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Books_書評

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読んだ本の紹介記事をまとめています。 何かのお役に立てたら幸いです。
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#読書の秋2022

『黄金のアウトプット術(成毛眞/ポプラ社)』を読んで、インプット偏重だった人生を省みる。

子どもの頃から、「本を読むのは良いことだ」と言われてきた。 両親は二人とも本が好きで、書店に行けば、本だけは自由に買い与えてくれた。まだ電子書籍なんてなかった時代だ。 そんな環境もあってか、私は小さい頃から、図書館に一日中入り浸っているような子どもだったらしい。 ところが。 「インプットだけで、本当に価値があるのだろうか」ということを、大人になってからは薄々感じ始めていた。 たとえば日本には昔から「本の虫」という言葉がある。子供の頃の自分を象徴しているような言葉だが、最近で

『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ( 坂田ミギー/産業編集センター)』を読んで、自由に旅ができる世界の再来を渇望する。

旅が好きだ。とりわけ、一人旅が好きだ。 独身時代はもちろん、結婚してからはさすがに行きづらくはなったけれど、タイミングを見てはちょくちょく一人旅をしていた。 それが、このコロナ禍によって、大きく状況が変わってしまった。 特に海外には、もう3年近くも行っていない。 そうなると、もう一つの趣味である読書も、自然と「旅」関連のものに食指が動くようになる。 そんな時に出会ったのが、この本だ。 著者の坂田ミギーさんは、広告のクリエイティブディレクターをされる傍ら、「旅マニア」とい

『会うたびに「感じのいい人」と言わせる大人の言葉づかい(齋藤孝/大和書房)』を読んで、テキストベース社会の生き方を考える。

「最近の若い者は・・・」、 その昔、ドラマや小説、漫画の中でよく目にしていたセリフだ。 気づいたら、そのセリフを言うような年代に、自分が突入していた。絶望か。 若手世代と接していると、「言葉の選び方」に違和感を覚えるシーンが増えてきた。 いや、もちろん上の世代にもそういう人はいるし、自分だってそういう時もあるんだろうけど、最近如実に増えてきた、と感じる。 それはおそらく、「テキストベースのコミュニケーション」の比重が高い社会になってきた、ということも関係しているのだろう。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(岸田奈美/小学館/コルク)』は、親の死後に読んではいけない。

一昨年、父親が亡くなった。68歳だった。 悲しみに暮れつつも、やれ葬式だ、四十九日だ、一周忌だと過ごしていく中で、ふと、以前読んだこの本のことを思い出した。 ところで、「良い本」の定義とは何だろうか。 それはもちろん、「学び」が多いことだろう。 いやいや、「感動」も捨てがたい。 何を言う、「笑い」だって大事じゃないか。 その3つが、ヤクルト1000配合の乳酸菌のごとく高密度で詰まっているのが、この本だ。 この本は、著者である岸田奈美さんのご家族を描いた物語だ。 もともとは

『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記(目黒冬弥/フォレスト出版)』を読んで、「半沢直樹」よりも深い銀行員の世界を知る。

新卒での就職活動当時(2005年頃)、大学が経済系の学部だったこともあり、同期は金融機関に就職する者が多かった。 銀行、証券、生保、損保などなど。 その中でも、とりわけメガバンクに進む者に対しては、「固い選択をしたなあ」という印象を持っていた。 この本のことを知ったのは、最近の日経新聞の広告欄だった。 舞台となるのは「M銀行」。大規模なシステム障害のニュースもまだ記憶に新しかったし、もともと他の会社や職業にとても興味があるたちなので、Kindleでサンプル試読の上、購入して

『まだ東京で消耗してるの?(イケダハヤト/幻冬舎)』は、2016年に現代を予言していた。

率直に驚いた。この本の出版が2016年だったと知った時の感想だ。 現在でこそ、地方移住やリモートワークといった概念は市民権を得てきているが、コロナのはるか前に出版された同著は、まるでその潮流を予言していたかのような内容だ。 自分の読書記録では、2016年に紙の本を購入し、2022年にKindle版を購入していた。 そして今回、改めて3回目の読了を終えて、その先見性に唸るばかりだった。 これは、現代でこそ読むべき内容かもしれない。 むしろ、初版当時はまだ世間から理解されに