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昭和の象徴と平成生まれのワタシ

当たり前だと思って今まで生きてきたモノが、過去の遺物だったと知った衝撃たるや。
バランス釜、って言ってわかる人ってどれくらいいるんだろう。

ガスを使った給湯器で、外から空気を取り込んで燃焼に使う。追い焚きもできるし停電でも使える。レバーを回してガスに点火するための火花を散らすんだけど、「ガチンガチン!」ってわりと大きな音がするのが特徴だと思っている。

私はバッキバキの平成生まれなんだけど、あれが昭和の象徴だと聞いて卒倒するかと思った。

え、私はアレしか知らないよ?
あの、ボタンピッて押したら勝手にお湯溜めて沸かして、できたら音声で呼んでくれるアレは、すごい高級品なんだと思っていた。

よくよく思えば私が住んでいたのは団地のような集合住宅で、わりと古い設備がそのままあったのだろう。そういうところはどうやら今でもあるらしいが。

じゃあ、私の同級生、バランス釜って知らないの…?
ふと思って連絡を取ってみた。

誰も知らなかった。
誰も知らなかった。

そりゃそうか、あの頃の話題といえば、「そのロケットペンシルとかねりけしどこで買ったの?」とか「今日の放課後遊べる?」であって、友達が家のお風呂をどう沸かしているかなんて気にしたことないわ。

じゃあみんな、うっかりタイマーかけ忘れて湯船沸騰させたこと、ないの??

ボコボコに煮え立つ風呂釜をバレないように水で埋めたけど音でバレて「水ムダにすんな!」ってバチ怒られたこと、ないの??

怒りに任せて点火レバーを「ガチガチガチガチガチガチン!!」って思っきし回したことも??

ちなみに点火レバーを回す面はめちゃくちゃ大きくて建物中に響く。人によって回し方にクセがあるので、誰なのかすぐにわかった。

「あ、205の〇〇さんのお母さんだな。」とか、「〇〇くんのお父さん今日帰り早いな。」とか。

ちなみに私は「ガチッガチッ……ガチガチガチ!」という、温和そうに見せかけたイラチタイプだった。

私たちは基本家の周りで遊んでいたので、
「お前の母さん風呂入れ始めてたぞ。」
「おー、じゃあもうすぐ帰んなきゃ。」
みたいな、帰りが遅くて怒られないための指標でもあった。
あと、母さんが怒ってたらレバーの音ですぐわかる。やばい音がする時は飛んで帰る。

うちの場合、そもそも風呂を入れるのが私の仕事なのだ。
母さんの音がする=私は今帰ったら怒られる。

なので私は母の音が聞こえてしまったらできる限り帰らず、ほとぼりがさめるのを待つ。
心配されるのと怒られるのとの境目を上手に探る作戦。

子どもは子どもなりに、カンと経験と運を使いこなして毎日サバイヴしていた。

そんな子ども時代のバランス釜との思い出を振り返りつつ、昭和を偲んでみる。

いや、私知らんけど。

#エッセイ #日常 #子ども時代
#昭和と平成 #スキしてみて #とは
#バランス釜

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