ミラクル☆レシピ 【シロクマ文芸部】
珈琲とオレンジジュース。
好き嫌いの激しい凄腕シェフが新しいドリンクを考案しようと頭を悩ませていた。
自分の味覚に正直に、数々のヒット商品を生み出したカリスマと世界中が一目置いている彼はプライドと探究心は旺盛に持ち合わせていた。
新感覚のドリンク開発、という依頼を彼は自信満々に引き受けたのだ。
まず自分が好きな二つを合わせてみようと試みた。
それが珈琲とオレンジジュースだった。
彼は朝食を食べない。
朝一番の珈琲を飲みながらネットニュースを見る。
そして頭が覚めてくるとオレンジジュースを飲むのだ。
好きなテイストの珈琲、酸味苦味のバランスのよいコロンビアとバレンシア産の濃厚さわやかな100%オレンジジュース。
1:1の割合で混ぜてみる。
「ヴぇ〜」
こんな声が出るものか、と自分で驚くほどにマズイ!
口をゆすいでも、雑巾水を飲んだような後味の悪さ。
(※実際に雑巾水を飲んだことは、断じて無い!)
割合を6:4、7:3に変えても雑巾の気配は消えない。
オレンジが強いのか???
果汁20%の子供が好むような合成チック全開のジュースを混ぜてみた。
「あー、なんか陳腐で体に悪いカンジ」
一気に具合が悪くなった。
珈琲を苦味の強いマンデリンに変えてみた。
するとバレンシアオレンジの風味は劣化した。
「これもダメ・・・」
そんなこんなで新しいエッセンスを加えようと考えたのは、あらゆる配合を試してから一月後のことだった。
とはいえ、世の中には数限りない味と風味がある。
自分の名を冠するドリンクとして発売されるのだから手は抜けない。
来る日も来る日も、日がな一日珈琲と向き合い、とうとうドリンクは完成。最近流行りの進化系味変『カメレオン珈琲』と名付けられ、大ヒットした。
コロンビアベースのブレンドが基本形、2種のシロップと刻んだオレンジピールをつけて完成形になる。
ブレンドだけでも相当美味い。
エスプレッソシロップを混ぜるとコクと苦味のある深み珈琲に変化する。
そこに山椒を隠し味に使用したショコラシロップを混ぜるとビターなホットチョコレートになる。
さらにオレンジピールを加えると大人向けデザートのような感覚になる。
コロンビアブレンドにショコラシロップを混ぜるとマイルドスパイスなホットミルクチョコレートになり、それもいい。
「その日の気分で楽しめる♪」というキャッチコピーも商品にマッチした。
シェフはやり遂げたことに満足し、自分の仕事が誇らしかった。
しかしただひとつ困った事があった。
あれだけ好きだった珈琲がまったく飲みたくなくなってしまったのだ。
きっと生涯摂取量をオーバーしてしまったのだろう。
今はすっかり紅茶とアップルジュースになってしまった。
そんな矢先、「紅茶で第二弾を」という依頼があった。
もちろん断ったとも!
「これ以上食べれらない物が増えたらどうしてくれるんだ!ガッデム!!」
みなさん、こんばんは。
シロクマ文芸部、今週のお題は「珈琲と」から始まる創作です。
私は珈琲党なので、このような創作になりました。
珈琲が飲めなくなったら嫌ですねぇ😱
ちなみにこんなレシピは存在しません。
さぁ、さあ。
みなさま。
参加されてみてはいかがですか?
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