)生活保護でもらえる額の少ない方ぐらいなわけです。いわゆるバブルの恩恵を受けられませんでした。ちなみに、バブル当時でも和装制作系の人は減り続けておりましたね。

会社にいる人たちでも、若い世代はそれ程バブルを享受している感じではありませんでした。ある程度会社を動かせる立場にいた世代・・・の人たちがバブルを享受していたメイン層であって、当時の若者たちには「直接バブルと関係は持てない」感じでしたね。上司に奢ってもらう、という事に関しては今と比べれば良い時代でした(特に女性は)・・・が、バブル時代でも会社によって違いますから、奢ってもらえなかった人も沢山いたわけです。

私は24〜26歳ぐらいまで、有名イタリア料理店の調理場にいましたが、コックであっても半分ぐらいホールにも立つ職場でした。ですのでお客さんの様子が分かるのですが、普段、会社の経費で豪勢に飲み食いしている人でも、家族で来る時には、なかなか慎ましい感じでした。ようするに、バブルといっても、経営者や、自営業で儲かっている人や、会社員でも上層部でもない限り、自分のお金としてバカスカ使えるようなものではなく、なんとなく会社にお金が入って来るから、それをだらしなく使っていた感じが強かった気がします。土地バブルも凄かったですから、元々土地を相続しているような人の場合は運用次第では上手く行く人はおりました。もちろん、バブル崩壊と共に大火傷をした人も沢山おります。

とはいえ、

私にとって、バブル時代というのは、涸れ井戸の底にいる私の上の地上に降る大雨のようなもので、そのほんのほんの一部が時折小さな井戸の口から入ってきて私に降りかかる事はあっても、それは私の日常生活には殆ど関係が無かったわけです。

私のような立場の人は、かなり多かったと思います。

たまに、バブル世代の恩恵をたっぷり享受したと自慢する人にお話を伺う事がありますが・・・「ほら、私たちってバブル世代で良いものに沢山触れて来た世代じゃない?だから良いものを知っているのよねー。今の人は可哀想ね」なんて。

そういう面もあったかも知れませんが、だいたいのものが、品質が良くないにも関わらずただ価格が高いだけだった、センスや教養の背景の無い、酷く品の無いものがバカげた価格で売られているのを買っていただけ・・・制作側で言えば、同じくセンスや教養の無い状態で膨大な予算をかけて作ったものなどが殆どで、バブルだからと良いものが生まれた事は少なかったと思います。

景気の悪い今の方が、景気の悪いなかでも売れるものを作らなければならないという事で鍛えられ、品質やセンスが格段に上がっていると思います。

バブルの頃の工芸で、当時儲かっている人たちが、それはそれは貴重な素材を使い、大きく複雑な作品を当時の有名作家に作らせる事が良くありました。そういうのはだいたい作品としては酷く下品でどうしようものが殆どなのですが、しかし発注主としては有名人にお金をかけて作らせたんだからこれは素晴らしいものだ!ドヤ!オレは金持ちで文化人!と自慢する・・という事が良くあって、そういうのに出会うと心底ゲンナリしたものです。そういうものが本当に沢山ありました。

下品な成金が、銀座のクラブでロマネ・コンティをドン・ペリニヨンのピンクで割って、氷の入ったアイスペールに注いで飲んだりするような時代で果たして文化は育ったのか・・・そういうヤンチャをするオレかっけー!という事らしいですが、そういうのってどうしようもなくダサいですよね。

もちろん社会が狂乱状態だからこそ進化する部分はありますが、私は個人的にバブルが日本人の文化レベルを上げるケースは殆ど無かったように思います。そういう狂乱に身を任せるのも大人の振る舞いという人も沢山いらっしゃいますが、私はそのような経済的狂乱の中でもエレガントで文化を大切にする事が教養ある人間のする事だと思います。

バブルの徒花のようなものでも、なかには良いものがありますが、それも今観れば空虚な感じのするものが殆どです。

人は、文化的な素養の無い状態でお金だけが入って来て、そのお金を文化的な事に使おうとなると、どう使って良いか分からないので下品な使い方になり勝ちです。もちろん、日本人にはそういう事が出来ない、という意味ではなく、その当時の日本人は桃山時代の権力者や町衆のようなエレガントさを持った日本人とは違っていたという事です。

ああ、バブルでSクラスの美術品が日本に入って来るという恩恵はありましたね・・・それは良かった事です。

ともかく、私にはバブルは殆ど他人事でした・・・


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