【イベント】倉貫義人さん(ソニックガーデン)と語る「徹底討論!『管理ゼロで成果はあがる』はどうすれば他社でも応用できるのか」 2019/5/29
倉貫義人さんの管ゼロ本こと「管理ゼロで成果は上がる」で、本の内容をもっと掘り下げるような、内容盛りだくさんのイベントに行ってきました。
FINDERSというWebメディアで倉貫さんが連載していた縁で実現したイベント。
管ゼロ本はもちろん読了済み。
イベントの構成
1.「FINDERS」創刊編集長 米田智彦さんからご挨拶
FINDERSの読者属性は、30代のビジネスパーソン中心、8割が男性、4人に1人が何らかの決裁権を持つそうです。また、読者の8割は25~44歳。
「ビジネスパーソンにクリエイティビティを。クリエイターにビジネスマインドを。」というタグラインがイイ感じ。
2.倉貫さんの自己紹介&アイスブレイク:斜に構えるゲーム
管ゼロ本はタイトルが過激なので、本屋で見て初めてソニックガーデンさんを知る人が「ほんとかよ」と感じる人が多い、とのことです。(元々知ってる状態だと全く気にならず、言われてみれば過激だな…みたいな)
まずは、斜に構えずこの後の話を進めるために(笑)、その場で隣の人とペアになり、みんなで「斜に構えるゲーム」をやりました。
3.スライド:会社の紹介 等々
納品のない受託開発、物理的なオフィスが無い話等々、そのあとソニックガーデンさんの"オフィス"を見学させて頂きました。
管ゼロ本にも写真は載っているけど、実物を見るとどんな感じなのかよく分かります。実際に画面を操作しながら雑談の様子を見せて頂いたり、「ちょっと話そう」と実際に社員の方とZoomで繋いでみせてくださったり。
■バーチャルオフィスについて
・オフィスは何のためにあったのか考えた。書類は保管庫、会議室はテレビ会議…と替えが効くが、オフィスが無いと雑談が出来ないことが分かった。だから、インターネット上にオフィスを作った。
・(画面内の雑談が流れているエリアを指して)誰かが発言しても通知は来ないけど、見ようと思えば見える状態になっている。
・Slack等のチャットツールは手段であって"場"にはならない。(Slackは、リアルな場で顔を合わせた上での連絡手段。チャットツールは本当にいるかどうかが分からない)
“場”というのがとても重要だと思います。"場"があるから人が活きる。そんな人と人とのコミュニケーションが、今度は"場"を活かしていく。
4.質疑応答
このイベントの一番のメインで、全体の半分くらいの時間が割かれていました。ここからは、質疑応答から印象に残った話をいくつか。
怒ることのメリットが無いから怒らない
Q.倉貫さんは怒ることはあまりないですよね?
部下の失敗はしょっちゅうあるけど、失敗しないとチャレンジしたことにならない、とのこと。
基本的に社員の皆さんはあまり怒らないそうで「怒ったり責めたりするすることになんの得があるのか?怒ることのメリットを考えたら、何もなかった」ということだそう。
怒っても誰も得しない、だから怒らない。
人が全然辞めない会社。どんどん人が増えていったら?
Q.退職っていう概念が無いのでしょうか?退職者はいらっしゃいますか?
退職したのは、正式には2名、しかも試用期間中に辞めたのだとか。
社歴の長い人ほど辞めておらず、社歴の浅い人だけが2名辞めた、とのこと。
Q.ビジネスサイズが大きくなったら、この制度は続けられるのでしょうか?
よく聞かれるけど、「わかりません」と答えているそうです。
昔は納品のない受託開発じゃなかったし、人が増えていく中で状況に合わせて少しずつ制度が出来上がっていったので、「今がゴールだと思ってやってきたわけではないし、リモートワークをすると最初から分かっていたら、ある時期に渋谷に立派なオフィスを借りることもなかった」とのこと。
「もっと人が増えたら、今と違っていることをやっていると思います」。
・変えることが大事だと思っていて、『そもそも』というキーワードをよく使う。
・「そもそも」を考えることで本質が分かる。
・本質さえわかっていれば、細かいやり方はいくらでも変えてもいいかな、という企業文化。
私も「そもそも」ってよく言うので、「おお!」と思いました(笑)。デザインってそもそもを突き詰める作業だと思っていて、「そもそも」を考えるのが苦にならない人は全員、”デザイン”あるいは”デザインのディレクション”、もしくは”発注者としてデザインを作ってもらう”作業の適性があると思います。
倉貫さんが実際にご経験があるかどうかは分からないけど、もしご興味があってテクニックを磨いたら、恐らくすごくデザイン上手いのでは。。
デザインって、プログラミングとすごくよく似ているので(良いデザイン・良いプログラムは、どちらもしっかりとしたロジックに裏打ちされているという点では特に。それに、プログラムは設計が大事だし、デザイン=designという言葉が本来”設計”という意味で、本質的にもデザインは"設計")。
とりくみや制度を根付かせるために大切なこと
Q.状況に応じて制度を採り入れるとはいえ、何かやる時に反対されることもあったりしませんでしたか?
