[#私の推しキャラ] ザ・シンプソンズと次回の漫画アダルトチルドレンについて
ザ・シンプソンズというアニメをご存じでしょうか?このキャラクター、見かけたことはありますよね。
これはアメリカで1990年代から放映されている、日本で言うとちびまるこちゃん的なアニメです。シンプソン一家と彼らが暮らす街の住人を中心にしたおもしろアニメです。しかし実はおもしろの裏に、毒親とアダルトチルドレンという裏テーマも隠されているのです。ちょうど私が今描いている漫画がアダルトチルドレンについての内容なので、それに関連してザ・シンプソンズの紹介をします。ちなみにアダルトチルドレンとは、シンプルに言えば毒親に育てられた結果精神的に生きづらさを抱えるようになってしまった人の事です。
主要キャラクターの一人目は、お父さんのホーマーです。
表面的には、大ざっぱでだらしなくて、でも家族思いというキャラクターです。でもよく見ると毒親要素が満載なのです。まず非常に享楽的で衝動的です。お酒が好きでそれが元でトラブルを起こしたり、自分の欲求が最優先で家族に毎回迷惑をかけます。例えばお酒に酔って道路で寝てて警察に家まで送られて家族が平謝りするとか、食いしん坊すぎて子供のおやつまで食べて子供に文句を言われるとどなりつけて黙らせるとか、毒親育ちの人が見ると「あー、あるある」となるであろう行動が多いのです。そのままではなくても、方向的には同じものを感じると思います。こういった行動は全てギャグとして描かれていて、毒親を知らない人にとっては単なるお笑いとして映るのみですが、分かる人にはピンとくるというような行動にあふれています。次に、家族思いと言ってもそれは家族への愛情というより、自分の帰る場所が欲しいだけという行動も多いです。つまり家族よりも自己愛が優先されるということです。それも毒親あるあるですよね。その証拠に、一番下の娘の名前を覚えていません。呼ぶ時は「赤ん坊」と呼びます。
二人目はお母さんのマージです。
ホーマーとは逆に聖人です。愛情深く、本当の意味で家族思いです。彼女がいなければシンプソン家は崩壊していました。でも表面的には人として当たり前の事をしているだけなんです。だめな夫をたしなめ、子供が悪い事をしたら叱り、しかしちょっとした発言や行動には彼らへの愛があふれている、当たり前の行動なだけにそれがクローズアップされる事は少なく、派手なギャグ要素も少な目です。でも愛情とは安心感の事です。つまり派手とは正反対の事なのです。派手とは衝動性や自己中心性ともつながります。派手で衝動的な人よりも、地味でも大切な物を与えてくれる人に安心感を感じますよね。なのでホーマーもマージの前では安心しきってよく子供のようになります。もちろんそれはシンプルに甘えるだけではなくマージを理不尽にどなりつける事も意味します。それも一種の甘えだからです。さらにホーマーが毒親であるため、子供たちもそれぞれどこかおかしくなっています(後述します)。つまりマージは家庭内で一番苦労人なのです。なので時々マージ自身のメンタルもおかしくなったり家出をしたりします。さらにその聖人マージも子供の頃、2人の姉からいじめられていたり、お父さんに仕事に関してウソをつかれていたりと、ちょっと心の傷を持っています。だからこそホーマーが毒親になってしまった原因である彼自身の心の傷(これも後述します)にも共感でき、モラハラを受けても愛情が絶える事が無いのかもしれません。もしくはマージ自身も、ホーマーや家族に献身的になることで自分の傷が癒える共依存性があるのかもしれません。実際、ホーマーとの関係はメンヘラ界隈によくある彼氏が極悪なのになぜか別れられない女の子のようでもあります。ホーマーが毒であるのに対しマージが聖人であるため、シンプソン家は絶妙なバランスで形を保っています。日本の場合、アダルトチルドレンとなってしまった人に多いパターンは、母親が毒で父親は家庭の事に無関心、そしてアダルトチルドレン自身は女性、というものだと思います。
三人目は長男のバートです。
たぶんシンプソンズでは一番有名なキャラクターですよね。彼が主人公として話が進むエピソードが一番多いです。表面的にはいたずら好きの悪ガキでお調子者で、年齢の割に子供っぽい(たぶん10歳くらいです)という、設定だけでいうとありふれたキャラです。でもこれも、親が毒という視点、そして次に紹介する次女のリサの存在とも絡めると、ちょっと深い面が見えてきます。
