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コロナ禍の渦中の当工房の活動

コロナ禍は、ウチのような創作系無名零細自営業者(長いな、笑)に対し、震度7の地震の後にさらに暴風雨を食らったかのような影響を与えております。

もちろんどの業界も辛いわけですが、ウチのような趣味系の商材を扱う業界だと「一番早く景気が悪くなって、一番遅く回復する」という特性がありますから長期戦になるでしょう。必需品とは違いますし単価が高いので仕方がありません。(ウチは普段の利益率が低いので、余裕が全く無いから余計に辛いのであります)

そんななか、何をしているかというと、開き直って後継者の育成と、普段出来なかった取材や研究、作品の事や、いろいろな考えのまとめを行っております。基本的にはいつもと変わらず・・・ですが、普段出来ない事もやっております。

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後継者の育成に関しては・・・

最終的には、このコロナ禍の影響で上手く行かなかったのですが、去年コロナの話が出始めた頃に、外国人の弟子の受け入れをしました。

たまに、外国の人からウチの工房で学びたいと問い合わせが来るのですが、今まではなかなか条件が揃わず、弟子として受け入れるまでにはなりませんでした。

しかし、去年の末頃から(2019年)中国人の女性で、日本のデザイン学校に通っていた人がウチに通いたいという事で、工房に通うようになっていました。

外国人なので、長期滞在には何かしらのビザが必要ですが、今年(2020年)になってから、当人が日本の行政書士さんといろいろ打ち合わせをし「文化活動ビザ」で滞在する方向になり、当工房もいろいろ協力した結果「和装業界では初の文化活動ビザが、ウチを受け入れ先として発行された」のでした。

(文化活動ビザ=外国人が日本独自の文化を学び、自国に戻った際にそれを広めるという意思のある人へ発行されるビザ。経済活動は許可されない。経済活動をする場合は他のビザになります)

行政書士さんがおっしゃるには、一般的には日本の古典芸能や、伝統工芸系でもかなりニッチな分野に関しては発行されていたようなのですが、和装系は「一応それなりの規模のある産業とみなされている」らしく、ビジネス系のビザはともかく文化活動ビザは発行された事がないとの事・・・そんな話を伺い、へええ・・・そうだったんだぁと妙に感心してしまいました。和装業界って中途半端な位置にあるんだなあ、と改めて確認しました・・・

そんな感じで前例の無かったなか、行政書士さんの優秀さと熱心さもあり、ウチの方は指導方針などを具体的に解説し、何度も追加資料を提出した結果、「和装業界では初の文化活動ビザ」←(嬉しかったので二度書く)が発行されました。めでたし。

がっ!

このコロナ禍によるいろいろな問題と、弟子で入る予定の人のご家庭に起こったコロナ以外の色々な事情が重なり、彼女はせっかく「文化活動ビザ」を取得しながら帰国しなければならない事に・・・残念・・・

という事で、結局、ウチとしても「初の外国人弟子の受け入れ」にはなりませんでした。

彼女は数ヶ月工房に通い、いろいろ学習し、工房給食を食べ、日本の糸目友禅やロウケツ染を経験し、さあこれから本格的に弟子生活!という時だったのですが・・・

残念ですが、そんな結果になった、去年末ぐらいから今年の春までの後継者育成関連のお話でした・・・

日本語がそれなりに出来て、日本の文化が好きで、日本の伝統文化や創作を学びたい、そしてキチンとした手続きを自らする、というのであれば、ウチは極力サポートし、外国人でも受け入れる方針です。

ちなみに、ウチは弟子を入れたからといって助成金が入るわけではないので、弟子の指導にかかる全ての経費は工房の負担(親方の負担)です。こういう事を書くとイヤラシイな、と思うのですが、和装の伝統工芸系は、それなりに仕事が出来るようになるのに長期間かかるので、景気の悪いままのここ25年ぐらいは、弟子を取るのはかなりキツイという事実があり、それを知っていただけたら・・・と、あえて・・・

多くの工房が親族以外の弟子を取らないのは、いろいろ理由がありますが、弟子を育てる経済的負担がキビシイからという理由も大きいのです。

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景気の悪さは、去年10月の消費税増税からガッツリ来ております。

