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【介護】担当者会議が初めてスムースに進んだ理由

文章力養成コーチの松嶋です。遠距離介護もしています。介護における担当者会議とは、ショートステイを追加したり、デイサービスの事業所を変更したりなど、介護のサービスを変更した場合や、介護度が変わった場合や、介護保険利用から1年経ったタイミングなどで行われる会議。関わる事業所全部の担当者が来て、本人の前で介護サービスについて話し合う。人にもよるけれど、大勢の人が本人の前に大集結するので、結構ハードなイベントだ。特に認知症のある人の場合は、その異様な状況故に、不穏になることが多い。

私の父もそんな感じで、担当者会議が、毎回毎回悩みの種だった。「何のためにその人たちが来るのか」「なぜ自分の人生を他人が決めるのか」という至極当然の問いかけに、私たちはうまく答えることができなかったし、実際そんなに大勢の人が我が家に集まると、多少パニックになって、声を荒らげることもあった。できるのだったら担当者会議は開きたくないと思っていて、担当者会議を開かなくてもいいようにサービスを変更しない方法も考えるなど、本末転倒なこともしていた。

今回は、介護保険を使って1年が経過したというタイミングでの担当者会議。本人が認知症の場合は、家族が立ち会うが、母にはとてもヘビーな仕事なので、今回は私が実家にいるタイミングで開催してもらうことになった。担当者会議のたびに興奮して、その後は不穏になる父に、家族が本当に大変な思いをしていたので、今回は、事前にケアマネージャーにお願いをした。お願いしたことは3つ

1 長い資料の読み上げをやめる

契約のために必要なのだろうけど、会議では各事業所が資料に基づいてそこに書いてあることを読み上げる。でもそれだと、正直、私でさえ今どこを読んでるのかわからなくなってしまうこともあった。認知症の父には自分には理解できない契約のように感じることだろう。
そこで、読み上げる必要があるのか聞いたところ、特にその必要はないということだった。内容が理解できて、承諾できれば、サインをもらえるだけで良いということがわかったので、資料の読み上げはナシにしてもらった。

2 専門用語を使わない

例えば、汚染。汚染とは介護業界の言葉では、排泄物により、寝具などが汚れることだ。でもどうだろう。「汚染」と聞いて、本人はどんな気持ちになるだろうか。確かに「おもらし」という言葉は、認知症の場合は自分に漏らした自覚がないので、はっきり言語化されると傷ついてしまうかもしれない。でも「汚染」という言葉の印象は、もっとひどいのではないだろうか。
私は国語教師でもあるので「その場合はなるべく熟語を使わないで、訓読みにしてください」とお願いした。「汚染」だったら「汚してしまう」だ。「寝具の汚染」とは言わず、「お布団が汚れてしまった」と言い替える。このように言い換えれば、自分が汚したとは思っていない父には、通常の汚れのことだと思うだろう。他にも専門用語はたくさんあるけれど、全部、訓読みに直してみてくださいとお願いした。

3 サインは最初から代筆でと決定する

大勢の人の前で本人がサインをするのはとても緊張を強いられる。本来は、本人のサインが必須だけれども、もちろん家族の代筆でもいいことになっている。だとしたら、最初から家族がするということに決定した。そして、その経緯は本人には言わないということにしてもらった。

認知症の場合は、事前に会議があることを予告してしまうと、時間の見当識障害があるため、時間感覚がないため「その会議はいつあるのか」ということを結構な頻度で聞いてくる。また、突然告げるのも良くない。予告は必要なので、私達はいつも会議の2、30分前に本人に予告することにしている。「今日はお父さんが日ごろお世話になっているヘルパーさんや、お父さんが通っているデイサービス、お年寄りホテル(ショートステイのこと)の人たちが「今までのと同じやり方でいいかどうか」を聞きに来る。なので、お父さん、立ち会ってくれるかな。電話でできるかと思ったら、電話じゃダメなんだって。本人に会わないとダメなんだってさ。今日は私がいるから大丈夫。サインも私でいいんだって。今から20分後ぐらいにみんな来るから、お父さん立ち会ってもらえるかな」そんなふうにお願いした。

実際、時間になって訪ねてきた人たちは、みんな父に会ったことがある人たちばかりだったので、父は「ああ、いつもお世話になっている人だ」と理解した様子。今回は、約束してもらった通り、難しい言い回しもなし、専門用語もなし、最後のサインは私がするということで、会議は進んだ。
専門用語を訓読みに言い換える技は頭を使うようで、会話が一時的に止まることもああったけれど、お互いに「そういえばいいのか」と勉強になった。
父は始終リラックスして、時にはユーモアは交えながら、和やかに会議ができた。そしていつも途中で父が怒ってしまい、それをなだめるのに使ってた時間もゼロで済んだ。通常1時間から1時間半かかっていたヘトヘトな会議が、今日はなんと20分で済んでしまった!

多少緊張したようで、みんなが帰った後「あれで良かったのか」と聞いてきたけれど、今回は上出来!

認知症で、いつも会議の後不穏になってしまって、会議を憂鬱に感じている家族の皆さん。ケアマネさんに「国語の先生が『熟語は訓読みに直せ』って言っていたよ」と伝えてみて。

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