アーノルド・ミンデル『対立の炎にとどまる』オンラインABD読書会で振り返った、葛藤と対立のファシリテーション経験
2022年12月某日。アーノルド・ミンデル著『Sitting in the Fire』の全訳『対立の炎にとどまる』が手元に届きました。旧版『紛争の心理学』は抄訳であったので、こうして気持ちを新たに向き合えるのは嬉しいですね。
アーノルド・ミンデルの思想との出会い
私とアーノルド・ミンデルの初めての出会いは、 廣水 乃生 さんが講師としてやってきた『場づくりカレッジ』という場づくり・ファシリテーションを学び、実践するプログラムでした。
その際に初めて私は、人の集団では表面的なやりとり以上に非言語の、明確化されていないメッセージのやりとりが行われており、そのような場をファシリテーションするとき、ファシリテーターはそのダイナミクスの構造を捉え、違和感やメッセージに対する自覚を高める必要がある、といったことを体系的に学んだと記憶しています。
その学びに何か確信的なものを感じたのか、以降私は『紛争の心理学』『ディープ・デモクラシー』とどんどん日本語訳されたミンデルの本に手を出して読み漁り、それらの原著も取り寄せるまでに至ります。
ところで、どうして原題は『Sitting in the Fire(炎の中に座る)』なのでしょうか?
そのような問いを持ってみると、同じようなタイトルの本も見つかるではありませんか。ラリー・ドレスラー著『Standing in the Fire(邦題:『プロフェッショナル・ファシリテーター』)』です。
2010年代後半、私は組織・集団のファシリテーターを生業としていたわけですが、グループ内の葛藤や対立が深まる中で一触即発の場面や、暴力性が噴出するような場面にも遭遇してきました。
そのような時、ファシリテーターとしての私は文字通り炎に焼かれるような緊張感、緊迫感、存在を揺さぶられるような危機感に身を置かれます。
それでも、そんな中でも、対立を超えたその先に、より良い未来を描きたい…と願い、自分の存在を投げ出すような覚悟と決心を持って場に臨み、真摯にファシリテーターとしての役割を全うする。
そのような体験で感じていたものが、『炎』ではなかろうか、というのが私の仮説です。
初めての邂逅以来、アーノルド・ミンデルが創始したプロセス指向心理学、プロセスワークを実践するプロセスワーカーの方々とも出会い、対話を重ねてくる中で今ここに至りますが、改めて『Sitting in the Fire』に触れることができるのは、嬉しいですね。
間違いなく、今の私を形作っている大切な要素に再びスポットを当ててくれているような気がするからです。
このようなことを語り合いたいな、と思っていたところ、ちょうど本書を扱うABD読書会が開催されると知り、参加することにしました。
ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎)とは?
アクティブ・ブック・ダイアローグ®️(以下、ABD)は、有志の研究会がこれまでの読書会の限界や難しさを検討し、能動的な学びが生まれる読書法として探求・体系化したメソッドであり、ワークショップの1手法とも言えます。
開発者の竹ノ内壮太郎さんは、以下のような紹介をしてくれています。
2017年、その実施方法についてのマニュアルの無料配布が始まって以来、企業内での研修・勉強会、大学でのゼミ活動、中学・高校での総合学習、そして有志の読書会など全国各地で、様々な形で実践されるようになりました。
ABDの進め方や詳細については、以下のまとめもご覧ください。
祝復刊 アーノルド・ミンデルの名著『対立の炎にとどまる』をABDで読んでみよう
今回、参加させていただいたのはそんな数あるABD読書会の中の一つ、ABD読書会の手法の開発者・竹ノ内壮太郎さんと運営チーム主催の『祝復刊 アーノルド・ミンデルの名著『対立の炎にとどまる』をABDで読んでみよう』という会でした。
一回につき2時間、書籍は数章ずつ読み進め、何回かに分けて行う方式です。今回は、15〜16名ほどが参加されていました。
4〜5名程度に分かれたグループでの対話で、特にテーマとして注目されていたのは、ランクの差についてでした。
私たちが生きていく中で、無自覚なまま備わるランク。
それは、人種、言語、国、民族、宗教、支持する政党・政治思想といったものから、学歴、所属、親と子、上司と部下といった立場の差に至るまで、日常生活のさまざまな状況の中でパワーバランスを左右するものです。
自分のランクが高い場合・低い場合、どうその人と対応すれば良いのか?といった問いがグループで投げかけられ、そこから、
相手とどのような関係を作りたいと願っているのか?
その関係を築くため、どのような対応、振る舞いを心がけ、実践するか?
このような問いに発展しながら対話が進んだように思います。
集まったみなさんも、同じ書籍に惹かれ、何かしら共通する関心をお持ちの同志です。
次回以降の対話や探求も楽しみにしつつ、継続的に参加していければと感じます。
次回のまとめは、こちら↓