私は個人的には、日本人には消費税というシステムは合わないと思っております。なので一気に景気が悪くなる。

・・・その話題は置いておいて・・・

元々消費税増税から下降していた景気ですが、今年になってからのコロナ禍は凄まじい勢いで美術や工芸関係の経済や人の動きを止めました。

現在、「コロナの騒ぎもそろそろ終わるか、もうすぐか・・」といった楽観的期待は、全てひっくり返されてしまいました。

そうなると世の中の趣味性の高いものへの欲求が急速に低下しますし、趣味のものは一番最初に買い控えられますから注文の声がかからなくなります。

かといってウチの工房での工房展や企画展をやろうにも、展示会自体が自粛ムードです。

そんな世相に追い込まれた業界は、こちらにも書きましたが、売上を立てるためにセールを繰り返したり、通販に力を入れたり・・・となります。しかし、セールの場合はやり方を余程丁寧にしないと、普段から購入して下さる方々への義理が立たなくなってしまいます。

そもそも、ウチは基本的には制作側ですので、普段は自作の在庫を沢山持っておりません。

そんなこんなの事情で、変に動く事も出来ませんから、今は本当に厳しいですが「いろいろな事の準備期間」と捉えるようにしようと、覚悟を決め活動しておりました。

それと、酷使しまくってボロボロの私の身体のメンテナンスに当てようと思いました。その一環として鼻の手術を決意したり、埋まっていた親知らずを抜いたりした次第です。(が、仕事を緩めても25年以上かけて悪くした身体は簡単に回復しません・・)

こんな世相だからでしょうか、制作に関しては、今までいろいろな作風のものを制作して来ましたが、それらを総括し、仮に今までと見た目はほぼ同じような制作をするにしても「背景にある制作姿勢をもっと明快に、かつ奥深いものにする」ための何か支柱が欲しいな、と感じるようになりまして・・・

私は元々、個人の好みや表現だけを垂れ流すような制作はしておらず(いわゆるファインアートでもその手のものは嫌いです)常に公共性とある普遍性のあるものを意識しておりますが、それをもっとしっかりさせたいな、と思うのです。

コロナ禍で人々が疲れている時に、自分は何を社会に提供出来るだろう?と考えると、今までの精神のままではダメだなあと、何となく感じるというか・・・

何か、コロナ禍の前と後とでは社会の人々の性質が少し変わる予感がするのです。和装を買われるお客さまも、以前のように店員さんに押されて買うような事は無くなるのではないかな、と思ったりします。もう、ちゃんと心に響くものしか購入までには至らなくなるだろうな、と。それはむしろ正しいと思います。

なので、今、親方である私は、改めて学習、取材をしております。そろそろと再開し始めた美術館巡りなどもして、いろいろ充電しております。最近はコロナの影響で、美術館のチケットはネットでの予約制になり、入場制限がかかるので、会場が混んでおらず、観覧に関してはとてもゆったり観られて良い感じです。

・・・その他、創作上の取材のための教会や寺院めぐりも少し・・・

・・・当工房オリジナルの浴衣やその他着尺を企画するべく注染やプリントの浴衣の工房を訪ねたり・・・

私とウチの工房構成員は、どうやっても制作者です。私たちは何か作っていないと死ぬウイルスに罹患しておりますから(笑)何をやっていても、制作の事、アートの事、工芸の事、伝統の事、その他その他、創作にまつわる事ばかりを考え、活動している感じです。

趣味=仕事上等、その人生で文句無し

もちろん作品や日常の制作姿勢が貧乏くさいのはダメですけどね。文化的なエレガントさは、絶対に失ってはいけません。

経済的には本当に厳しいのですが、だからこそ文化的であれ、という態度でいたいのです。

そこはツッパリたい・・・。

私がグチっぽいのは認めます。笑

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それと

3年前に工房内独立をした、当工房の所属作家の甲斐凡子(かい なみこ、通称・ぼんちゃん)の3回目の個展が9月後半にあるので、甲斐はその準備に集中しております。

工房の売上が立たない状態で、長期間作品を作り貯めるのは工房的には大変なわけですが、しかし生業として制作している人は個展の準備を余裕をもってする事はなかなか出来ませんから、コロナ禍で仕事が止まっているこの時期を、天が与え給うた時間と受け止め、個展用の作品制作に集中しようというわけです。

9月後半にはその成果をご覧に入れられるかと思います。

甲斐の個展は会期が近くなりましたら再度お知らせさせていただきます。

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ウチは、単なる制作バカ集団なので、創作・制作が北極星のように中心になって生活が回っている感じです。私たちは、そこに嘘は付けません。

「僭越ながら、自分たちの制作で社会に貢献が出来れば幸い」と絶えず制作の事を考えて活動しておりますが、淘汰の先端にいる当工房は一番最初に淘汰されてしまうかも知れません。

これで生き延びられれば幸運だし、消えれば、それはそれで運命です。制作にウソをつかずに生きて、そこで淘汰されたならそれが運命という事です。

そういう全てが創作・制作生活であってそれ自体が幸福です。

ありがたい事です。

もちろん簡単に消えるつもりはありませんけどね。笑


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