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【書評掲載】ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1143号

今年度4月より産労総合研究所が発行している専門誌『企業と人材』の書評コーナーの連載を毎月1回担当することとなり、早くも今回で10回目となりました。

これまで9ヶ月にわたり、『人と組織の力を高める人材開発情報誌』である本誌にて『人を活かす組織づくりのヒント』と題した書評コーナーにて関連する書籍を紹介してきましたが、今回の書籍は私にとっても思い入れのある一冊です。

人を活かす組織づくりのヒント』を提供する書籍として今回、取り上げたのはステファン・メルケルバッハ著、青野英明嘉村賢州翻訳・監修『『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』(英治出版)です。

書評コーナー『人を活かす組織づくりのヒント』

ピーター・カーニック氏が提唱したソース原理(Source Principle)を詩的な文体とユーモア、著者自身が独自に深化させた知見も交えて体系的に紹介している本書は、2022年出版のトム・ニクソン著『すべては1人から始まる』と合わせてご覧いただきたい一冊です。

『企業と人材』と『ソース原理[入門+探求ガイド]』

企業と人材』は毎月5日に発行予定ですので、書評コーナー以外もぜひ手に取ってご覧ください。

以下、今回取り上げた『『ソース原理[入門+探求ガイド]』の書評記事を読み進める上での補足情報として、ソース原理(Source Principle)とはどういった概念であるかを簡単に紹介できればと思います。


ソース原理(Source Principle)とは?

ソース原理(Source Principle)とは、経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威影響力創造的なコラボレーションに関する洞察・知見の体系です。

ソース原理(Source Principle』は、お金に対する一人ひとりの価値観・投影(projection)ついて診断・介入できるシステムであるマネーワーク(moneywork)の発明を機に発見・体系化されました。

不動産業界で成功したビジネスマンとしてキャリアを進んでいたピーター・カーニック氏は、クライアントたちとの交渉の中で相手側が不合理な判断・意思決定を行う場面を目にしてきたといいます。

このことをさらに突き詰めていくと、『お金と人の関係』がビジネスにおける成功、人生の充実に大きく影響していることに気づき、ピーターによる『お金と人の関係』の調査が始まりました。

その後、お金に対する価値観・投影ついて診断・介入できるシステムであるマネーワーク('moneywork')が体系化され、その過程でソースワーク(Source Work)が副産物的に生まれてきたとのことです。

なお、マネーワーク('moneywork')は自身の内面を扱うインナーワークに比重が置かれており、ソースワーク(Source Work)はアイデアを実現するためのアウターワークに比重が置かれていると言います。

さらに、自分とお金との関係について見直し、投影していた対象からパワーを取り戻したソースが、そのビジョンをさらにクリアに、さらに広げていくためのアプローチとしてビジョンワーク(Vision Work)という実践法も存在します。

2025年1月現在、このソース原理について日本語で読むことが可能な書籍は2冊出版されています。

一冊は、トム・ニクソン『すべては1人から始まる』。本書は、日本の人事部HRアワード2023書籍部門に入賞するなど、経営・HR領域において注目を集めた一冊です。

もう一冊が今回、私が書評コーナーにて取り上げた、ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]』です。

トム・ニクソン『すべては1人から始まる』
ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]』

ソース(Source)とは?

トム・ニクソン『Work with Source(邦題:すべては1人から始まる)』を参照すると、ソース(Source)とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割を意味しています。

また、本書中の用語解説では、『脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと』と説明されています。

The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.

Tom Nixon「Work with Source」p20

An individual who takes the initiative by taking a vulnerable risk to invest herself in the realisation of a vision.

Tom Nixon「Work with Source」p249

ステファン・メルケルバッハ氏の書籍『A little red book about source(邦題:ソース原理[入門+探求ガイド])』においては、この役割を担うことになった人について、特に「ソース・パーソン(source person)」と呼んでおり、『あるアイデアに基づいてイニシアチブを取る人』のことを指します。

A source is a person who has taken an initiative and through that has become the source of something: we can call this a "source person".

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17

A source person takes an initiative based on an idea.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p21

加えて、イニシアチブ(を取ること)にはリスクを取ること、未知の世界に飛び込むという側面があると紹介しています。

We may now add the dimension of risk-taking, which inevitably accompanies the initiative—itself more or less a dive into the unknown.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p27
Stefan Merckelbach『A little red book about Source
Tom Nixon『Work with Source

そして、朝食を作ることや休日の予定を立てること、恋人に結婚を申し込むことから大きなビジョンを抱いて起業することに至るまで、人生のさまざまな場面で人はソースになり得ます。

振り返ってみれば、私たちはこれまでの人生で既に、何らかの活動のソースになったことがあるとがわかるでしょう。

This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.

Tom Nixon「Work with Source」p30

We take initiatives all the time: deciding on a particular course of study, going after a certain job, starting up a business, planning a special dinner. I can initiate a friendship or partnership, change my housing situation, make holiday plans, decide to have a child. Or I might step forward to join a project sourced by someone else.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17

今後のソース原理関連イベント情報

1/20 (月)ティール組織ラボ主催「ソース原理」概論編講座

2025年1月〜8月開催:【トライアル版】 ピーター・カーニック著書 “探究”読書会📚

2025年2-3月開催:Source Work【ソース原理 実践ワークショップ】

さらなる探求のための参考リンク

なぜ、あなたの提案は通らないのか? 欧米で話題の「ソース原理」入門|Business Insider

大きなアイディアを実現させる創造の源「ソース原理」とは何か|Forbes JAPAN

国内におけるソース原理(Source Principle)探求の潮流を概観する:2025年1月時点の現在地

人材開発情報誌『企業と人材』とは?

『企業と人材』は、株式会社産労総合研究所が発行している『人と組織の力を高める人材開発情報誌』です。

『企業と人材』第1143号(2025年1月5日発行)

発行元である産労総合研究所は、1938年(昭和13年)に創設された労働問題の民間調査機関『産業労働調査所』を前身とする出版社・民間シンクタンクです。

企業と人材』は1968年(昭和43年)に『社内報新聞』として創刊され、その後『社員教育』、『企業と人材』へと改題を重ねながら、2013年2月に第1000号が発行されました。

産労総合研究所は企業と人材の他、賃金事情』『労働判例』『労務事情』『人事の地図といった人事労務分野だけではなく、病院経営羅針盤』『医事業務など医療介護経営分野における出版を中心に、同分野での調査研究・提言を行っています。

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書評掲載バックナンバー

エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1134号

鈴木規夫『インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1135号

ブライアン・J・ロバートソン『[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1136号

ウィリアム・ブリッジズ『トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1138号

中田豊一『対話型ファシリテーションの手ほどき』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1138号

池田めぐみ、安斎勇樹『チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1139号

宇田川元一『企業変革のジレンマ ―「構造的無能化」はなぜ起きるのか』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1140号

枝廣淳子『答えを急がない勇気―ネガティブ・ケイパビリティのススメ』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1141号

デビッド・アレン『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』


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大森 雄貴 / Yuki Omori
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