耳遠く
頭皮を揉む指の腹なる髪おぼろ
啓蟄やタロウをがしがしと洗ふ
ぶくぷくと網のホルモン春の宵
声は大きく耳遠くなり土匂ふ
青饅のぬた目分量小指に舐むる
ぐつと髪束ねイマジン昭和の日
薄暑光びるびる脳のしゆわしゆわの
ノーブラの打水や会釈の屈む
実梅なる夜半のスキップ辿々し
目と口の飛び出してゐる金魚かな
夏果ての「愛人/ラマン」映画館
山の秋ケーブルカーまでが遠し
水飲めば噎せて盆の月を嫌ふ
とんぼうに負けぬ太もも漕ぐや漕ぐ
生理まだくるか道の駅のオクラ
リモコンを覆ふラップや冬支度
侘助の恋ひとさじの香り立ち
おほいなる乳房こきまぜたる柚子湯
お刺身の一切クリスマスの猫へ
白菜を煮るいつまでもいつまでも
藤田ゆきまち
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サブタイトルは「更年期に身を任せ」
初めはタイトル「腐りかけ」でした(汗)
目を通して頂きありがとうございます。
2ヶ月ほど前でしょうか。
亡き祖母の声が聞こえました。
ゆき、老いを詠みなさい。と。
祖母は生前よく私に電話で自分の身体のどこがどう痛いのかをこと細かく話して聞かせてくれました。そして、それを俳句にしなさい。
と言うのです。
祖母の痛みを俳句にする?
老いていく傷みを詠む?
私にはピンときませんでした。
祖母の苦しみを聞くことはできても、離れて暮らす祖母を直接感じることは出来ない。
それでも亡くなったあとも尚、祖母が言っていた痛みを老いを詠みなさい。が引っ掛かっていました。
48歳を迎え不安定ながらもまだある生理に伴い生理痛は寝込むほど辛い。
髪の毛も一年中抜ける(木の葉髪どころではない)
白髪が目立つようになる。
トイレが近い。
歯が抜ける。
ここまで話すとおいおいと心配して下さる方もいますか?ありがたい(笑)
イライラ不安定。これは更年期。
すなわち老いであると嫌でもわかる。
気のせいではない。
そんな不安定な日々の中。
亡くなった祖母の声がした。
「老いを詠みなさい。」
すらすら書きなぐるように句が浮かんできた。
淡々とありのままに。
まだまだわたしはこれから老いる。
老いに逆らい過ぎずに
たまに
抵抗しながら
自分を観察しようと思う。
十一月のおでこがべつたべたなんて
ゆきまち
つづく