林由佳里

滋賀県でライターをしています。日記と映画鑑賞の記録など。 記事やコラムの作成、お仕事のご依頼は → nekkar1110@gmail.com までお願いします。

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最近の記事

【映画】「家族を想うとき」人生をどう積み上げるか

人生は選択の連続だ。経験、年齢、立場によって、選ぶものは変わる。どんどん不幸になっていく家族を見て、何が悪かったのか、どの選択が間違っていたのかを考えたけど、答えは出なかった。 夫、妻、息子、娘。誰の立場で考えても悪意で選んだことなんてひとつもないし、そんなこと言ったら宅配ドライバーの仕事を選んだこと、それを選ぶような人生を積み上げたこと、そんな環境に生まれたこと、今の時代を生きていること、自分でどうにかできることからできないことまで全てが少しずつ間違ってる。どこに戻ってや

    • 【映画】「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ここにきて見せつけるブラピの最高峰

      ブラピがかっこいい。 何を今さらって感じですが、このブラピはちょっとどうかしてる。年齢的に出る深みとか渋みとかそういうことじゃなく、現役バリバリ、プリプリのセクシー。そこらの爽やかとか、イケメンとか全部ぶっちぎるかっこよさ。まさかの55歳にして史上最高。 舞台は1960年代のハリウッド、やや落ち目の俳優ディカプリオと、彼専属のスタントマンを務めるブラピ。当時のハリウッドでは俳優が自分専属のスタントマンを雇うのが普通だったみたいです。でもなんせ落ち目。スタントの仕事がない時は

      • 【映画】「愛がなんだ」みっともなくて痛くて見てられない。でも、そういうとこにいたい。

        仕事中でも真夜中でも、マモちゃんに呼ばれたらどこにいたって飛んで行く。ごはんも作るし掃除もするし、部屋に泊まることもある。でも彼は私のことを「山田さん」と呼ぶ。彼は私の恋人じゃない。 どこもどのシーンも精一杯とか愛されたいとかちょっとでいいからこっち向いてが空回ってて痛々しくてむしろ裏目に出てて「そういうとこや…」ってのがすごい分かって、見てられない。でも、そういうとこにいたいとも思う。恋の悩みを愚痴りながら友達とあーだこーだ言い合って、帰り道に1人でビール飲んで、好きな人

        • 「82年生まれ、キム・ジヨン」普通に生きてきたら、気づけば地獄にいた。

          切れ味鋭い社会派映画が大ヒットする韓国で、100万部を超えるベストセラーになったと聞いて。82年生まれの自分が、思いがけず物語から指をさされた気分になって。 主人公の名前「キム・ジヨン」は、1982年に生まれた韓国人女性で一番多い名前だそう。そんなごく平均的な1人の女性キム・ジヨンが、ソウルにある裕福でも貧乏でもない家に生まれ、両親と祖母と姉と弟の6人家族で暮らし、学校に行って、受験して、大学に入ってそこそこの企業に就職して結婚して子どもを産んで、ごく普通に生きてきた結果、

        • 【映画】「家族を想うとき」人生をどう積み上げるか

        • 【映画】「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ここにきて見せつけるブラピの最高峰

        • 【映画】「愛がなんだ」みっともなくて痛くて見てられない。でも、そういうとこにいたい。

        • 「82年生まれ、キム・ジヨン」普通に生きてきたら、気づけば地獄にいた。

          【日記】「写真家がハンドメイドで写真集を作り、一度燃やしてから出版しなおし、売り歩いた話」を聞いてきた

          2年前、フェイスブックか何かでこんな記事が流れてきた。 仲のいい祖母と孫で、お互いがお互いの一部のようで、時には恋人どうしみたいに見えるこの2人が迎えた結末。あまりのことにひどく心を揺さぶられて、しばらく忘れられなかった。 優しい彼は何かに行き止まりを感じていたのかも、大事な人を失う未来に耐えられないと思ったのかも、身近な人が知らない別の顔があったのかも。この写真しか知らない私ですら、その理由を探してしまう。でも永遠に、答えはない。 記事をブックマークして、誰に言うでも

