『人間失格ー太宰治と3人の女たちー』を観た感想
最近、本業が原因で鬱が再燃傾向にあるため、前日に有休を申し出、
某ホテルのデイユースで、副業と本業の宿題を持って出かけた。
しかし、VODに以前より観たかった蜷川実花監督作品の『人間失格』があるではないかー!! つい観てしまった(笑。
言われなくても監督は蜷川実花氏と解る映画
全体的に、色彩感覚などがやはりニナミカだなと感じる場面が多い。
宮沢りえ・二階堂ふみはそれほどでもないけど、沢尻エリカに至っては、着ている服から、お部屋まで全部ニナミカっぽさが滲み出ていた。
あ、批判的な意味ではない。ニナミカ好きなので、大歓迎だ。
小栗旬は特別好みではないけど、難しい役どころを流石こなしたな、
と改めて演技がうまいなぁと思いました。
また、冒頭から、小栗旬と藤原竜也が出ている時点で、ニナミカ作品であることを裏付けている。
それぞれ違う3人の女性
三人三様、まったく違う性格の女性に太宰は愛され、愛していった。
まず、母性に満ち溢れた本妻の美知子(宮沢りえ)。3人目の子供がおなかにいる身重な状態だった。家庭を顧みない太宰に対し、「いい文章が書けるなら、帰ってこなくてもいい」と突き放すが、本当は太宰が好きでたまらない。それは、子供たちへの言葉からも垣間見えるが、時に寂しさに耐えきれず、寝て居る子ども達の横で弱音を吐くが、すぐに撤廃する。
太宰自身、太宰がいちばん愛していたのは本妻の美知子だと、
最期に気づくが、時既に遅し。
太宰が愛人心中直後、記者に取り囲まれている中、ラストシーンでは女性としての、未亡人としての、大作家太宰治の妻としての強さを見せつける。
そこに涙はもうなかった。
作家志望の弟子で愛人の静子(沢尻エリカ)は、完全なる盗作目的で太宰は静子の自宅まで行きつつ、静子の妖艶な魅力に我慢できず、一度は帰ろうと部屋を後にするも、戻って何日も過ごし、静子のご希望通り、妊娠させてしまう。
最後に、未亡人の富栄(二階堂ふみ)だが、いちばん質が悪い。
太宰を愛しすぎるあまり、精神的に追い詰めて「貴方には私しかないのよ」と思わせているが、そんなときに限って本妻や3人の子供とバッタリ会うなど、富栄自身の精神状態も追い詰められる。「太宰の子供が欲しい」と
タバコと酒で相当肺を侵されて何度も吐血して弱っている太宰と、無理矢理不貞行為をしようとしたり、太宰の前で自殺未遂をしたり、最終的には太宰と心中することしか考えていない重度のメンヘラである。個人的には、富栄はある種のパーソナリティ障害と推測している。
太宰自身も、自殺未遂を重ね、酒と女とタバコを体がボロボロになろうともやめようともしなかったので、3人の中では富栄に近い属性であろう。
太宰 治と三島由紀夫
ただ、一点腑に落ちなかったのは、三島由紀夫役が高良健吾が演じていた。
そして、かの有名な三島が太宰に対して「僕は太宰さんの文学は嫌いなんです」と言い放ったシーンが突然やってきて、三島のこの映画での存在意義はいかがなものだったのだろうかと思った。他の作家の名前は作品中に出ていたが、三島の名前は出ていなかったような気がするので、突然の登場で度肝を抜かれた。見た目が全然三島っぽくないし (笑。
文学界でも、太宰の作品や生活態度に賛否両論があったことを表現したかったのかもしれないが、三島の登場があまりに唐突すぎて、三島ファンの私は「あっ……」と一人声を漏らし、
確かに事実と同じ『斜陽』を書いているとき(昭和21年12月14との説が有力)、三島は太宰にそのように伝えたことは分かっているが、太宰の文学というよりも、太宰の生活態度に対し、生真面目でストイックで有名な三島は許せなかったのではないだろうか。もしくは、多少なりとも太宰のように、奔放に生きてみたかったのだろうか。
まとめ
結論、面白かった。予想とだいぶ太宰のキャラが違っていたけれど、
こんなにも太宰 治という人間について考えさせられた2時間はなかっただろう。
ちなみに、太宰作品で自分で購入し、まともに読んだことがあるのは
『人間失格』くらいである。