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ウフィツィ美術館での結婚祝い

毎年1月31日にウフィツィ美術館を訪れたカップル(恋人同士も含む)は、一人分のチケット代で入場できます。
それは521年前の1月31日に結婚した、あるフィレンツェの夫婦を記念してです。

ラファエッロ 「アーニョロ・ドーニとマッダレーナ・ストロッツィの肖像」 1504-6年 ウフィツィ美術館


高級毛織物の輸出で財を成したドーニ家のアーニョロと銀行業で成功を収めていたストロッツィ家のマッダレーナのお祝いです。



二人の華やかな衣装や宝石を見れば、彼らが名家の出身というだけでなく、美的センスが抜きんでいたことも伺えます。アーニョロは職人が織りなす豪華な織物に毎日触れていたし、マッダレーナは美術に強い関心を持ち蒐集家としても有名でした。


繊維の加工業で有名だったフィレンツェの高級織物。宝石も金と大ぶりの宝石をあしらった高価なもの。宝石細工もフィレンツェは有名。


セルミドの親方 「デウカリオーンとピラーの話」
夫妻がお子さんに恵まれるよう、ローマ神話で子宝に恵まれた夫婦の話が表されていると言われる。

アーニョロはラファエロに結婚記念の肖像画を頼み、長女が生まれた際にはミケランジェロに出産祝いの作品「聖家族と聖ヨハネ」(別名ドーニの円盤画)も依頼します。


ミケランジェロ 「聖家族」 1506年 ウフィツィ美術館夫婦の肖像画と同じ部屋に展示されている


彼らが結婚しなければ、これらのルネッサンスの巨匠たちによる名作は生み出されず、ウフィツィ美術館で私達に感動を与えてくれることもありませんでした。



この粋な試みは6年前、前の館長によって始められ、去年交代した館長も引き継ぎました。
新館長いわく、

「二人の結婚記念日はウフィツィ美術館にとってバレンタインデー。」


誰かのお祝い事に参加できるっていいですよね。しかもラファエロとミケランジェロの作品を見ながら。



ウフィツィ美術館に行かれる時の、参考になさってみて下さい。

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フィレンツェ歩き ここだけの話
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