          【日記】「写真家がハンドメイドで写真集を作り、一度燃やしてから出版しなおし、売り歩いた話」を聞いてきた

          【映画】「バーニング 劇場版」どこまでも深読みできる、1枚の絵のような映画

          村上春樹の短編「納屋を焼く」を韓国の監督が映画化、しかも世界中で絶賛の嵐!と聞いて、マイ“韓国映画の聖地”シネマート心斎橋へ。 小説家を目指しながらアルバイトと実家の牛の世話をして暮らす青年ジョンスは、すっかり美しくなった幼馴染のヘミと偶然再会する。彼女はアフリカ旅行に行く間、自宅にいる猫の世話を頼みたいという。ヘミの部屋に通ううち、彼女への想いを募らせるジョンス。ところが帰国したヘミは、アフリカで知り合ったという謎めいた金持ちの青年ベンを連れていた。ある日、ベンはジョンス

          【映画】「バーニング 劇場版」どこまでも深読みできる、1枚の絵のような映画

          【映画】「A GHOST STORY」死後の世界についての、ひとつの美しい答え

          死後の世界があったいいなと思っている。死んだら全部終わりなんて耐えられない。輪廻転生もしたくない。この経験と記憶を持ったままものを見たいし、なにかを考え続けたい。忘れたくない。ずっと私でいたい。じゃあ天国があればいいのか、幽霊になりたいのか。あまり望みすぎると叶わない気がするので、その辺りはぼんやりしたままだ。 日々そんなことを考えている私にとって、この映画はひとつの信じてもいいと思える答えを見せてくれた。突然の事故で死んでしまった男が幽霊になって、妻が待つ自宅に戻ってくる

          【映画】「A GHOST STORY」死後の世界についての、ひとつの美しい答え

          【映画】「来る」控えめに言って最の高!軽薄に、盛大に褒め称えたい!

          「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「告白」で悪ふざけギリギリの傑作をぶっ放してきた中島哲也監督の最新作。ホラー映画は正直大の苦手ですが、最近良作続きで「ホラーこそ映画館で観るべし!」と思い直したので思い切って行ってきました。 結果、最高!最高すぎてめでたい!こんな妻夫木くんが、こんな小松菜奈が、こんな岡田くんが見たかった!松たか子には王座を、まさかの柴田理恵様には何かとてもいいものをあげてほしい。 特に妻夫木くんのクズ男ぶりには目を見張るものがある。親戚同士が嫌味を言い合う

          【映画】「来る」控えめに言って最の高!軽薄に、盛大に褒め称えたい!

          【映画】「日日是好日」毎日はそれぞれにいい日、それ以上の意味がわかる。

          わたしは趣味で書道をやっていて、字を書いている時は集中しているはずなのに周りの音や光がいつもより濃く感じられるから、その中で何が美しいのか考えていると、悩みごとに普段とは違う答えがぽんと出たりするんだよ。そんなことを数年ぶりに会う友人にとりとめもなく話していたら、「きっと、あなたにはすごくいいと思う」とすすめてくれたのがこの映画でした。 最初は茶道のしきたりにとらわれて頭がいっぱいになっていた主人公が、ある日「お湯はとろとろ、水はきらきら」それぞれに違う音をたてて流れている

          【映画】「日日是好日」毎日はそれぞれにいい日、それ以上の意味がわかる。

          【映画】「ボヘミアン・ラプソディ」凄かった、でも収まり切ってない感じ。

          Queenといえば大学生の頃に見ていたキムタクの「プライド」というドラマを思い出す。主題歌の「I WAS BORN TO LOVE YOU」に乗せて繰り広げられるアイスホッケーシーンと純愛。そののマッチングにやられてよく分からないままにCDを買ってしばらく聞いていました。 映画館で見た予告編が感動的で、そういえば、と引っぱり出してきたQueenのCDを何となしに聞いていたら、当時ただのミーハーだった自分が気づかなかった音楽としての魅力がダイレクトに伝わってきていても立っても

          【映画】「ボヘミアン・ラプソディ」凄かった、でも収まり切ってない感じ。

          【映画】「カメラを止めるな!」満席の映画館で、笑いがわき上がる。止まらない。

          日本人も、映画館でこんなに笑うんや。 そう思っている自分も、いつの間にか笑いの渦にしっかり巻き込まれていた。 おもしろい、こんなのおもしろいに決まってる! ネットで見ていた上映スケジュールが来る日も来る日も完売で、 でもレビューにはどれも「傑作!」「とにかく見て!」としか書いてなくて、 低予算で俳優はみんな無名、監督ももちろん知らないけれど どうやら、わが地元滋賀県の出身で、 高校生の頃イカダで琵琶湖を渡ろうとしたらしい。 失敗してうちの近所に漂着したらしい。 いろんな

