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マネーライフ・ストーリー対話会での学び:『すべては1人から始まる』Part3より

今回は、先日有志のメンバー6名で開催されたマネーライフ・ストーリーの対話会での気づき、学びについてまとめていきたいと思います。

私が今回、ご一緒することになった皆さんは、以前参加させていただいた『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』を扱ったABD読書会がご縁で集まったメンバーです。

すべては1人から始まる(原題:Work with Source)』のPart 3は、お金と自分自身の関係を見つめ直す章となっています。

そして、そこで実践のためのワークとして紹介されていた1つが、『マネーライフ・ストーリー』の振り返りです。

人が創造性を発揮するためにどうしてもぶつかる「お金」の問題。

この根源は、わたしたちが体験してきた出来事と、そこで感じた感情が大きく影響しており、わたしたちがお金に感じる「囚われ」や「投影」を扱うことで創造性が取り戻される、といったように著者のトムは表現していました。

では、実際に取り扱ってみませんか?という呼びかけで始まったのが今回の対話会でした。


ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎)とは?

有志の研究会がこれまでの読書会の限界や難しさを検討し、能動的な学びが生まれる読書法として探求・体系化したアクティブ・ブック・ダイアローグ®️(ABD)

開発者の竹ノ内壮太郎さんは、以下のような紹介をしてくれています。

アクティブ・ブック・ダイアローグ®は、読書が苦手な人も、本が大好きな人も、短時間で読みたい本を読むことができる全く新しい読書手法です。

1冊の本を分担して読んでまとめる、発表・共有化する、気づきを深める対話をするというプロセスを通して、著者の伝えようとすることを深く理解でき、能動的な気づきや学びが得られます。

またグループでの読書と対話によって、一人一人の能動的な読書体験を掛け合わせることで学びはさらに深まり、新たな関係性が育まれてくる可能性も広がります。

アクティブ・ブック・ダイアローグ®という、一人一人が内発的動機に基づいた読書を通して、より良いステップを踏んでいくことを切に願っております。

https://www.abd-abd.com/

2017年、その実施方法についてのマニュアルの無料配布が始まって以来、企業内での研修・勉強会、大学でのゼミ活動、中学・高校での総合学習、そして有志の読書会など全国各地で、様々な形で実践されるようになりました。
ABDの進め方や詳細については、以下のまとめもご覧ください。

ソース原理(Source Principle)とは?

ソース原理(Source Principle』とは、イギリス人経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威影響力創造的なコラボレーションに関する洞察を体系化した知見です。

不動産業界で成功したビジネスマンとしてキャリアを進んでいたピーター・カーニック氏は、クライアントたちとの交渉の中で相手側が不合理な判断・意思決定を行う場面を目にしてきたといいます。

このことをさらに突き詰めていくと、「お金と人の関係」がビジネスにおける成功、人生の充実に大きく影響していることに気づき、ピーターによる「お金と人の関係」の調査が始まりました。

その後、お金に対する価値観・投影ついて診断・介入できるシステムであるマネーワーク('moneywork')が体系化され、その過程でソースワーク(Source Work)が副産物的に生まれてきたとのことです。

マネーワーク('moneywork')は自身の内面を扱うインナーワークに比重が置かれており、ソースワーク(Source Work)はアイデアを実現するためのアウターワークに比重が置かれていると言います。

(ピーターの「お金と人の関係」の研究及びマネーワーク('moneywork')については、以下のインタビュー記事もご覧ください。)

今回の講演会にピーターは参加していなかったものの、ソース原理(Source Principle)を扱った講演やイベントを行う上でピーターを紹介せずに行うことはできない、ということをガイドの皆さんはお話しされていました。

それは、人々がそれまで無意識に行っていた創造的に活動を展開すること、一人ひとりのあり方を尊重しながらコラボレーションすることについて、ソース原理(Source Principle)という言語を発見し、意識的に扱うことを可能にしたピーターへのリスペクトによる姿勢であり、ステファンも講演中、何度も言及していた他、書籍の中でも触れています。

But as old as these principles may be, Peter Koenig is clearly the source of their uncovering: it was he who first developed the vocabulary that makes sense out of these patterns, the language you will encounter in these pages.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p12