四人目は次女のリサです。
私はこのキャラがザ・シンプソンズの裏テーマを最も表しているキャラだと思っています。端的に言うと毒親育ちのメンヘラです。メンヘラ性とアダルトチルドレン性も大枠では一緒です。私がよく漫画に描く闇子ちゃんや妻ちゃんの立ち位置です。表面的には、年齢の割にしっかり者で意識も高く、学校の成績も優秀、時々兄のバートや父のホーマーすらやりこめてしまうくらい口が達者というキャラです。毒親やアダルトチルドレンを知らない人にはありふれたキャラ、知っている人には↑↑の表面的な紹介だけで「あーはいはい」と気づく部分がたくさんあるキャラだと思います。毒親&アダルトチルドレンの関係の基本に、親がやばくて子供に高スペックが要求されるというものがあります。アダルトチルドレンは元々は1970年代のアメリカのアル中家庭で見られた現象で、親がアル中なので子供が家の事をやったり親の機嫌をとったりという高スペックが求められるという基本があります。そして時代や国が変わり、現代の日本で言えば、例えば親が心配性&完璧主義で子供が良い子にならざるを得ない(高スペックが求められる)というパターンなどにもあてはまります。子供の脳は未発達なので常に高スペックを求められると壊れます。そしてその視点からリサの「年齢の割にしっかり者で意識も高く、学校の成績も優秀」というキャラを見ると、そして毒親ホーマーが酔っぱらって道路で寝るなどの行動と照らし合わせると、そこには彼女の高スペックにならざるを得なかった悲しいアダルトチルドレン性が見えて来るのではないでしょうか。そして逆に兄のバートは年齢よりも子供っぽいのです。つまりホーマーの毒を、バートはリサを盾にしてかわし、盾になったリサが毒を一身に浴びた、その結果バートはノビノビすぎるくらいノビノビと子供っぽく過ごせ、リサはバートのぶんまでスペックを高めなくてはいけなかったのではないかという構図が見えてきます。毒親は兄弟姉妹で扱いに差をつけるというパターンがよくあります。その原因の一つが、バートとリサのような関係だと思います。ちなみに私の妻ちゃんと兄も似たような関係で、家で暴れていた兄のぶんまで妻ちゃんはしっかりしなくてはいけませんでした。小学生の頃からです。母からの毒は妻が全て受け止めて、そして壊れてしまいました。
リサにはもっと深堀りエピソードがあります。親しい友達が一人もいないのです。これもアダルトチルドレンあるあるですよね。いびつな親子関係の影響で人に心を開くのが下手になったり、人が怖くなってしまったという現象に思い当たる人は多いのではないでしょうか。しかしそのリサと深い関係になるキャラが二人存在します。非常に象徴的な二人です。一人はジャズマンのマーフィーです。
マーフィーはオッサンです。たぶん40代です。リサは7,8歳です。普通ありえない関係ですよね。でもどうでしょう、親が離婚していて父親が不在だったり、父親が親として未熟だったりして父性を十分受け取っていない、しかもメンタルを病みぎみの女の子がファザコン性を持つのは、結構よくある事ですよね。実際は、この二人が恋愛的な展開になるわけではないのですが、同級生と仲良くできないリサが40代のオッサンと仲良くなり心の内を話せるようになる展開にはアダルトチルドレンならではの、自分の欠落をそれと似た存在で埋めるという病みを感じるのです。リサはHSP要素もあるのか、音楽が好きです。自分でサックスも持っていて、よく演奏しています。毒親ホーマーは毒親あるあるの通り、そういう子供の大切な趣味をバカにします。そういう部分もプラスされてリサはマーフィーに惹かれるんだと思います。サブカルチャーの愛好家が新宿ゴールデン街の小さなサブカルバーで年齢性別関係なくマイナーなホラー映画について語り合うような関係なのではないでしょうか。そして次にリサと深い関係になるキャラは、不良少年のネルソンです。
