寝ても覚めても俳句な日々

当たり前の日常の小さな気づきを自由に俳句に詠めたなら。

寝ても覚めても俳句な日々

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ひとりなら/榮猿丸 鑑賞文/ゆきまち

俳句四季 2021.12月号 俳句と短歌の競詠より  榮猿丸先生の ひとりなら~10句の鑑賞文です 重ね脱ぎせる女の胴や捩れ伸ぶ白息のおほいなる君悩むなよ黙の果モヘアの胸の糸くづ摘む電子レンジの扉に映る毛布かな別れ告ぐれば残響あはし冬苺蜜柑一房抓み胎の子これくらゐ鼬ひき殺しただらうひとりなら命の尊さに気づく事で人は優しくなれる。 誰かを守りたい。そんな人がいる事は幸せなはずなのに心に重みを感じてくる不思議。 ひとりじゃないことをどう感じどう思う。 この句に感

    • 俳句を読む①

      いい人の膝に白猫もう四月 宇多 喜代子 (句集 雨の日  角川書店) 下五のもう四月でおそらく、一月も二月も三月もこの白猫はこのいい人の膝の上に座っていたのだろうと、この些細な光景に日々の暮らし「もう」に込められた思い、そしてドラマが見えてくる。 いい人を例えば、婆さんや、母さんなどにすればもっとくっきりと景がみえるだろう。 しかしここはいい人で揺るぎないのだ。 誰しもがいい人と言われてパッと浮かぶ人は一人はいるでしょう。 私ならば恋人だったりします。 愛しい人の膝の上

      • 七月の一日一句 季語弁当

        七月やタオルケットへ書く名前 すててこのよろよろ明日の新紙幣 夏の海ごまの目玉のウィンナー 新札の交換の列アマリリス やんはりと夏掛け子らの腹へ掛け 鬼灯の花なにもかも夫と分け 空焚きのやうな猛暑の駐車場 白飯の受け止むる梅干の赤 カプセルトイ回す回す油照り 納豆巻へちよんと醤油や日焼の子 毒嚢は過保護の化身夜の蠍 人間の都合不都合ビルを海猫 夏深し絵具セットも持ち帰る 褒めらるる有に従ふ浴衣かな コンビニや埃まみれの雨蛙 中止なる個人面談蝉しぐ

        • 好きな人と夏の日の1993

          ポケベルを持ち始める少し前の時代。 親に聞かれたくなくて公衆電話から電話をする16歳のわたし。 自転車を走らせ橋を越えて。 団地の4階から見える景色を今でも覚えている。 なにもない部屋で2人で聞いた音楽とか ヘリコプターの操縦免許を取りたい彼の話や 幼少期の彼が喘息のせいで友達が駆け上がっていく階段を登れなかった悔しさとか。 抱きしめ合って胸が焦がれたことをふとテレビから流れてきたCLASSの夏の日の1993で思い出した。 島くん元気かな。 あなたの夏の思い出の曲はなんですか

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        ひとりなら/榮猿丸 鑑賞文/ゆきまち

          烏の落とし物

          夕方のどっと疲れた電線に 烏が十羽ゆれている ぼちゃっ、ぼちゃっとそれぞれに 糞を落としてカアと啼く 下を走る車も 部活帰りの少年の自転車も 夕刻セールのスーパーへ向かう吾も 烏には関係ない どんな場所でも烏には ぼちゃっと糞を落とす場所 ベッタベッタのアスファルト 三伏の風が吹く

          六月の俳句 季語弁当

          エックス(旧ツイッター)で先月から毎日のお弁当と俳句を呟いています。日記のような俳句のときもあります。 長く続けていけたらと思います♪ 1.強風のドライヤー当て半ズボン 2.大きなり友達ん家の紫陽花は 3.峰雲やカマハン二十七インチ 4.尺蠖の大き一步をかつさらふ 5.貰ひもののガム六月の駅地下 6.テレビ点け茄子漬へ楊枝の二本 7.冷酒の母のサブスクとんねるず 8.注ぐ子のよろよろ麦茶ニリットル 9.唐揚の油ぴんぴん走り梅雨   10.膝上のスカートきみ

          第24回ミュージッ句会

          曲を聴いて俳句を詠むミュージッ句会の7月の課題曲は2曲 黒のクレール 大貫妙子 火男     渋さ知らズ どちらもYouTubeで曲のタイトル、アーティスト名を検索いただくと聴くことができます 渋さ知らズの火男は7分34秒のものをお聴き下さい 投句数5句以内(1句でも🆗) ミュージッ句会にアカウントを登録した方はどなたでも締切日まで投句、投句した俳句の変更ができます ミュージッ句会URLリンク↓ 初めてミュージッ句会に参加をご希望の方はエックスの私のDMまでメッセージ

          大きな存在

          あまりにも大きな存在で同じ世界に存在しているはずなのにその人と自分が話している姿が想像できない現象が人生に何度か訪れる。 芭蕉とも蕪村とも箱庭の人 鷹羽狩行 自分がもし箱庭を作るならどんなものになるだろう。という切り口。 涼し気な川に大きな橋を掛けよう。 箱庭の橋へ實と猿丸と 藤田ゆきまち 箱庭の大きな橋に小澤先生と猿丸先生がいる。 涼しげに何か話している。 大好きな先生方は時に山であり海であり谷であり川であり雲海である。 猿丸先生にオンライン句会で、先生は怒った