It was obvious to me that a book about source would have to acknowledge the person who developed the source vocabulary and was the first person to research the principles, so I offered Peter Koenig "the last word" which he accepted by writing the afterword.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p87

この尊重と尊敬の姿勢は、ソースが実現しようとするアイデアそのものに対しても大切な姿勢です。

アイデアとは贈り物であり、自らがゼロから生み出したものではなく、受け取った直感やインスピレーションによって、自分の中で形を成したものであるというのが、ガイドの皆さんが紹介してくれた見方です。

ソース(Source)とは、アイデアの所有者(owner)というよりも保持者(repository)であるという姿勢は、ソース原理(Source Principle)の実践にとって非常に重要なものであると、ステファンをはじめとするガイドの皆さんがお話しされていたのも印象的でした。

ソース原理の国内における広がり

日本においてのソース(Source)の概念の広がりは、『ティール組織(原題:Reinventing Otganizations)』著者のフレデリック・ラルー氏(Frederic Laloux)によって初めて組織、経営、リーダーシップの分野で紹介されたことが契機となっています。

2019年の来日時、『ティール組織』著者フレデリック・ラルー氏によって組織、経営、リーダーシップの分野で紹介されたことが契機となって初めて知られることとなったソース原理(Source Principle)。

フレデリック・ラルー氏もまた、ピーター・カーニック氏との出会い、彼からの学びを通じて、2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分で記載している他、『新しい組織におけるリーダーの役割』と題した動画内で、このソース原理(Source Principle)について言及したということもあり、国内で注目が集まりつつありました。

その注目度の高さは、本邦初のソース原理に関する書籍の出版前、昨年8月にトム・ニクソン氏の来日が実現する、といったことからも見てとれます。(オンラインでのウェビナーの他、北海道・美瑛町、東京、京都三重屋久島など全国各地でトムを招いての催しが開催されました)

2022年10月、ピーター・カーニック氏に学んだトム・ニクソン氏(Tom Nixon)による『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』が出版されて以降も、ソース原理(Source Principle)に関連したさまざまな取り組みが国内で展開されています。

今年4月にはソース原理提唱者であるピーター・カーニック氏の来日企画が実現し、システム思考・学習する組織の第一人者である小田理一郎さんや、インテグラル理論・成人発達理論の研究者である鈴木規夫さんとの対談、企画の参加者との交流が活発に行われました。

日本での流れに先立ち、ソース原理(Source Principle)が世界で初めて書籍化されたのは、2019年にステファンによる『A little red book about source』のフランス語版が出版された時でした。

その後、この『A little red book about source』は2020年に英訳出版され、2021年3月に『すべては1人から始まる』の原著であるトム・ニクソン著Work with Sourceが出版され、本書が『すべては1人から始まる』として日本語訳され、英治出版から出版されました。

『すべては1人から始まる』は日本の人事部「HRアワード2023」の入賞も果たし、ビジネスの領域においての注目も高まっていることが見て取れます。
このような背景と経緯の中、ソース原理(Source Principle)の知見は少しずつ世の中に広まりつつあります。

ソース(Source)とは?

トム・ニクソン『Work with Source(邦題:すべては1人から始まる)』を参照すると、ソース(Source)とは、1人の個人が、傷つくかもしれないリスクを負いながら最初の一歩を踏み出し、アイデアの実現へ身を投じたとき、自然に生まれる役割を意味しています。

The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.

Tom Nixon「Work with Source」p20

An individual who takes the initiative by taking a vulnerable risk to invest herself in the realisation of a vision.

Tom Nixon「Work with Source」p249

ステファンの書籍においては、この役割を担うことになった人について、特に「ソース・パーソン(source person)」と呼んでいます。

A source is a person who has taken an initiative and through that has become the source of something: we can call this a "source person".

