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『令和源氏物語 宇治の恋華』解説/第16章<幽谷>

みなさん、こんにちは。
次回『令和源氏物語 宇治の恋華』第二百二十一話は9月4日(水)に掲載させていただきます。
本日は第16章解説/<幽谷>を掲載させていただきます。


「幽谷」というタイトルは・・・

宇治十帖のなかでもっとも謎といわれている部分こそ、浮舟を自死にまで追い詰めた物の怪の存在です。
この物の怪はかつて浮舟の姉である大君に懸想し、死に追いやったという驚くべき事実が明らかにされます。
この部分の解釈はあらゆる研究者の間でも侃々諤々・・・。
その物の怪とは光源氏ではなかろうか、という説もあるほどです。
私は以前から主張している通り、宇治のお話は写本をした女房が書き加えたのではないか、と考えておりますので、そこにはミステリーも何も存在せず、単にこんな話があったほうが刺激的!というレベルの話なのではないかと思います。
この観点からいきますと、物語のエッセンスなので、そう深く考えずに、浮舟を救ったのは父である亡き桐壺八の宮ということにしました。
生前娘の存在を認めなかったことを悔やんで救いに現れたという設定です。
そして浮舟はやはり彼岸を彷徨っていたと思われることから、「幽谷」というタイトルに決めました。

 尊い僧都と妹の尼君

浮舟を救ったのは横川に住む尊い僧都の一行でした。
観音信仰の霊場である長谷寺に願いが叶ったことへの御礼詣りとして願解きの旅の帰途にあるところでしたが、高齢の母尼の加減がよろしくなく、しばしの休息をえるために寄ったところで浮舟を見つけました。
物の怪が離れたことで息を吹き返した女性を放っておくわけにはいかず、僧都の妹尼は献身的に看病をします。
尼君はちょうどこの年頃の娘を亡くしたばかりでしたので、ことさら熱心に世話をしましたが、この人はちょっと思い込みの激しいところがあるもので、見つけた姫が観音様が授けてくれた自分の娘であると譲らないのです。
後々、娘の婿であった中将と浮舟を結婚させようとまでしようとする、浮舟にはありがた迷惑な存在ということになりましょうか。
尼君とその周りの方々は、出家とは形ばかりのような俗っぽい人達です。
それゆえに浮舟を中将と結婚させて以前のように暮らしたいという自分本位な考えを持っております。
これほどの器量よしならば男性と結婚するのは当たり前、という一方的な考えを押し付けるので浮舟には辛い状況が待ち受けているのでした。




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