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36歳の私、ハローキティに沼る。

思えば小さい頃から、赤やピンクはあまり好きじゃなかった。
どちらかといえば水色やオレンジが好きだったし、いわゆる「女の子らしい」とされるフリルやリボン、ハートもちょっと苦手だった。それに、自分には似合わないと思ってもいた。

それは「女の子らしい」というジェンダーの固定観念への、子供ながらの私の反発だったのかもしれない。とにかく私は、かわいいものなんて全然好きじゃないと思っていた。
そう、「かわいい」は自分の人生に無縁だと思っていた。

そんな私は、36歳の誕生日にサンリオピューロランドに行ったことをきっかけにサンリオ、特にハローキティにハマっている。いやもう、沼っている。もうサンリオにハマっていない頃の自分の思考が思い出せないくらいである。

サンリオピューロランド

※2023年11月にHELLO KITTY CHANNELの動画が非公開になるという事件があり、本記事で挿入した動画も非公開となっています。

私の人生を変えた「ハローキティのポンポンパック」

もちろん、その前からハローキティの存在は知っていた。キティちゃんのイメージカラーは赤やピンク。それほど意識したこともなかったけれど、キティちゃんは「かわいい」の権化のようなキャラクター。なぜ好きになったのだろうか。

きっかけは、ドン・キホーテでかの有名なポップコーンマシン「ハローキティのポンポンパック」を見つけたこと。マシンの前を通るとセンサーが反応し、キティちゃんがゆらゆらしながら「ハローキティ♪こんにちは〜♪」という歌が流れるのが面白くて検索してみたら、キティちゃんのYouTubeチャンネル「HELLO KITTY CHANNEL」がヒットした。

そこで「1時間耐久ポップコーンマシン」という、キティちゃんがポップコーンマシンの歌に1時間合いの手を入れ続けるというクレイジーな動画を見つけて、まんまとハマったのである。

当時はサンリオがそんなにユニークな会社だとは知らなかったので、まさか公式がこんなことするなんて…!と思った。
そもそもこのポップコーンマシンの歌、

ハローキティ こんにちは
キティはみんなの人気者
わんぱく いじわる おこりんぼうも
やさしいキティと一緒なら
つられて優しくなっちゃうの

「ハローキティ」歌詞より

「キティはみんなの人気者」「やさしいキティと一緒なら(ちなみに二番は、かわいいキティと一緒なら)」と言っているあたり、自己肯定感がずば抜けて高くもはや尊敬に値する。

でも、ちょっと考えてみた。思春期に入ると背伸びしたくなって、かわいいものを「かわいい」というのがなんだか恥ずかしかった気がする。それは成長なのかもしれないけれど、実は子どもっぽい、ダサいと思われたくないという「誰にどう見られるか」を気にした行動だったのではないだろうか。

それを考えると(YouTubeではいつもTシャツにオーバーオールだけど)赤やピンク、ハートやリボンやフリルのたくさんついた衣装を着て「かわいいものが大好き!」と迷いなく言えるキティちゃんは本当にすごい。他人のものさしで自分の価値を測り続けると、本当にやりたいこと、好きなことが分からなくなる。そういう大人は実は多いと思う。

「やりたいことは全部やる、それがキティらしさ」というキティちゃん。HELLO KITTY CHANNELに関してはまだまだ言いたりないことがあるので、また別途記事をあげたい。

36歳の誕生日、ひとりでサンリオピューロランドへ

私はここ数年、誕生日には仕事をしないで「初めてのこと」を体験しようと心がけている。ちなみに35歳の誕生日には北鎌倉で座禅を体験した。
そして36歳、ついにサンリオピューロランドに行ってみることにした。平日ということもあり、まわりに特にサンリオ好きな友達もいなかったのでソロ活動である。

京王多摩センターの駅がかわいくてびっくり

思えばピューロランドは「テーマパーク」という先入観があったので、そんなに期待していなかったのだと思う。広報PR業界で有名な本田哲也氏の書籍「パーセプション 市場をつくる新発想」でも書かれていたけれど、サンリオピューロランドはまさに「劇場」。

それまでの私は、映画やミュージカルを観に行くのは好きだけど、それはあくまで非日常。歌ったり踊ったり、一緒に笑ったり、そんなキラキラした世界とは無縁だと思っていた。

でも、一気に引きずりこまれてしまった。
ろくに下調べもせずに昼から行ったので、トイレに行っていたら目の前でハロウィンのショーが満席になるというアクシデントもあったが(思えばこれが次に行くモチベーションにつながった)、パンフレットをもらって「とりあえず、キティちゃんが出ているショーを優先して見よう」と次に何を見るか考えた。

2022年ハロウィンバージョンのエントランス

ハマった要因は主に3つ。

①爆音EDMとレーザーショーが驚きの「Nakayoku Connect」(現在は終演)

残念ながら現在は終演してしまったけれど、ピューロランドに通う一番のきっかけになったのがNakayoku Connect(ナカヨクコネクト)というショー。
「リアルとバーチャルの世界が融合」ということで、どんなショーなのだろうか…と思いながら待っていたら、キティちゃんがほぼ真上から降りてきてしまったのもよい思い出(天井から登場する)。

プレスリリースを貼ってみたけど、特設ページも閉じてしまったんだなと思うと少し寂しい。DVDは今のところ発売されていないので、ぜひダイジェスト動画だけでも見てほしいです。

コロナ禍、ソーシャルディスタンスを保たないといけない中で生まれた本当に美しいショーだと思う。ピューロランドでEDMが流れるなんて思わなかったし、会場全体を使ったイルミネーション演出の美しいこと!こんなに本格的なレーザーショーが見られることにも感動した。
そして何より、キティちゃんのセリフにほろりときた。

