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ゼロから始める伊賀の米づくり53:地域の友人たちとの協力で進めた代掻き作業まで
2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の田植えシーズンがやってきました。
家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で53回目です。
今回は、田んぼへの水取りから代掻き時の気づきについてまとめようと思います。
田んぼに水を引く、水取りまで
春になると田んぼにやってくる動物たちが持ち込んだり、畦道から侵入した草花が一気に成長してくるため、それらを除くためにトラクターで耕します。
そして、地域ごとに割り振られる水を引く順番、時間を守り、田んぼに水を引き込んでいきます。
この時、他の地域への配慮なしに早々に水を取ったりしてしまうと、その田んぼと持ち主は丸わかりとなり、「村八分」となる、というのが水利組合や農業者たちの常識です。
そういったことにも気をつけつつ、田んぼに水を引き、代掻きを行い、そして田植えを行います。
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今回、田植え前のトラクターでの耕起は地域の友人の皆さんにも手伝ってもらうことができ、彼らそれぞれの作業の癖の違いにも触れることができました。
今回は実家の母もトラクターに乗り、その難しさも実感してくれました。
四角い区画である田んぼ(圃場)をトラクターが走ると、トラクター後部のロータリーで土を耕すことができます。ただ、カーブを曲がる際にロータリーを上げず丸く田んぼを走行すると、角を耕すことができず丸く走行した轍が残ってしまいます。
また、トラクターの性能の違いによっても、耕した後の土の様子は異なります。
細かく土が砕かれた状態となる、落ち葉などを土の中に巻き込む機能がある・ないなど、価格帯や購入時期、メーカーによってその機能は少しずつ違います。
などなど、このような面白さを母も含めてわかちあうことができたように思います。
代掻き作業まで
今年の代掻き作業はこの5年ほどで一番くらいに寒い中での作業となったように思います。
私の地元であり、田んぼが位置する伊賀は盆地であり、昼夜の寒暖差が比較的大きい地形をしています。
また、数日間太陽の日差しがなければすぐに冷え込んでしまい、今回の白描き作業もまさにそのようなコンディションで行うこととなりました。
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水を引き込んだだけでは、まだまだ土の凹凸も見える田んぼです。
後に田植えをしやすくなるよう、土と水を攪拌し、凹凸を無くすと同時に柔らかく、かつ、平らに均していく作業が代掻きです。
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いざ、トラクターで代掻きに向かってみると、先述した各々のトラクターの乗り方・操作の仕方によって土の状態が違うことがよくわかりました。
十分に田んぼを耕せていない場合、ロータリーに備わっている回転爪がガリガリと大きな音を立て、振動は座席まで伝わってきます。
また、どうやらタイヤには大きな塊のような土がこびりつくやすくなるらしいことも見えてきました。
トラクターが荷重をかけて水を含んだ柔らかい土の中を走行すると、事前に耕して粒が細かくなっていない土が塊になってタイヤに付着してしまうらしいのです。
それでも、何度も往復しながら細かく水と土を攪拌していくことでタイヤへ付着した土も徐々に取れていき、ガリガリと引っ掻くような大きな音も減ってきました。
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作業中、雨が降ったり止んだりの天候でしたが、基本的に土砂降りでない限り作業は続行します。
これが稲刈りとなると作業は難しいのですが、この点はまた稲刈り時の記録で触れたいと思います。
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代掻き後の田んぼの推移
代掻きを終えた後、田んぼは一日放置します。
これは、代掻き時に散布している除草剤が田んぼに定着させるためです。
とはいえ、根こそぎさまざまな生物を死滅させることはなく、毎年カエルやオタマジャクシ、タニシ、ヤゴ、トンボ、タガメ、ケラなどのような生物が田んぼに現れ、それらを狙ってシロサギ、アオサギ、トビ、セキレイなどのような鳥類がやってきます。
代掻き直後の田んぼは水と土を攪拌したばかりで泥水が浮いていますが、時間が経つごとに泥水も収ってきます。
以下、その様子を定点観測した記録です。
代掻きの翌日の朝。上空には大きな雲が浮かび、その雲が田んぼの水面に反射しています。
まだまだ水は泥混じりのように見えます。
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昼になると雲が減り、筋雲が増えてきました。空の青さも増し、雨の後の澄んだ色に変わってきている様子が伺えます。
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次第に田んぼの水が落ち着き、土の表面を真っ直ぐに走る作業後のラインのようなものも見えてきました。
最後が、夕方の様子です。
雲が消え、空の青さが水面に映って深い色合いになっています。
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この後が、いよいよ田植え作業です。
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