【開催記録】『他者と働く』×アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD):「わかりあえなさ」を越えて
昨年7月から毎月1回、Impact Hub Kyotoにて開催している『これからの組織と人を探求する』読書会シリーズ。
2020年初めての企画は、宇田川元一さん著『他者と働く』を扱いました。
組織の中で起こる課題には大きく2つあると言います。
既にある方法・技術等で解決できる『技術的問題(Technical Problems)』と、それら既存の技術・方々で解決できない『適応課題(Adaptive Challenge)』。
この、一筋縄でいかない組織文化や関係性の中で起こる『適応課題』に対し、現実的かつ実践的なアプローチである『対話(Dialogue)』。
この『対話』とは、そもそも何か?
この『対話』を、いかに組織の中で活用していくか?
を焦点に、 アクティブ・ブック・ダイアローグ(Active Book Dialogue)の方式で、ほぼ丸々一冊を2時間半程度で読み解き、対話を深めるという時間を皆さんと作っていきました。
アクティブ・ブック・ダイアローグ®️(ABD)とは?
有志の研究会がこれまでの読書会の限界や難しさを検討し、能動的な学びが生まれる読書法として探求・体系化したアクティブ・ブック・ダイアローグ®️(以下、ABD)。
開発者の竹ノ内壮太郎さんは、以下のような紹介をしてくれています。
2017年、マニュアルの無料配布が始まって以来、企業内での研修・勉強会、大学でのゼミ活動、中学・高校での総合学習、そして有志の読書会など全国各地で、様々な形で実践されるようになりました。
この新たな読書、学びのムーブメントは出版業界にも波及しました。
出版前の読み合わせで参加者から感想をもらって校正に活かす、ABD実践用の書籍のゲラ提供が起こる等、出版社独自の取り入れ方により、出版における読者と出版社、著者の新たな関わり方が生まれました。
このような取り組みが「読まない読書会、ベストセラーを育てる」と題して日経MJに取り上げられる等、読者コミュニティを育てるというABD独自の可能性も拓かれました。
具体的な実施方法などさらに詳しくは、以下のまとめもご覧ください。
対話の中での気づき・発見
今回、お集まりいただいた皆さんは、滋賀、大阪等京都以外の都市からお越しの方もいれば、ABD読書会も初めてだという方。
自治体職員さんもいれば、介護福祉施設の職員さん等、様々な方がいらっしゃいましたが、皆さんに共通していたのは、何かしら組織の中で活動することに課題感や興味があり、どう『対話』活用していくか?にとても大きな関心を抱かれている点でした。
組織内で『適応課題』に直面するとき、多くの方は自分と相手(例えば上司、別部署の同僚等)との間に、互いに捉えている視点の違いからくる考え方や意見のギャップ(≒ナラティブの違い)を感じます。
『対話』を進めるためには、この『ナラティブ』の溝に『橋をかけていくこと』が必要となるのですが、では、『橋をかける』とはどういうこと?『どんな入り口から橋をかけていくことができるの?』という問いも、もちろん出てきます。
この点について、小グループでの対話は盛り上がっていたように見えます。
書籍の中にいくつか事例も描写されていたのですが、それでもなお『どのようにできるだろう?』という問い。
当然の話ですが、ある組織における『ナラティブ』の溝は様々で、『橋をかける』こともまた、その人の置かれた独自の立場から始める他ありません。
何より、
『自分は、どんな環境に置かれていて、そのためにどんな独自の意見・価値観(≒ナラティブ)を持っているのか?』
『相手もまた、どんな環境に置かれていて、そのためにどんな独自のナラティブを持っているのか?』
この土台の上に立つことが、一番初めのステップなのかもしれません。
スペインの哲学者オルテガは、『人とは、その人とその人の環境である』という考え方を示しています。
私たち一人ひとりは、集団や組織の中における『関係性』の中に埋め込まれており、否応なくその『関係性』の中の文化や価値観に影響を受け、時にがんじがらめになってしまいます。
その『関係性を、新たな形に再構築する』ことこそが、『対話』なのだと著者は語ります。
今回の読書会を通じて、参加された皆さんのナラティブがどのように変容したのか、そうではないのかがとても気になるところですが、会の終了後22時近くまで残って『対話』を続けておられた皆さんの姿に、自分自身も励まされるようなありがたいような、そんな気持ちになれました。
さらなる探求のための参考リンク
【開催記録】ABD読書会『愛、パワー&パーパス〜人と組織の進化力を紡ぐ新たな物語』presented by NexTreams
レポート:アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎で読む『ヒューマノクラシー「人」が中心の組織を作る』
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