見出し画像

日記「過敏な心」

年末にインフルエンザA型に感染し思い返してみたら約30年振りの高熱による風邪だった。38度を超える熱が三日ほど続き喉痛と咳に見舞われた。体調が悪い時はちょこちょこあるが、社会人の頃は体調不良で仕事を休む事はなかったし、結婚してからも体調不良でも家事や育児も何とかこなしてきたが、インフルエンザの高熱となるとさすがに動けない。そういえばコロナのワクチンの副反応による発熱で2日程寝込んだがそれは覚悟の上の発熱であった。寝込むであろう事を想定してそれなりに準備をしておいた。家族がコロナやインフルエンザに感染し無防備に看病してもうつった事がなく、私はこうゆう流行り病に強いのだ、と過信していた。高熱が治まった頃に咳がひどくなり目眩がするようになった。

我が家は私が寝込むととにかく家の中が回らない。とりあえず食事は各自でなんとかして欲しい旨を伝える。私は病院でインフルエンザA型と診断を受けた帰りにスーパーに寄り、高熱でも食べられそうなプリンやゼリーやなどを自分用に買い込んでおいた。それでも洗濯物も汚れた食器もごみ箱のごみもたまってゆく。高熱で汗をかけば着替えるし年末臨時ごみ収集日を逃すと新年6日まで収集日は来ない。大掃除は諦めたけど、洗濯と食器の後片付けとごみ出しは仕方なくする。おまけに夜遅くにバイトから帰宅した娘が高熱で翌日病院へ連れてゆく羽目に。娘もインフルエンザA型。インフルがインフルを看病するという最悪の事態に。夫は家族のインフルエンザごときで年末の忙しい最中に仕事を休めないと言う。なんてこった。お粥が食べたい。野菜たっぷりの鍋焼きうどんが食べたい。けれど作ってくれる人はいない。

子供の頃は風邪をひいて発熱すると母はお粥と野菜たっぷりの鍋焼きうどんを作ってくれた。喉痛にしみないようにとりんごをすってくれた。不思議とりんごはすると甘みが増し咳が落ち着く。夜中に咳がひどくなると白湯に蜂蜜を溶かして飲ませてくれた。しかし母が寝込んでいた時、私は母の看病をした事があっただろうか。おそらく自分の事でいっぱいいっぱいだっただろう。そもそも母が病気で寝込んでいた記憶がない。

いつも突然やってくるが母も高齢だからうつしては大変なので、インフルエンザになった事を報告しちょっと愚痴ってみる。「家族ってのは母はいつも元気だと思ってるもんだよ」と。そうか。母も体調が悪くても我慢して動いていたんだなぁ。

いつまでも寝ているわけにもいかないと思いインフルエンザ隔離期間5日間を過ぎた大晦日にはお正月のお料理をこなしたがやはり目眩で視界が右回りに動いている。娘は若さ故か丸一日爆睡してすぐ解熱。風邪症状もなく元気なインフル患者。年末年始で病院はお休み。SnowManの年越しYouTube生配信で元気をもらうも結局年始はほとんど横になって過ごす。こんな身体は嫌だな。何も出来ない。食欲もない。でも洗濯も食器の後片付けもしなきゃならない。メンタルがやられてゆくのがわかる。ひとりめそめそ泣く。そういえば数年前「痛み」という私の詩が現代詩手帖の投稿欄で入選したことがあったな。二連目。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中身が外に
はみだしてしまって
こういうの過敏
って、いうのだろうな
泣けてきてしまう
蛇口がひねられたら
もうそれは
ただの頭痛だけでは
済まされない
それから痛みは
派生する波になって~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まさにこんな感じだ。身体の中の精神的に感じる部分がとても過敏になっているのだ。物理的な痛さではなく物理的な苦痛ではない「痛み」。右回りに回転する視界の中で洗濯物を干す自分が、誰も片付けない私以外の家族が使った食器を洗う自分が、情けなくて悲しくてめそめそが嗚咽になる。「家族って何だ?」って叫びたくなる。朝、目が覚めてもまだ右回りに回転する視界が、私の過敏な部分を削ってゆく。夜、眠る時に朝が来ませんようにと願う。

6日にようやく病院へ行く。午前中にかかりつけでインフルエンザの検査をしてもらったつるっパゲ先生の内科に行く。こんなに目眩でつらいのに「インフルエンザの菌はもういないのだから安静にしているしかない。第一ね本当に目眩がひどいなら歩けないし一人で病院なんて来れないよ。」と咳止めのお薬だけ処方される。納得いかない。だって安静にしていたのに治らないから相談してるのに。休み明けで混雑しているなか3時間も待ったのに。いつもは優しいつるっパゲ先生あまりの忙しさにご機嫌ななめですか?泣くのを堪えながらも納得いかないと少々腹立たしい。セカンドオピニオンするしかない。本来、目眩は耳鼻科に行くべきか。午後に目眩専門の医師がいる耳鼻科を予約しふらつく足で運転をする。耳の穴を覗かれて、血液検査、聴覚検査、眼振検査などをし良性発作性頭位めまい症と診断される。やっと病名がついた。目眩のお薬を14日分処方してくれた。冷静になって見たらちょっとマスクイケメンな耳鼻科の先生が超イケメン先生に見えた瞬間。つるっパゲ先生は内科で消化器科が専門だしまぁ仕方がない。最初から耳鼻科に来れば良かったのだ。

目眩のお薬を服用して一週間。右回りの回転は止まったもののまだ足元がふわっと浮くような瞬間がある。それでもだいぶ楽になった。リハビリがてら少しのウォーキングを再開。家族が私が作るご飯を「おいしい」と頬張る。全てはこの言葉の中に詰まっているのかもしれない。でも私の過敏な心は「家族って何だ?」が今も消えない。

#日記
#インフルエンザ
#良性発作性頭位めまい症
#セカンドオピニオン

いいなと思ったら応援しよう!