翻訳とローカライズの違いって?
この違い、最初は自分でもよくわかっていませんでした。
ですが、私が実際に仕事を初めてから感じたのは……
翻訳は、原文の意味を損なわず置き換える
ローカライズは、原文を現地で受け入れられる表現にする
という感覚でした。
例えば……
こちらは「お婆ちゃんちに行けば美味しいおやつが待っている」というシーンです。
絵や設定は多少変えていますが、実際に私が遭遇した漫画の一コマです。
この「可口〜」というテキスト、皆さんならどのように訳しますか?
「可口」は「美味しい」という意味です。
そのまま訳すとすれば、「美味しいおやつ〜」や「美味しいんだよなぁ〜」となるでしょう。
実際、私がネイティブチェッカーとして確認した際、中国人翻訳者の方はこのシーンを「美味しい〜」や「美味しそうなおやつ〜」と訳されていました。
ですが、日本人からすると、食べてもいないのに「美味しい〜」と言ったり、見てもいないのに「美味しそう〜」と言ったりするのは変ですよね。
そこで、私はこのように修正しました。
(翻訳やローカライズに正解はないので、あくまで私なりの答えです)
「可口」は「美味しい」という意味なのに、まるっきり意味が違うじゃないか!と思われるかもしれませんが、それこそが翻訳とローカライズの違いです。
日本の漫画では、読者の負担を減らすために極力文字を少なくする努力が求められています。
この「可口」は少女が想像しているおやつのことを指していますが、おやつが美味しそうであることは絵を見れば十分読者に伝わるため、あえて文字で「美味しいおやつ〜」というように書く必要がないのです。
そして、テキストが吹き出し近くにあることから、嬉しい想像をする時の擬音「ぽわ〜ん」が妥当であると判断しました。他に案を挙げるとすれば「むふふ…」や「にま〜」等でしょうか。
また、このテキストは吹き出しに入っていないため、キャラのセリフととってもいいですし、擬音ととっても問題ありません。(ここはクライアントの指示にもよる)
このように、ローカライザーは「美味しい」という意味を理解した上で、キャラクターや状況、さらには漫画やゲームといったコンテンツに合わせて言葉を選び、日本人が受け入れやすい形に変換しているのです。
その努力が漫画やゲーム、ドラマの没入感にも繋がっていきます。
翻訳やローカライズに正解はありません。
中国語問わず、様々な翻訳に触れ、「こんな訳し方があったのか!」「私だったらこう訳す!」と意識することが翻訳者、ローカライザーとして上達する鍵だと感じています。
皆さんも「自分だけの翻訳」を大切にしてくださいね♫
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