自然農法×バケツで始める米づくり1。福岡正信氏育成のお米『ハッピーヒル』を手に入れた
それは、今年2021年の田植えを控えたある日のことでした。
『大森ちゃん。よかったらハッピーヒル 、育ててみない?』
循環畑の実践者で、長年の友人である宮慶優子さんは唐突にそう言いました。
ハッピーヒルとは、不耕起・無肥料・無農薬で作物を育てる『自然農法』を確立した福岡正信氏が交配、育成したお米の品種のことです。
その名の由来は、福岡正信氏の名前から福(=Happy)岡(=Hill)と直訳し、名付けられたそうです。
『大森ちゃんのやってる田んぼのどこか一角でも良いし、多分、場所はあると思うから!』
確かに自分は、2020年に実家の米づくりを継いでいましたが、
基本的に米づくりについては慣行農法でやってきました。土に肥料を加え、雑草が生えづらくするための除草剤も数年に一度は使い、毎年せっせとトラクターに乗って土を耕す、というものです。
福岡正信さんの自然農法、優子さんの実践している循環畑のように、不耕起・無肥料・無農薬……つまり、土や微生物、作物そのものの力によって人間の介入を最小限にしつつも、立派に美味しく作物を育てる方法とは真逆のものです。
一般的に、スーパーに並んでいるお野菜の多くは土に肥料をまき、雑草や病原虫・害虫を駆除するための農薬等を使うことで育てられています。
肥料や農薬は特に第二次世界大戦以降、世界中の食糧問題、飢餓の課題を解決するために必要とされる形で生まれてきました。
規格化され、一定の品質を保った作物を育て、人々の食卓へ届ける上で、その当時として、そして現在でも、必要性の観点から肥料や農薬は活用されてきました。
米づくりに関してもそうです。
一方で、健康のニーズから、あるいは農薬や肥料が及ぼす長期的な生物多様性、環境への負荷の観点から無肥料・無農薬の作物が求められている現状があり、また、既存の肥料や農薬を使わない農法を積極的に開発し、成果を収めている農家や実践家の方もいらっしゃいます。
いわば、自分は慣行農法と自然農法両方を知った中で、農のあり方、人のあり方、自然との付き合い方について日々揺れ動きながら探求・実践している最中でした。
そんな最中に、ふと紹介されたのが、このハッピーヒルです。
「ありがとうございます!やってみます!!」
その時はそうやって返事をしてみたものの、さて、この種籾はどうしようとしばらく考える時間が必要でした。
そんなこんなで5月連休の田植えが終わり、一段落した頃、5月20日に自分は誕生日と結婚記念日を迎えました。
この時、何がきっかけなのかはわかりませんが、まさに天啓が降りてきました。
「そうだ!このハッピーヒルは、実際に実験的に育てている優子さんや開発者の福岡正信さんのように、自然農法的に育ててみよう!ついでに、水稲栽培でもなく、畑にまく陸稲(おかぼ)式でもなく、バケツに土と水を入れて育てるプランター式で実験してみよう!」
実は、今年から仲間と共に本格始動した『循環コモンズ村』というプロジェクトがあるのですが、その中で『畑で育つお米・陸稲(おかぼ)』を育てる実験を始めていました。
既に、コモンズ村にて自然農法的(はじめ、土と地中の微生物を活性化させるために耕して落ち葉を養分として入れるが、あとは雨水等の自然の恵みのみで育てる)に米を育て始めていたので、それとは違った形でこのハッピーヒルは育ててみよう、と思ったわけです。
思い立ったが吉日。
ネットで調べている中で見つかったバケツプランター栽培を参考にすることとし、まずはこの種籾の芽出しを行うことにしました。
この芽出しの時点で、種籾からより良いものを選ぶプロセスもあるのですが、今回大事にしたいことは、大きく3つ。
『必要最低限のプロセスで、かつ、人もマネしやすいやり方を見つけることをめざして実験すること』
『自分の米作りの選択肢の中に、多様な方法論を知見として貯めていくこと』
『この実験と気づきを発信することを通して、より多くの人に食や生命のプロセスの不思議さ、おもしろさに興味を持ってもらうこと』
この3つです。
そのため、今回は良質な種籾選びのプロセスはすっ飛ばすこととしました。
準備したのは、A4用紙を収めておけるクリアケース。
そこに種籾を入れ、種籾がギリギリ浸かる程度に水を入れます。
以降、芽が出てくるまで一日一回の水交換をします。
さて、これからどうなっていくのでしょうか?
米の芽出しすらも初めての挑戦なので、おっかなびっくり、ワクワクしています。