自然農法×バケツで始める米づくり6。種まきから半年、ついに稲刈り🌾
兼業農家として実家の田んぼで米作りをしている私が、家庭菜園的に庭先のバケツで稲を育てるチャレンジシリーズ🌾
循環畑の実践者で、長年の友人である吉原優子さんに『ハッピーヒル 』というお米の種籾を分けていただいたところから始まり、前回はとうとう出穂したところをお伝えしました。
出穂後、さらに育ち続ける稲穂🌾
出穂が初めて確認できたのは9月上旬。私が実家の水田で育てているコシヒカリであれば、出穂が確認できたら、あと2週間程度で穂が出揃い、色づき、収穫です。
この状態から1週間ほど経過すると…
どんどん穂が育ち、粒がまるでトウモロコシのようにぎっしり詰まった状態になってきました。
また、白く小さな米の花もついているのが確認できます。
こうしてみると、なかなか迫力が出てきました。
そして、初めての出穂から2週間。いよいよ収穫だろうか、と覗いてみると…
今や、ほとんどのバケツの稲から出穂が確認できるものの、一向に色づく気配がありません。
葉もまだまだ青々としており、黄金色に染まっていく様子が見られません。
穂、そのものはかなり立派になってきました。
バケツ稲という育て方の為か、ハッピーヒルという品種の為だからでしょうか。
この時点で既に9月末。いつになったら収穫できるのだろうか、とやや不安になってきました。
そして、10月半ば。とうとう色づき始めました!
やや黄色味がかり、穂の重さに耐えかねて稲が倒れ始めています。
『実るほど 頭を垂れる 稲穂かな』とは、よく言ったものです。
こうして見ると、バケツから生命力が溢れ出しているようなイメージが湧いてきます。
しかし、やはり色づきの速度が遅い。
ハッピーヒルという品種は、他の品種に比べ、多収穫を実現する米である為、ひとつの穂にとても多くの実をつけます。(トウモロコシのよう、と称するほどに)
それだけ栄養が穂全体に行き渡るために、時間がかかるということもあるのだろう。
そんな風に考えつつ、とうとう収穫しないまま11月に差し掛かりました。
実家の水田での米づくりであれば、5月上旬に田植えして9月末には収穫という、3ヶ月程度でサイクルが回ります。
このバケツ稲ハッピーヒルは、5月中旬に種籾から芽出ししてから、ここまでで約5ヶ月。なかなか長い付き合いになってきました。
出穂から1ヶ月半、ついに収穫へ🌾
さあ、いよいよ11月に入りました。ついに、穂の8割方が色づき、一般的な稲作でいうところの刈り時になりました!
よかった!そして、長かった。
まさか、こんなに立派な穂に育ってくれようとは、思っても見ませんでした。
基本、雨水のみで育ててきましたが、圧巻の出来具合です。
……いよいよ、収穫していきます。
バケツひとつごとに丸ごと稲を握り、鎌を、引く。
ザクッと気持ちの良い音を立て、稲が収穫されていきます。
稲を握り、鎌を、引く。
この稲刈りの最中、何か厳かな気持ちになってきました。
「自分は、このいのちをいただくのだ」
「それを、刈り取ろうとしているのだ」
という気持ちが湧き上がり、鎌を引くごとに稲といのちへの感謝の気持ちが湧き上がります。
さあ、無事に刈り終わりました。この庭、こんなに広かったかな?
切り株に寄ってみるとこのような具合です。
見覚えのある稲刈り後の景色が、バケツの中にありました。
最後に、稲を天日干しするために束ねます。
片手で握れる程度の束が、三束。
実家の田んぼの土と雨水、そしてハッピーヒル そのものの生命力で、ここまで育ってくれました。
今回、機械乾燥は行わず自然乾燥するため、2〜3週間程度は物干し竿に干しておき、その後脱穀、籾摺りしていく予定です。
……ついに、収穫まで行き着きました。
収穫までを終えてみて。米を育む土中環境の大事さ
先述したように、バケツ稲には実家の田んぼの土と雨水、そしてハッピーヒルという、本当にそれだけでここまで育ってくれました。
そう考えた時、土の重要性、偉大さがとても感じられたように思います。
初めのうちは本当に小さな一粒だった種籾を、ここまで大きく育て、何十倍にも増やすようなそんな営みを、土が助けたわけですから。
今回収穫できた稲も、土の中にあったであろう養分を取り込むことで成長できたわけです。
実家の田んぼについても、地域の先輩方は土の質についてよく話します。
『うちの田んぼは、山側や。だから粘るし収穫量も少なくなる。量は同じ広さの田んぼの8割ぐらいや。でも、美味しくなるんや』
『ここの田んぼは良いな。あっちを見てみい。雨の後でもう渇ききってサラサラしているやろ。保水せえへんのやな。まあ、水をよく含む土ほど機械の足は取られやすくなるがな』
今回、田んぼ以外でも米は育つのか?という実験的な試みとして、バケツに田んぼの土を詰め、そして種籾を蒔いて育てたわけですが、こんなちっぽけな空間に仕切られた土も、
これだけの力を発揮してくれる。
土の働きは、本当に偉大だなぁと感じます。
最近になって、『土中環境』というものを強く意識し始めました。
土の中の環境は、目に見えないだけで様々な営みが行われています。
草木や樹木が根を張ると、その根の周りには微生物が寄ってきて植物の生育を助け、同時に植物も微生物自身が居場所を確保することを助けます。
川や水路以外にも、土中に水の流れは存在し、まるで網目のように土中を巡り、やがて海へと流れていきます。
ただし、近年ではコンクリートを使用した護岸工事によって固められたことで水流が滞り、微生物、植物の生態系が乱れると、そこは無秩序に草木が生茂る藪が増えていると言います。
自然のままにある森林などは、大きくなりつつある樹木と、既に成長しきって枯れていく樹木が世代交代しながら、その他の動植物とのバランスを保ちつつ循環していくものです。
しかし、人間が近代的な手法で介入した森林や土地は、土壌そのものも脆弱になってしまうのです。
今年7月に熱海で発生した土石流は、集中豪雨によって地盤が緩んだことが主たる原因ですが、人的な盛り土によってその被害も拡大したと見られています。
土中環境を意識し始めると、上記のような人の営みによる生態系の撹乱と、翻って、自然本来の持つ叡智や営み、バケツの中ではなく大地に広く解き放たれた土中環境が、いかに豊かな生態系(微生物たちやミミズ、植物、小動物たち等)を育みうるのか、という環境の可能性も感じました。
今後は、身近な場所で米の生育や土の働きを知るための『バケツ稲』の取り組みと、田んぼを活用した水稲栽培の両輪の活動に加え、いかにバケツやプランターといった小さな土中環境を豊かにしていけるのか?という、
『土が豊かに育まれていくための取り組み』
にも携わっていければと思いました。
こんな尊い学びをもたらしてくれたハッピーヒルに感謝したいです🌱