工房スナップ … 初夏の一日
今回は、日頃どんなことをしているのか、工房での様子です。
自宅から離れているので、朝 鍵を開けることから始まります。入口のそばに絵馬が掛かっており、二人でロクロ作業をしている絵馬は君ヶ畑(旧永源寺町、東近江市)で求めましました。武者絵の方は、地元三嶋大社の頼朝旗揚げを描いた絵馬です。
午 前
中に入ると、まずは留守番電話をチェックします。伝言の内容によっては、予定の作業を変更する場合もあります。その後工房をざっと見て回ります。
歩いていると、祖父の残したお椀の木地が目に入ってきます。見本用に取っておいた木地でしょうが、祖父は明治から大正昭和までずっと仕事してきたので、このお椀がいつの時代なのか全く分かりません。
形がそれぞれに違う四種類のお椀。こじんまりした印象ですが、面白味のあるきれいな形です。今時のお椀は、比べてみるとかなり大きくやや画一的な形です。なぜ近年お椀が大きくなったのか?一説によれば、昭和に大ぶりな合鹿椀が流行ったからその影響だろう、とか。
昼 休 み
朝が遅めなのですぐお昼ですが、時間厳守でお弁当を食べます。なぜか譲れない習慣です。一息つこうと外に出ると、久しぶりのお天気。
十二時から一時はきっちり昼休み。食後は郵便物を確認したり、仕事の資料を読んだり、あるいは図書館から借りてきたミステリーを開き、こいつが怪しいのではとドキドキしながら頁をめくっています。
時々は仕事の方針が定まらない材料があって、しばらくは身近に置き眺めては思案します。昼休みには、そういう材料を頭の中で、あれこれ ふむふむ といじり回すこともあります。下は製作途中のお椀ですが、これまでの仕上がりにもう一工夫したい。どうしたらいいものか、それなりの答えを見つけるまでの時間はまだるっこしくても省略できません。
午 後
午後は荷物が届くことが多いです。仕事の材料だったり、個展終了後の返却物であったり、たまにはギャラリー経由で修理のものが届きます。
修理については、まれなケースですが、頭が痛くなることもあります。前提として、他の人の漆器を直すことはありません。どのような工程で、どのような塗り方をしているのか、私には分からないからです。(私の作で20年も使ったお椀の塗り直しをしている時には、使い手の愛着を感じます。)
困るのは、私の作でも破損が大きくしかも掛けた部分を無くしている場合、これは復元ができません。また、テレビで放送するような新品に見える修理は、すごい技術だと感心するものの、相当に高価なのだろうとも思います。
数日後は、個展で出かけます。仕事が中途半端にならぬよう、頭を巡らせ作業手順を考えます。個展ではどれだけのお客様に見てもらえるのか、またどんなお話が伺えるのでしょうか…
仕事には切りがないので、とりあえず今日はここらへんで。
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