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民藝については、父・宗悦、息子・宗理の両方の書籍と実績を確認すると理解が深まる

民藝を把握するには、柳宗悦氏だけでなく、息子さんの工業デザイナー柳宗理氏の両者の業績の確認と、彼らが残した文章をしっかり読むと良いと思います

宗理氏の文章はとても上手く、かつ的を射ており(例えば「柳宗理 エッセイ」という本は必読です)父の宗悦が活躍していた時代からしばらくして問題化した事、民藝について宗悦自身は語りきれていない事、幼少期から知っている民藝運動界隈の主要作家の事などを息子が父とは違う視座から補完している感じです

それと民藝論は、宗悦の初期の提言を経典としては絶対にダメで、晩年の著作も読まないと、経典化し固定してしまった「美しき民藝思想」に飲み込まれてしまいます

「民藝四十年」の“後記”では

もともとこの運動は、単純な直観に発足しているのであるが、この基礎こそ吾々に不動の信念を与えているのであって、理論的主張の動きではない。吾々はむしろ民藝論に囚われる事を誡めているのである。直観の自由に立つ限り、動きは生命を失わぬであろう

私どもが困ったのは、外の敵ではなくしてむしろ内の敵

と、書いています

宗悦存命当時から既に問題化していた「民藝論に従った非民藝的なもの」に注意が必要としています

また、民藝運動が盛んだった頃に、作り手が民藝論とその流行に翻弄されてしまう様子を描いた小説【井上光晴著「民芸の死」覚え書(井上光晴作品集 第三巻)】もオススメです。古本でしか読めませんが、民藝に興味のある方なら必読書だと個人的には思います。民藝運動に巻き込まれたその当時の作り手や産地や業界の様子をリアルに感じられます。井上光晴氏の民藝への理解の精度にも感心します


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