          五月の俳句とお弁当

          豆飯の塩味一日中くもり ピーマンを炒め漢を黙らせる しやきしやきと絹莢はきはきと台詞 こんもりのキャベツ豚カツ定食の 筍を呉れる義母さん三日おき 帆立貝となりの帆立貝を噛む ナポリタンパンのパセリをいつ食うか 規格外野菜の届く卯月かな にんじんの花ここならば息が楽 冷蔵庫すつきり破茶滅茶なピラフ 自転車のパンク鯵フライへタルタル 先生にハンカチを貸す川辺かな 白南風やペティナイフへ付くバター 若貴のはなしと苺ミルクかな 大粒の雨にうなづく繍毬花 夏の山ぐんぐん誘はるるデート

          一匙のつぶやき

          あれこれと、知りたくて、わからなくて、答えを早く見つけたくて、遠くへ遠くへ手を伸ばす。 掴んだと思うよろこびもつかの間に、またすぐに不安になり、求め、手を伸ばす。 もう少し、呼吸を整えて、足下をみてごらんよ。 こぼしてしまった大切なものを、たくさん踏みつけてしまっているよ。 なんの為に、誰のために、なんて、どれだけ考えても答えはないよきっと。「考えること」、それが答えなのかもしれないよ。 息急き走り愛想笑いを振りまいて喉がからからでしょう。 花曇り銀貨落としてしま

          わしはあなたを思っていますと あなたにつたえてしまいます この思いをつたえたところで わたしの生活もあなたの日常も なにもなにもかわりはしないのに 物理的距離が救いです なりふりかまわずの若さもなくて ほっとしている自分もいます 広い空に雲がかたちを変えてゆっくりと あなたの街へわたしの思いをのせ きょうも流れて届く前に 消えてゆきます

          鎮魂句

          鎮魂句に順位なんてあるのか。 選をすることなんてできるのか。 祈りの句を願いの句を誰に評価してもらいたいのか。 なあ、違うだろう。 何がわかる。 あからさまにワードを出して露骨にして 自己満足だよ。 それは鎮魂句じゃない。  来月のとあるラジオ。 毎回選者イチオシ句が選ばれる。 しかしその回だけは句を紹介するのみだ。 鎮魂句は評価の対象ではないから。 百歩譲ってもそういうものだろ? みなで忘れぬよう(本当は自分自身だけでいい) 心に刻むためだろ。 飛びつくよ

          ひとり占め

          ひとり占めなんてできなくて 翼を渡したのはわたし 「いらない」って言って そばにいてくれると思ってた リードはすぐに外れるし わたしも背を向けた  だけどどちらかが 振り向くはずだと信じてた 闇は思いの外居心地は悪くない 空は冬鳥を隠し雪もよい 容赦なく時間は流れ 間違い気づいても言えない 砂場にもらったものを全部埋めて 何か変わった 変わらなかった からからに乾く川の小石ひろえば なで肩の石はきみのようだ 笑った顔が泣いて見えるよ 違う歌が好きだったんだ カチューシ

          怒りと悲しみとバイバイ

          見たくもない、読みたくもない言葉の羅列がスクロールすると目に飛び込むシステムは時にゲリラ豪雨に見舞われた感覚に陥る。 あまりにきついとミュートする。 ミュートも言葉の羅列も自由だ。 甘やかすのは簡単だ。 仏の顔も三度までいや、ニ度までだ。 三度目は相手に考えて欲しいからきちんとした言葉で伝える。 冷たいひどい、わたし今心が病んでるのに。 うるさい。 それはあなただけじゃない。 あなたのせいで困ったなあと思う人がいる。 いいよ、いいよと甘やかすのは簡単だ。 敢えて突き離す

          怒りと悲しみとバイバイ

          耳遠く

          頭皮を揉む指の腹なる髪おぼろ 啓蟄やタロウをがしがしと洗ふ ぶくぷくと網のホルモン春の宵 声は大きく耳遠くなり土匂ふ 青饅のぬた目分量小指に舐むる ぐつと髪束ねイマジン昭和の日 薄暑光びるびる脳のしゆわしゆわの ノーブラの打水や会釈の屈む 実梅なる夜半のスキップ辿々し 目と口の飛び出してゐる金魚かな 夏果ての「愛人/ラマン」映画館 山の秋ケーブルカーまでが遠し 水飲めば噎せて盆の月を嫌ふ とんぼうに負けぬ太もも漕ぐや漕ぐ 生理まだくるか道の駅のオク

          2023上半期自選十句☆☆☆☆☆☆読売俳壇小澤實選入選句

          ルービックキューブ二時間着ぶくれて 知らぬ間に雪それほどに愛し合う 初午やけつね饂飩の甘き揚げ 仲良くなるための喧嘩やミモザ咲く 花の昼日替り弁当のマリネ くすぐればくすぐり返す桜草 くしやくしやのストッキングや藤の昼 雑巾を二枚縫ふ朝麦の秋 蠑螈みる吾も蠑螈に見られをり 火取虫場内指名本指名  (自選句) 自選をして投句する中で小澤先生に選を頂いた句を纏め最後のみ私自身の自選句です。 下半期も徹底した描写と一匙の思いを季語に託す俳句を詠んでいきたいと思い

          2023上半期自選十句☆☆☆☆☆☆読売俳壇小澤實選入選句