これは私がお尋ねした質問。制度の話を聞いてるうちに、掘り下げたくなってきました。
・社長が言ったからと言ってやらないし、言ってもやらない人たちが集まっている。
・「イイね」と思ったらやってくれる。
・「どうしたら「イイね」と思ってくれるかを追求したら、「筋が通っているかどうかがとても大事だった」。
・プログラム書く人たちはロジックが好きなので、理由があるとやってくれる。
筋が通っていて、理由がちゃんとある。これ、、めちゃくちゃ大事ですよね…。これぞマネジメント。
・とりくみを広めるためによくやるのは、「日記」というしくみ。日報じゃなくて日記を書く。
・日記を書いたのは、社長が「やりなさい」と言って始めたのではなく、雑談をしているなかで「イイね」となって、最初は2人で始めた。そうしたら楽しそうな雰囲気が伝わって、ムーブメントになって、みんなが書くようになった。基本的にそういうグルーブでやっている。
・ノリがよくて楽しくやってたら、盛り上がってやるし、盛り上がらなかったら会社の制度としても消えてしまう。
・例えばリモート飲み会なら、ポイントは人数を少なめにすること。はじめてやるときは4人だった(初めていく飲み会が4人くらいでちょうど良いのと一緒)
何か分かるような感じがしました。業務のような業務でないような、全然管理されないけどセルフマネジメント必須なプロジェクトをやっていたことがあり、あれやこれや考えたりやったりするとき、"ノリ"ドリブンで動いてたような気がする。
組織として、ひとつにまとまる、ということ
Q.会社としてまとまるために意識していることはなんですか?
「これは会社なのか?とよく言われます」とのこと(株主は居て、倉貫さんご自身)
・中身はコミュニティに近い状態で、個人事業主の集まりでもない(社会保障とか労災とかお休みとか担保しているから)
・寄合に近い。金銭面も含めて助け合うために集まっている集団。
・会社の大きさは世の中が決めること。30億の価値にするから30億になるだけで、社長がこうしたいといってそうなるものではない。
・世の中から求められたら成長するし、そうでなければ成長しない。支持を得られなくなったらそれはそれで畳めば良いだけ。
将来、会社はコミュニティ化して、仕事はプロジェクト化していく…というのは書籍だったりネットだったりで時々言われているけど、実はもう具現化しているところが凄いような。
・まとまるかというと、案外まとまっている。「プログラマを一生の仕事にする」とWebサイトに書いていて、プログラマが幸せな働き方ができたらいい。
・管理職にならないと給料が上がらないのはもったいない。そこは達成したい。
・社員を幸せにしないのに世の中を幸せにする、というロジックはおかしい。まずは自分たちが幸せになることを目指す。そのつもりで入社している人たちなので、その部分でまとまっている。
こういう話を見聞きするたびに、ソニックガーデンさんのような考え方が広がって、色んな人に届いてほしいと思うのですよね。もちろん、ソニックガーデンさんだけが正解じゃないけれど、単に「ステークホルダーの皆さんを幸せにします」という意味を分かりやすい言葉で言っているだけで、特殊でも何でもない。
上司が無くて経費使い放題で…とかに目が行きがちだけど、一番届いてほしいのは「そもそも」思考。つまり、課題を発見/解決するための思考。
人月とか炎上案件とか、システム開発なんてこんなもんだ…とか、モヤモヤすることが当たり前になっちゃってる環境で疲れてしまってる人ほど、特に。
まとめ
質疑応答という形だったので、その場にいる全員から倉貫さんに、「これって実際のところどうなんでしょう?」とか「うちではこうなっちゃうんですけど、どうすれば良いのでしょう?」と相談するような感じの会だったなぁと思いました。
あと、最近ソニックガーデンさんの事を知ったのかな?という感じがする方、IT業界じゃない方もたくさんいたような。良い事ですね。
上にまとめた以外では、「育休は制度として存在しないけど、そういう時期に休む人はたくさんいるし、お互い様になっている」というような話もあったけど、”制度”もまた手段でしかないことが体現されてるってのも凄いなと思いました。