コネクト、それはつながること
コネクト、それは絆をつくること
今という時間をそれぞれの場所で感じ合い、一人ひとりがひとつになるの
私たちは離れていても思いやり、支え合うことができるの
もっともっと、仲良くのシグナルを送り合いましょう

Nakayoku Connectより

3年間でコロナ禍にも少し慣れてしまった感があったけれど、私たちはずっと寂しい想いをして、我慢をしてきたんだなと気づいた。我慢をし続けていると、人はいつしかその苦しみに気づかなくなることもある。でも胸がぎゅっとするようなそのつらさ、寂しさをやさしく解きほぐしてくれるような、そんなショーだった。終わってしまった今でも一番好きなショーである。

②松竹とコラボ。鬼を成敗しない桃太郎キティの「KAWAII KABUKI」

2つ目にハマった要因としては、松竹とコラボした「KAWAII KABUKI(カワイイカブキ)」。上演時間は40分とピューロランドの中では長め。その名の通り、サンリオキャラクターの「KAWAII」と「歌舞伎」がコラボレーションしたミュージカルショーである。

これを見て思ったのが、サンリオはただのメルヘンの世界ではなく、現実とつながっているということ。「世の中は勧善懲悪では割り切れない」というのがサンリオのメッセージなのではないだろうか。本格的なアクロバットを目の前で見られたことにも驚いた。

そしてもう一つ、書いておかないといけないのが「シナモロール」ことシナモンとの出会い。私はここに来るまでキティちゃん単推しだったのだが、シナモンのライブキャラクターのかわいらしさにすっかり魅了されてしまった。
ちなみに冒頭では、「思いやり」というモフモフの槍を持った雉の助(きじのすけ)というキャラクターを演じている。KAWAII KABUKIは撮影禁止なので、詳しくは実際に見に行ってみてほしい。これを見るだけでも、3,000円くらいの価値はあると思う。

③かわいいリアクションがたまらない「キャラクターグリーティング」

ピューロランドに行くまでは「ライブキャラクター」のかわいさがいまいち想像できずにいたのだけれど、いざ目の前にするとものすごくかわいい。
キティちゃんのちょっと内股な脚の角度はいつも完璧だし、どのアングルから撮影してもかわいい。本当どうなっちゃっているのだろうか、と思うくらいだ。

キティちゃんがいる「レディキティハウス」では、課金をしてピューロランドのカメラで一緒に写真を撮ってもらった。そしてびっくりしたのは、「キャラグリレジデンス」でシナモンに会いにいったときのこと。

前に並んでいた方も一人で来ていたので私はその様子を見守っていたのだが、そのお方が「シナモンはおいしそうだね」と言ったら、なんとシナモンは部屋の隅に行ってガタガタ震え出したのだ!
私は驚いた。写真撮るだけじゃなくて、キャラクターとコミュニケーションできるの…?と。

シナモンと初めましての図

それ以来、グリーティングに行く前は何をお話しようか、楽しみに考えながら向かっている。ちなみにお手紙を書いていったらすごく喜んでくれて、住所を書いておけばなんとお返事もくる。これにはサンリオのスモールギフト・ビッグスマイルの精神が宿っていると思う。この感動は体験しないとうまく説明できないので、一度ピューロランドに行ってキャラクターと触れ合ってみてほしい。最近は整理券が早くになくなりがちなので午前中がおすすめです。

サンリオの「かわいい」は、生きる強さとやさしさ

サンリオの好きなところは、企業理念の「みんななかよく」を大事にしているところ。ショーの中でも「かわいい」「なかよく」「思いやり」の心を大切にしよう、と同じことをずっと言っている。
「みんななかよく」、誰もがそうなるといいなと思ってはいるけれど、実現するのはとても難しい。不可能だと思えるくらいだ。それをきちんと言葉にして、企業として掲げられるサンリオは本当にすごいなと思う。

サンリオの創業者である辻信太郎さんは戦争経験者である。当時は「人と人とが仲良くなる」ことをビジネスにできるわけがない、と言われたそうだけれど、まさに有言実行だ。

平和への願いから、毎年8月のいちご新聞(サンリオが発行している月刊誌)には戦争の体験と反戦への想いが語られている。亡くなった人を見ながら、妹さんをおぶってドブ川を逃げたという辻さんの体験を思い浮かべると胸が痛い。戦争経験者の語る言葉は重い。そんな体験をした人が「平和で美しい、いちご王国」と言っていることに涙が出そうだ。生きていてくれて、サンリオを創業してくれて、キティちゃんに出会わせてくれてありがとう、と心から思う。

どちらかというと内気で陰キャな私には、思い切り「陽キャ」のキティちゃんはすごく眩しい。でもその眩しさに苦しくならない。

2023年6月に3年ぶりに再開したパレード「Miracle Gift Parade」では、「誰だって、暗い気持ちになることがある!光を見たくないときだって…」と言っていてびっくりしてしまった。キティちゃんたちがいるキラキラした世界にはおよそ存在しないような、どうしようもないネガティブな気持ちを認めてくれた気がしたから。

「ミラクルギフトパレード」のキティちゃん

サンリオの「かわいい」は、生きる強さなのだと思う。そして、強いだけじゃなくて、やさしさを兼ね備えている。
「かわいい」「なかよく」「思いやり」は、大人こそ思い出してほしいメッセージ。当たり前すぎてつい通り過ぎてしまう、そんな大切なことをいつも繰り返し伝えてくれるサンリオが、私は大好きだ。


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