曽祖父の遺した耕作放棄地再生vol.3冬の開拓は一段落。この土地の植生を探る
戦時中に曽祖父、祖父が管理していたものの、戦後は活用されなくなった畑(現・耕作放棄地)を、父の他界をきっかけに50年ぶりに開拓し始めました。
兼業米農家として毎年の米を育てている一方、
慣行農法ではなく無肥料・無農薬での野菜栽培、時が経つほど生態系が豊かになる土地の管理方法などの探求・実践を積み重ねてきた私にとって、
手付かずかつ自由にしても良いフィールドというのは、とても魅力的なものでした。
前回までで、雑草が生い茂り荒れ放題だった状態からようやく足を踏み入れてじっくり植生を観察できる段階になりました。
今回は、実際にこの耕作放棄地に生えている植物や樹木を観察し、その生態を探っていった際の記録です。
開拓した土地の散策
早朝。前回までの開拓を経て開かれたスペースへ踏み込み、フィールドを観察します。
蔓草の絡む樹木の門を通り抜け、奥へ。
奥へ進むと、木立の並ぶ林のようなゾーンとなっています。冬の朝であるため、日の当たらない箇所は霜が降りて白く染まっています。
一体、この蔓草は何だろう?
ひとまず、後回しにして先へと進みます。
刈られた雑草を踏みながら道らしきものができた放棄地を進むと、ずいぶん様子が変わって見えました。
この土地を見つけたばかりの時は、そもそも足を踏み入れることすらできない場所だったのが、現在ではある程度何がどこにあるのかも把握できるようになってきました。
刈り込んだ一番奥まで進むと、楕円形状の広場のような場所に出ました。
果たして、このあとこの刈り込んだ下草が枯れて土壌に還っていたとしたら、どのようなフィールドになっていくのだろう?
期待を膨らませつつ、焦らずに事を進めたいものです。
さて、おおよそ開拓したフィールドがどのようになっているか把握することができました。
今度は、行く道すがら気になっていた、樹木や草木の品種を特定していきます。
土地の植生の調査
この放棄地に何が育っているのか?その植生の調査には、PictureThisというアプリに力になってもらいます。
このアプリで撮影をしながら、植物の品種をまずはざっと調査していきます。
手始めに、こちら。もっともよく目にする、蔓状の植物です。葉が丸みのある瓜状のこの蔓草植物は何者なのでしょうか?
判定結果によると、こちらの植物はアケビでした。
樹齢を重ねると硬質化するものの、蔓はそのまま縄を編むための材料となり、実は甘く、蔓や茎は生薬となるようです。
生薬の効用としては、内臓の熱を取り、利尿作用があるとのこと。
元々、低木樹であるようですが、大きく見えるのは他の樹木に絡み付いて蔓を伸ばした結果であるようです。
さて、次はこのアケビによく似ているものの、やや黄緑がかった色の葉をつけているこの植物を判定します。
判定結果によると、この植物はナワシログミ。いわゆるグミの樹だそうです。
こちらも食用としては、咳や喘息に効く生薬として扱うことができるようです。
アケビにナワシログミ……一般的に見ない、昭和初期頃の日本で植えられていたのだろう植物がどんどん出てくるようです。
ともあれ、目立つ植物は今度のものが最後。
一際高く育っているこの樹の判別に進みます。
判定結果は、アラカシ(荒樫)でした。どんぐりをつける樹木であり、成長すれば数十メートルにもなるポテンシャルを秘めている植物です。
蔓の絡み付きでやや育ちにくくしている様子ですが、それでも幹や枝はしっかりしたものです。
よくよく足元を眺めてみると、アラカシの苗木も見つかりました。
どんぐりがこの土地に落ち、そして芽吹いてきたアラカシの苗木は、霜を被りながらも瑞々しい葉をつけていました。
自然の営みによって育ってきているこの苗木は、いわば「森の次世代」。
アラカシが最も大きく育ち、その影に入るように低木のアケビやグミが生い茂る。さらにその下層に下草が生え、森を形作っていく。
おおよそ、こうした植生によってこの土地が支えられてきたのだと見えてきました。
アラカシは、この地域の神社にも植えられている原初の森に属する植物です。
人の手が入る前のアラカシと、人によって活用されてきたアケビとグミ。
この植生を鑑みつつ、どのように豊かにこの放棄地を豊かな森へ育てて行こうか、とてもワクワクする散策となりました。
春先は、いよいよこの土地を耕し直したり、種を播いていくことになるでしょう。
楽しみです。
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