優秀だった女の子が悪い男の子に惹かれる、ちょっとありえますよね。心底優秀であれば賢いので悪い人は避けますが、無理をした優秀さは抑圧とセットであるため、抑圧の無い自由な存在に惹かれます。ジャズマンのマーフィーにも似た要素があります。日本でバンドブームがすごく長くて、そのファンに女性が多かった心理にも共通するものがある気がします。しかもネルソンは父親は刑務所に入っていて、母親はストリッパーであまり家にいません。彼の家庭も毒なのです。以前読んだ非行少年の本で、非行には「バイク系」と「アニメ系」があるという部分がありました。非行の原因には抑圧があり、それを外に発散するのがバイク系、自分に発散するのがアニメ系という事です。一昔前のオタク層の話ですが、自分がどれだけ作品にこめられた監督の意図を理解しているか、その水準が高いほどオタクとして優秀であるという流れがありました。アニメ系は日本ならではの話で、要は抑圧の発散の方法として優秀であろうとするパターンがあるという事です。つまり優秀であろうとしたリサと不良になったネルソンは根は一緒という事なのです。脚本を書いた人もそういう心理を知っていて、だから惹かれあうエピソードを書いたのかもしれません。ちなみに似たような事は、以前漫画にも描きました。
最後に、全ての発端であるホーマーの毒についてです。毒親&アダルトチルドレンあるあるで、毒親の親はまた毒親という例を聞いたことがある人もいると思います。そしてまさにその通り、ホーマーの父親エイブラハムも毒親なのです。
彼はホーマー以上にわかりやすい毒親です。基本的にホーマーに対しては否定しかしません。お前は間違って生まれた子だとまで言います。現在は老人ホームに入っており、時々家にも来るのですが、その度に家族は嫌な雰囲気になります。でもエイブラハム本人はそれには気づかずわがままにふるまいます。実際の毒親もそうですよね。自己愛が強く、家族に迷惑をかけても気づかなかったり自我を優先します。そこはホーマーも一緒で、時々自分も父親みたいになったら嫌だということで、子供たちに優しく接しようとしますが、センスが無い(というか愛されていなかったから愛し方がわからない)ので、子供たちに嫌がられます。そして逆ギレしてさらに親子関係が悪化します。そういう展開も毒親にはよくありますよね。愛情は相手に与えるものなのに、毒親の示す愛情の基本にあるのは自分のためだからうまくいかないのです。エイブラハムの話に戻って、ではなぜ彼はそんな親になってしまったのかというと、なんとベトナム戦争帰りという設定があるのです。つまり過酷な戦争の精神的な後遺症の一種なのです。現在のシンプソン家の毒、リサが受けていた毒の元をたどると、過酷なベトナム戦争があるというわけです。↑↑で、アダルトチルドレンは元々は1970年代のアル中家庭で見られた症状という事を書きましたが、そのアル中になってしまった原因の一つにも、まさにベトナム戦争のメンタル的な後遺症があったと言われているのです。戦争によりメンタルのバランスが崩れる→毒親化する→その子供も毒親化する→その子供も…という連鎖が起きていたという事です。この連鎖は、毒親に育てられアダルトチルドレンとなり生きづらさを抱えただけでなく、シリアルキラー(連続殺人鬼)になるパターンもありました。実際、アメリカの連続殺人事件の80%が、1970年代~1990年代に起きており、犯人は全て戦争の時代に産まれた人達だったそうです。私が以前描いた漫画でも、日本人が仕事にとりつかれる原因の元をたどると太平洋戦争に行きつくような事を書きましたが、それと似たような事です。戦争によっておきたひずみが、形を変えて現代まで連鎖しているのです。
ザ・シンプソンズはそういった社会のゆがみをおもしろくデフォルメして作られた作品です。このブログで紹介した内容はどれもアダルトチルドレン本人からすると深刻なものですが、作品内では全てギャグになっています。茶化す…と言うと聞こえが悪いですが、深刻な内容を深刻なまま表現すると、観るほうは嫌になってしまいます。ギャグにしたほうがスっと入ってきて、観終わった後に何かを考える心の余裕も出来るのではないでしょうか。もちろんシンプソンズは毒親&アダルトチルドレン的な話はごく一部で、その他の風刺的な話のほうが多いです。どの話も面白いので、機会があればぜひ観てみてくださいね。私と妻ちゃんも大好きで、DVDやグッズもたくさん持っています。
[おまけ]
現在描いているアダルトチルドレン漫画の下書きです。今まで闇子ちゃんシリーズは26話まで描きましたが、全て基本はこの毒親&アダルトチルドレンという考え方に基づいています。なので一回基本に立ち返って、アダルトチルドレンについての解説の漫画を描く事にしました。わかりやすいように自分なりのデフォルメ解釈も入れています。そして何やら変なキャラも出て来ます。楽しみにしていてください。