お母さんの請求書 【短編小説】
ある日、台所に立つと冷蔵庫にこんなものが貼ってあった。
--------------せい求書---------
おるすばん代 200円
おつかい代 150円
赤ちゃんのおせわ代 300円
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合計 550円せい求します。
書かれた文字はとても上手で、思わずほれぼれしてしまった。きっと何かほしいものでもあるだろう。そんな事を考えつつも、当人の先のことを考えて私は少し懸念してしまった。
私は当人の為を思って、550円と私からの請求書を送る事を決めた。何か考えてほしいと思って。
--------------請求書---------------
病気になった時の看病代 0円
迷子になった時の諸々の費用代 0円
せがまれて買ったお人形代 0円
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合計 0円 請求致します。
私はこの紙と550円をテーブルに置いた。
ご飯の時間になった時、その紙とお金が目に入ったのだろう。構わず、ご飯の準備をしていると
「おかあさん。ごめんね。」
と母がボロボロと泣きじゃくりながら、かすれた声でそう言っていた。
私こそごめんね。お母さんが入院してる時は、お金の工面とかもあって病院に1人にさせちゃって。私が、ちゃんと鍵を閉めずにお買い物しに行っちゃって、それで外に出ていっちゃったんだよね。せがまれて買った赤ちゃんのお人形さんは昔を思い出しているのかな。
ごめんね。
私もその一言しか発することができなかった。
「なんでこんなものを送ってしまったんだろう」
なんにも言わず、550円を渡してあげればよかったのに…。そうしていれば、母を泣かせてしまうことにもならなかったはずなのに…。ごめんなさい…。
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