          【映画】「カメラを止めるな!」満席の映画館で、笑いがわき上がる。止まらない。

          【映画】「レディ・バード」ものすごく感動してるつもりはないのに、泣きたくなるのはなぜだろう。

          想像していた「アメリカの女の子」らしく、 奔放でマイワールドを持っていて、ハッキリものを言う。 そもそも自分を「レディ・バード」と名乗って、周りにもそう呼ぶことを強要している。 映画の主人公として、土台は十分。 そんな彼女が過ごす、高校最後の1年間のお話。 舞台はアメリカの西海岸、ど田舎ではないけど都会でもない、小さな街。 特別に美人でもない、裕福でも成績優秀でもない。 やることが感情的でぶっ飛んでるように見えるけど、 クラスのイケてる女子に「誰だっけ?」って言われるぐらい

          【映画】「レディ・バード」ものすごく感動してるつもりはないのに、泣きたくなるのはなぜだろう。

          【映画】「君の名前で僕を呼んで」映画館を出た瞬間、世界が違って見える。こういう体験があるから映画を観るのはやめられない。

          観た後で気分がスカッとする映画、考えさせられる映画、 悲しい気分になる映画、いろんな映画がある。 その中で、ごく稀に「映画館を出た瞬間、世界が違って見える映画」がある。 目の前のフィルターが1枚取れたような、 世界がこれまでと違った輝き方を見せるような。 これからの人生、この気持ちをずっと真ん中に持っていたいと思わせる、 そんな映画がある。 「君の名前で僕を呼んで」は、何年かぶりに観るそんな映画だった。 1983年、北イタリアの避暑地。 森があって湖があって、庭には果実が

          【映画】「君の名前で僕を呼んで」映画館を出た瞬間、世界が違って見える。こういう体験があるから映画を観るのはやめられない。

          【映画】「万引き家族」一生分の忘れられない思い出ができる2時間。

          「血を超える絆がある」なんてもはや、 この映画を観てわざわざ言うことじゃない。 ここには人にとってものすごく普遍的な、中毒性のある是枝ワールドが 容赦なく展開されている。 冬の帰り道「寒いね」と言い合って食べるコロッケ、 誰かの肩にもたれながら夕立を眺める夏の午後、 泣きたい日のおばあちゃんの膝枕、 大好きな人たちとワイワイ言いながら見上げる花火。 ただ、私たちは知っている。 真っ当じゃない幸せは続かない。 この家族の幸せもまた「万人を守るため」にできた正論によって、 ち

          【映画】「万引き家族」一生分の忘れられない思い出ができる2時間。

          【映画】「タクシー運転手」韓国のおっさん(父バージョン)という映画ジャンルがあってもいいと思う。

          久々に大阪に行ったので、滋賀で観れんやつ!とはりきって観てきました。 数々のぶっ飛んだ映画を作っている韓国で、記録的大ヒット!と聞いて上映終了ギリギリ。 映画館で観れてよかった〜! 時は1980年5月、のちに韓国近代史上最大の悲劇といわれる“光州事件”のさなか、 ソウルでタクシー運転手をしている主人公が 「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者を乗せて、 検問をかいくぐりながら光州に行って帰ってくるまでのお話。 実話だそうです。 映画は「ンッチャ

          【映画】「タクシー運転手」韓国のおっさん(父バージョン)という映画ジャンルがあってもいいと思う。

          【映画】「孤狼の血」なんでヤクザ映画が面白いのか、ようやく分かった。

          「アウトレイジ」シリーズが好きです。 特に1作目の椎名桔平が最高で…とか言ってると違う話になりそうなので、これについてはまた別の機会に。 ツイッターで信頼できるおじさん達が「最高」「強くオススメ」と言い合ってるのを見て、近所でやってるのを知ってダッシュで観に行きました。 いやー、おもしろかった! 無茶苦茶ですよ。暑苦しいし汚いし、下品で痛くてだらしない。 でも、ドラマチックで清々しくて、時々「そうこなくっちゃ!」とか思い始めて、気付いたら振り回され役の松坂桃李くんと一緒にス

          【映画】「孤狼の血」なんでヤクザ映画が面白いのか、ようやく分かった。