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17
Stefan Merckelbach「A little red book about source」
Tom Nixon「Work with Source」

トム、ステファンの両者が著している様に、ソース(Source)は特別な人だけがなれる役割ではなく、誰もがソース(Source)である、というものです。
アイデアを実現するために一歩踏み出すことは、社会を変えるような大きなプロジェクトの立ち上げに限りません。
友人関係や恋人関係、夫婦関係などにも、誘ったり、告白したり、プロポーズしたりと主体的に関係を結ぼうと一歩踏み出したソース(Source)が存在し、時に主導的な役割が入れ替わりながらも関係を続けていく様子は、動的なイニシアチブと見ることができます。
さらに、自身の研究課題を決めること、就職を思い立つこと、ランチを作ること、休暇の予定を立てること、パートナーシップを築いていくこと等、日常生活の様々な場で誰しもが何かのソース(Source)として生きていることをトム、ステファンの両者は強調しており、日常生活全般にソース原理(Source Principle)の知見を活かしていくことができます。

This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.

Tom Nixon「Work with Source」p30

We take initiatives all the time: deciding on a particular course of study, going after a certain job, starting up a business, planning a special dinner. I can initiate a friendship or partnership, change my housing situation, make holiday plans, decide to have a child. Or I might step forward to join a project sourced by someone else.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17

また、当日の講演会でステファンは、まったく新しいことを始めるだけでなく、既にある仕事や日々の取り組みの中でソースとなるべく直感が降りてきたり、誘われることもあるとお話しされていました。

マネーライフ・ストーリー対話会

今回の対話会は、大きく二部構成になっていました。

第一部は、自分自身のお金との関係を見つめ直すワークタイム。
第二部は、それぞれのマネーライフ・ストーリーを持ち寄っての対話の時間。

自分自身のマネーライフ・ストーリー

皆さんそれぞれの形で、本当に大切な部分をシェアしていただく中、私自身は以下のような形でマネーライフ・ストーリーを紹介しました。(内容の詳細は省略しています。)

私のマネーライフ・ストーリー(詳細省略版)

自分自身が改めて振り返ってみた気づきとしては、右半球の少年期までは特に親との関係からお金に関する出来事が多かったのに対し、左半球は20代後半以降に怒涛のような変化が現れてきているということでした。

その一部が、以下のような米農家としての営みでもあったりします。

いずれにしても、人生の大きな局面とお金の問題は密接に絡んでおり、信頼できる少人数でのクローズドな空間だからこそ、詳細も含めて話せたように感じます。

それほど、お金とパーソナリティは深く結びついていました。

自分自身の人生としては、どんどん良い方向に迎えている兆しを感じていたのがありがたかったですね。

対話の時間で話されたこと

対話の時間では、現在の社会構造について話のテーマが膨らんだように感じました。

資本主義、ヴァーチャリズム、キャピタリズム、シェアリズム…etc

また、オルタナティブな経済のあり方についての探求もなされたように感じます。

コモンズ(共有地)、お金じゃなくても満たせるもの、自然、自分の働き方…etc

個人的なところとしては、産業としての農業については思うところを少しシェアしてみたり、一方で内心迷っている部分もあったりと、意識のさまざまな場所が刺激されるような時間だったように思います。

※シェアした一部については、以下の内容も含まれていました。

チェックアウトにて

最後に、参加したそれぞれが一言ずつ気づきや感想を述べていくチェックアウトの時間を取ったのですが、その時に話した内容やその時の空気が印象に残っています。

その時、自分はこんなことを話したように思います。

今、この瞬間、皆さんと同じようなことに関心を持って集まれている時間やこの集まりそのものが、無形のコモンズ(共有財産)だとしたら、どんなものやことを資産として貯めていったり、育てていったりできるだろう?

思えば、ここ最近常々考えているテーマだったかもしれませんが、ふとコモンズ(共有地)というキーワードから連想されたのでした。

このまとめを読んでくださった皆さんも、もし何か惹かれるものなどありましたら、是非是非ご一緒しながら探求していけると幸いです。

次なる探求への参考リンク

30 Lies About Money: liberating your life, liberating your money

成人発達理論から考える成長疲労社会への処方箋

人が成長するとは、どういうことか 発達志向型能力開発のためのインテグラル・アプローチ

「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC

In Zukunft ohne Geld?: Theoretische Zugaenge & gelebte Alternativen


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