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心理的安全性を高める上司の行動が職場にもたらす影響とは?心理的安全性を高めるポイントは「傾聴」にある!

心理的安全性、という言葉を聞いたことがある方は多いのではないかと思います。

Edmondson(2019)は、心理的安全性についてこう述べています。

「考えを率直に述べても、恥をかくことも無視されることも非難されることもないと確信していること。わからないことがあれば質問できると承知しているし、同僚を信頼し尊敬していること。」

(Edmondson, 2019, p.15)

今回は、心理的安全性を高める上司の行動が職場にどう影響するのかという論文についてまとめていきたいと思います。

論文名:心理的安全性を高める上司の行動が職場にもたらす影響 The impact of psychological safety supervisor behaviors on the workplace/島村香代さん


先行研究

心理的安全性にまつわる先行研究は以下がまとめられています。

・Schein & Bennis(1965)は、組織改革の不確実さと不安に対処できるようになるには心理的安全性を生み出して、変化を確信させたり、実感させたりする必要性を論じた。

・心理的安全性の形成おける要について、「チーム、部署、支社など社内のグループのリーダーは、心理的安全性をつくるうえで重要な役割を果たす。」(Edmondson, 2019, p.49) とも言及している。

・心理的安全性が得られている状態については「心理的安全性を得ている従業員は、エンゲージしている従業員」(Edmondson, 2019, p71)と言及している。

・「ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。ワー ク・エンゲイジメントの高い人とは、仕事に誇り(やりがい)を感じ、熱心に取り組み、仕事 から活力を得て活き活きとしている状態を示している。バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられている」島津(2010a, p.2, 2010b, p.21)。

Google の実証検証


The New York Times(2016)は、Google社内で効果的なチームの特徴を明らかにするた めのプロジェクト「Project Aristotle」の調査結果を掲載。

「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、他のチームメン バーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い」とEdmondson(1999)が提唱した心理的安全性の特徴について紹介。

心理的安全に関する意識調査7項目
1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される
2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
3. チームのメンバーは、自分と異なっているということを理由に他者を拒絶することがある
4. チームに 対してリスクのある行動をしても安全である
5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
6. チームメンバーは誰も、自分の 仕事を意図的におとしめるような行動はし ない
7. チームメンバーと仕事をする時、自分 のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

心理的安全を高めるためにマネージャーができること5項目
1. 積極的な姿勢を示す
2. 理解してい ることを示す
3. 人間関係において相手を受け入れる姿勢を示す
4. 意思決定において相手を受け入れる姿勢を示す
5. 強情にならない範囲で自信や信念を持つ

仮説

この論文では以下の4つの仮説が述べられています。

仮説 1「上司のリーダーシップ行動は、職場の心理的安全性に正の影響を与える」
仮説 2「心理的安全性は、従業員のワーク・ エンゲイジメントに正の影響を与える」
仮説 3「従業員のワーク・エンゲイジメントは職務満足に正の影響を与える」
仮説 4「上司のリーダーシップ行動は、心理的ストレスに負の影響を与える」

調査対象・方法

調査対象者は、性別、雇用形態を問わず、組織で勤務している人を対象に、無記名で WEB アンケート調査を縁故法にて、2021 年 10 月 23 日〜 11 月 6 日の期間で実施した。

調査項目の仕事の要求度、ワーク・エンゲイジメント、職務・生活満足度の一部は,新職業性ストレス簡易調査票の尺度を利用した。心理的安全性に関する質問項目は,Edmondson(1999)が提唱している 15 項目のうち、13 項目を採択し、「職場の心理的安全性」として 7 項目、「心理的安全性を高める上司のリーダーシップ行動」として 6 項目を採択し、Q6-4 はセキュアリーダーシップの尺度を使用、Q6-8 は設問尺 度の解説を参考し、自身の経験を踏まえて作成し5件法を用い、職場とリーダー(上司)に対する認知をたずねた。

仕事の要求度調査票の9項目の平均値、標準偏差を算出し、得点分布に偏りが見られたが、いずれの項目も仕事の要求度を把握する上で、重要な内容が含まれていると判断し、全ての項目を以降の分析の対象とした。

p124より抜粋
p125より抜粋

結果

仮説 1「上司のリーダーシップ行動は、職場の心理的安全性に正の影響を与える」→支持された
仮説 2「心理的安全性は、従業員のワーク・ エンゲイジメントに正の影響を与える」→支持された
仮説 3「従業員のワーク・エンゲイジメントは職務満足に正の影響を与える」→支持された
仮説 4「上司のリーダーシップ行動は、心理的ストレスに負の影響を与える」→支持された

考察

職場の心理的安全性と心理的ストレス反応の低減、ストレス反応の緩衝要
因としても上司の行動が影響する
ことが確認された。

上司(リーダー)は職場(チーム)の実情を把握して、適切なリーダーシップ能力を発揮するだけでなく、受容、共感といった対人援助技術を身につけ、一人ひとりの従業員理解し、 各々の従業員とその職場における仕事の資源 (コーチング、仕事のパフォーマンスに対するフィードバック、正当な評価等)に活用することが求められていることが確認された。

心理的安全性を高める上司の行動が、ワーク・エンゲイジメントや心理的ストレス反応への影響が大きかったことから、「単純に耳を傾ける」だけでも効果があるといえる。


人と人で構成されている組織において、管理職やリーダーは、人を人として大切にすることを根底とする心理的安全性を正しく理解したリーダーシップ行動を取ること、そして、チームメンバーや部下の声にしっかりと耳を傾けることが、心理的安全性を高める一歩ということがわかりました。


読んでみると「当たり前だろう」と思うことでも、受容や共感、傾聴って案外できていないことが多いと思います。特に、自分が余裕なかったり、多忙だと尚更。意識して、職場の中で増やしていきたいですね。


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