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残したい毛と残したくない毛
明日から3泊4日の入院で抗がん剤治療が始まる。3週間ごとに8回投与する、約半年かかる治療で、その後手術になる予定。
その副作用である脱毛に備えて、昨日20年ぶりくらいにショートカットにしてきた。
抗がん剤治療の副作用の出方は個人差が大きいものの、ほぼ間違いなく脱毛する。なんでも、抗がん剤と言うのは急に増殖していく細胞を攻撃するそうで、増えていくがん細胞がターゲットになるわけだが、2番目に速く増殖していく細胞が全身の「毛」なので、どうしても攻撃されてしまうらしい。
同じく爪や肌も攻撃される。
いつもお世話になっている美容師さんに事情を説明して、ちょっとでもかっこよく見えるように切ってもらった。
最初は、暑いし襟足から半分ぐらい刈り上げようかと思ったのだが、調べていたら、刈り上げにするとそのとても短い毛が抜けた時、服や体についてチクチクするし、掃除も大変なのだそう。だから刈り上げはやめた。
ところで、大学病院で初めて知った医療機器がある。
Paxman Scalp Cooling システムというものだ。
抗がん剤治療において、髪を失うというのは、多くの患者にとって大きな精神的ダメージで、これが受け入れられず抗がん剤治療を拒む人もいるため、脱毛を抑制する方法が長く研究されていたらしい。
そこでこのシステムは、投与前と投与中、投与後に専用のキャップをかぶり、頭皮を冷やすことで頭部の血流を抑えて薬の影響を減らすのだそうだ。
イギリスなどではだいぶ前から使われていて、残念ながらあまり効果がなかったひともいるものの、半分以上のひとがウィッグがいらなかったらしい。
また、あまり効果がなかった場合でも、抗がん剤治療終了後に再び髪が生えてくるのが早かったそうだ。
日本では、まだすべての病院に備えられておらず、その意味でも大学病院に行ってみてよかった。
さて、費用なのだが、やっぱり高い。
ネットで検索すると、病院によって料金体系が違うらしい。
参考までに私の行く病院では、
最初に自分専用のキャップをオーダーするにあたり、
¥94,050ー
1回の投与ごとに
¥5,000-
そして、本来2回目以降は通院での投与も可能なところを毎回2泊3日の入院が必要になるので、入院費が別途プラスされる。
我が家は裕福な家庭ではない。そして私のバイト収入が今後どうなるかちょっと読めない。田舎で通える大学がないため、子どもの大学進学時は学費以外に生活費がいる……等々頭の中でぐるぐる。
そこで夫が言った。
「髪が無くなるっていう見た目の変化はきついと思うよ?それで外出できなくなって家に閉じこもるようになったら辛いからさ、これは必要経費だよ。俺はやった方がいいと思う。」
……ありがたいお言葉だ。
ただどうしても素直に受け取れないのは、家計に関しては夫は私に丸投げで、お金のことなんてまったくわかっておらず、やりくりの相談をしても相談相手になってくれさえしないひとだからだ。
でもまあいいか、どうにかしよう、夫の言葉に甘えて使わせていただこう、と決めた。
これで私が少しでも前向きにがんばれるなら、治療の結果もいい方向にいくかもしれない、という希望をもって。
ところでこの脱毛、全身の毛と言う毛に起こるので、眉毛もまつげも鼻毛も全部抜ける。
眉毛は帽子で隠したり書いたりして、まつげはアイメイクやめがねでごまかすらしい。目にゴミが入るのを防ぐ意味でも、めがねはいいみたい。
鼻毛は無くなると、不意に出た鼻水がせき止められることなくたれてしまうからマスクで防御。副作用のひとつに白血球が激減して感染症にかかりやすくなるというのもあるから、そういう意味でもマスクは必要。
で、思った。
脱毛してそのまま生えてこなかったらいいという毛もあるなあって。
手足のムダ毛もいらないし、わき毛もいらないし、意外と気になる指の毛もいらないし、VIOもいっそのこといらない。
最近、年配のひとに人気のVIO脱毛は、将来の介護に備えてのものらしく、もし下の世話をしてもらうようなことになったとき、VIOの毛は拭きとりにくいし無い方がずっと楽だからだそうだ。
しかも脱毛サロンなどで行う脱毛は、黒い毛にしか反応しないため、白髪になったら利用できないとのことで、40代から50代のVIO脱毛が人気らしい。
私もちょっと考えたのだが、やっぱりなんか恥ずかしいなあとか、敏感肌なだけに肌トラブルが起きたら嫌だなあとかで踏み切れずにいる。
VIOって介護のみならず生理中も邪魔な存在だし、ムレてかぶれるんだよね。抗がん剤できれいさっぱり抜けて、そのままお亡くなりになればいいな、アソコの毛たち。
でも気がかりなのは、治療終了後、再び生えてきた毛が、もとの毛の色と違っていたり、髪質も変化することがあるということ。
もともとくせっ毛の髪が、さらにウネウネになるかもしれない。
VIOに限って、超剛毛が生えてきたらどうしよう!?
そんなことを、娘と息子と昨夜は笑いながら話した。
弱くなる爪の保護にマニキュアを使うのもいいらしいけど、リムーバーが負担になるみたいと話したら、娘が
「お湯でオフできるやつがあるよ!」と探してくれた。
でも気軽に遊べる奇抜なカラーが多め。
そうしたらこんどは息子が
「母さん、こんなのあったよ」
と抗がん剤治療対象の、お湯でオフできる透明のネイル保護コートを見つけてくれた。
正直、私もいろいろ不安ではあるのだが、支えてくれる家族や友達に感謝しつつ、少しでも明るくなれたり前向きになれるものは利用して、明日からがんばろうと思う。
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