漆10:漆器の作り方(木地編)
おはようございます。
今日は朝から雨、一日こんな天気になりそうだ。
GW明け、オフィスで働くにはちょうど良いのかもしれない。
さて、今日からはまた漆に話を戻して、漆器を作る「素地作り」「塗り」「加飾」の3つの工程をそれぞれ学んでいきたい。漆9で何を作るかによって適した素材を見てきたところで、一番ベーシックな、轆轤を使用して内側、外側を円形に削って作る挽物ができるまでの工程を見ていきたい。
前切(まえぎり)
挽物の工程には、最初の段階で「縦木取り」と「横木取り」がある。
「縦木取り」とは立っている木を横に切って(要は輪切りに、成長方向に素材を切り出す)薄い切り株状のものを造る。その断面に器の口径を書いておおよその形に切っていく。縦木取りの利点は歪みが少ないが、欠点は木の芯を省くので大きいものが出来ない点やロスが多くなるために価格が高くなる点だ。
一方、「横木取り」は木を横にしてスライスして板の形に切取り、さらにその板に器の形を書いて切る(木の成長方向の横向きに素材を切り出す)。横木取りの利点は大きいものでも作ることができ、ロスが少ない点。欠点は歪みが出やすいために薄くて高さのあるものは難しい点。
そのため、「縦木取り」は汁椀や吸物椀など、「横木取り」は茶托やお皿、盛器などというように商品によってそれぞれの利点を活かし使い分けている。
こうしておおよその器の形にカットして轆轤で挽く前の段階を、前切という。
この時点で、お椀の形にカットした前切は1つ分の重量が850gある。木地が十分に乾燥していないこともあり、かなり重い。
荒挽(あらびき)
前切をした次は、荒挽という少し美味しそうな工程。
前切された木材を生木のうちに轆轤を使って、仕上がり寸法より10~20ミリほど厚めに削ることを荒挽という。荒挽した後は数ヶ月寝かし、木の含水率を7~8%まで乾燥させていく。かつては乾燥に先立って煮沸したり、燻煙を利用して乾燥させたりしていたが、現在は温風乾燥機や除湿乾燥機を使用し2~3週間かけて人工乾燥させる。人工乾燥の後は天然乾燥(空気中の水分と均質の含水率になるまで外気に晒して戻しをかけること)をさせる。
前切の時点で850gだったお椀の重量は、内側と外側が削られた上に乾燥が施されて荒挽の状態となったお椀は440gに。「前切」から「荒挽」後の乾燥の工程で、約半分の重量になっている。
仕上げ挽き
荒挽をした後に乾燥させ、中荒挽きで器の形状を修正し、再び乾燥させる。その後最終的な器の形にするのが仕上げ挽き。
挽物の仕事は削りすぎてしまうと商品として使えなくなるので、大変難しく失敗は許されない。製図に従って板や厚紙で側面図の型を作りそれに合わせながら1個1個轆轤にかけて挽いていく。何個も何個も形や大きさ、厚さが同じものを手仕事で作りあげるのは、まさに職人技。
仕上げ挽きし、木地として完成したお椀の重量は100gに。こうして、持っていて一切負担を感じない漆器のお椀としての軽さを実現させている。
白木地
前切、荒挽、仕上げ挽きという挽物の工程を経て、ようやくできあがった木地の状態を白木地という。
この白木地は、純白というより乳白色をしているが、木は切られてからも生きているといわれる。薄く加工された白木地は空気中の水分を含み歪みやすいので、白木地の状態で長く置かず、すぐに漆を塗って空気中の水分吸収をシャットアウト。漆は素地の段階でも木の耐久性を高める役割を果たす。
ちなみに、白木地に何度も漆を塗り重ねて商品として完成したお椀の重さは120g程になる。
*上記の情報は以下のリンクからまとめています。
1つのお椀を作るのにも、元々1kg弱ある木の塊を削り出し乾燥させてを繰り返して他のお椀と重ねてもぴったりカーブが合う様に100gにまで削ぎ落とす。90%も材料が不要になってしまうことと性質が違う木々を同じ形にの削り出す技術を考えれば、素地作りの時点で材料も手間も大変にかかっている。ただ、これはずっと長く使える様にと職人がかけてくれている手間であることを考えれば、かけてくれた手間に対する費用はコストではなく、お礼だと言えるだろう。
さて明日は、「塗り」を見ていこう。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。
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