<閑話休題>2022年のまとめと2023年の抱負
明けましておめでとうございます。旧年中のご愛顧を感謝申し上げますとともに、引き続き本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
2022年4月以降は、定年退職して時間ができたこともあり、読書及び創作活動に勤しむことができた。そこで、2022年のまとめと2023年の抱負を書きたい。
1.読書
(1)2022年のまとめ
なんといっても、ダンテ『神曲』を邦訳ながら読了できたこと。翻訳しているせいもあるが、意外と読みやすかった。英語版は購入時に冒頭を一読して、古語による難解な詩となっていることから、未だ手をつけていないが、将来的にはなんとか読破したいと願っている。思えば、ベケットが死の直前まで読んでいたのが、『神曲』だった。
次に、瀧口修造関係の手元にある書籍・雑誌を読了できたことは良かった。そして、この関係で、現代詩に関する知識を深めることができた。なお、瀧口とシュールレアリスムについて、つまり美術関係は、以前から少しは知識があったのだが、今回の読書で瀧口が偉大な詩人であることも再認識した。いや瀧口は詩人であり、その拡大した輪の中で美術評論と芸術活動をしていたと思う。
サミュエル・ベケット関係は、英語版については『Waiting for Godot』ぐらいしかまともに読めていない。なお、ベケット関係の大半の翻訳した文献については、既に40数年前に『ベケット著作集』(この白水社から出た本は、いつのまにか我が家から消えてしまった。だからといって、再版・再編集されたものを購入する予定はないが)読了している。一方で、日本人研究者による『ベケット大全』や海外の研究者の翻訳本を読了できたので、少しは前進できた(研究が進んだ)と思う。
神話・歴史関係では、カール・ケレーニイ『ギリシアの神話』全二巻、ヤーコブ・ブルクハルト『イタリア・ルネサンスの文化』全二巻を読めた。これはだいぶ勉強になった。これから、カルロ・ギンズブルグ『チーズと蛆虫』、フィリップ・アリエス『子供の誕生』、ジュルス・ミシュレ『民衆』、『魔女』、ヨハネス・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』などが待ち受けており、前途は長い。
ラグビー関係では、NZ時代から積読状態だった英語本を全て読了した。お世話になった故ビル・ブライアンさんがまとめた、ウェリントン(NZ)のセンチュリオンクラブの歴史をまとめた本は、意外とNZラグビー全体の歴史を知る参考になった。また、1987年の第一回RWCが終わってすぐに書かれた本を読み、当時のNZの状況が良くわかった。これらは、そのうち<書評>として掲載する予定。
小説関係では、リング・ラードナーの持っている英語版(インターネットから数冊プリントしたもの)と日本で翻訳された古本を読了した。ラードナーの魅力を改めて知ることができたし、短編小説を作るための参考になった。
(2)現在進行中の読書
『シンボル形式の哲学』エルンスト・カッシーラー
「言語篇」及び「神話的思考篇」は読了したので、次の最大難関である「認識の現象学」全二巻に取り掛かっているところ。夏までに読了する予定。
『アラビアン・ナイト』全18巻プラス別巻
第9巻及び別巻を読了。残り9巻となった。春頃には読了できそう。なお、9巻までの感想を<書評>第一弾として掲載予定。
『シュメール神話集成』
短い文庫本ながら、注釈が半分以上占めている他、読みやすい内容ではないので、ぼちぼちと読む予定。2月までには読了か。
『脱領域の知性』ジョージ・スタイナー
既に時代遅れ観のある本だが、文学研究の参考としては重要だと思うので、2月には読了する予定。
『現代詩 土着と原質』小川和佑
先般、現代詩についての400字詰め50枚程の論文を一週間で作った。その文献的な補強もあって、1970年代中頃の本だが、今読み進めている。内容的にスラスラ読めるので、1月早々には読了予定。そういえば、私が子供の頃、高田敏子なんて詩人が流行ったことを思い出させてくれた。
『Stanley Kubrick, Director』 Alex Walker, Sybil Taylor, Ulrich Ruchti
アメリカの著名なキューブリック研究者たちによる研究書。初版を発行した後、時間が経過したため、キューブリックの遺作『Eyes Wide Shut』までの作品を追加して再版したもの。ベケットの難解な前衛文学(後述)に比べるとはるかに読みやすい。キューブリックは、医者の息子として生まれ、家にギリシア神話、イソップやグリム民話などが沢山あったのが物語への興味を起こさせたことと、高卒で雑誌「Look」のカメラマンとして就職したことなどを、初めて知った。彼は、賭けチェスで生活したこともあるほどにIQが高く、見た目にも前頭葉が大きく発達しているので、ハーバートぐらいは楽に卒業できたと思うが、彼は大学へ進学しなかった。たぶん、彼ほど優秀だと、大学で学ぶものはすでになかったということなのだろうと思う。春頃には読了予定。<書評>または<芸術一般>として、キューブリック論考を掲載するかも知れない。
『Molloy, Malone Dies, The Unnamable』 Samuel Beckett
これは、たとえ日本語に翻訳されていても、難解でスラスラと絶対に読めない前衛(アヴァンギャルド)小説なので、一年以上かかるかも知れないなあ・・・。他にも戯曲類も英語で読みたい。なお、フランス語版については、これから勉強しなおすので、ずいぶん先になりそう。
(3)2023年に読みたい本
『デカメロン』ボッカッチョ
イタリア・ルネサンスを知るためには、ダンテ『神曲』と並ぶ必須の本。全訳が出ているのは嬉しい。
『日本人にとっての東洋と西洋』谷川徹三及び福田定良
卒論のときに読もうとして読み切れなかったもの。日本における西洋文化浸透の経緯を再確認したい。
『神智学』、『教育術』ルドルフ・シュタイナー
オカルト科学と一般的に見られている神智学だが、教育の分野では発達障害について素晴らしい見識と成果を挙げている。おおよそのことは知っているが、きちんと学びたいと思う。
『神話学入門』、『トリックスター』、『迷宮と神話』、『プロメテウス』 カール・ケレーニイ
神話学の泰斗ケレーニイの主要著作。これを読めれば、神話学についてはある程度ものが言えるレベルに成れる。
『エロティシズム』、『ラスコーの壁画』、『呪われた部分』 ジョルジュ・バタイユ
バタイユについてはきちんと学んでいなので、この主要三作を読み切りたい。ところでバタイユは、戦前パリで岡本太郎と交友していたのですよね。ロバート・キャパの彼女ゲルダ・タローが、自分のペンネームに使用したことと併せて、岡本太郎って、改めて凄いし、うらやましい。
『生命 この宇宙なるもの』 フランシス・クリック
有名なDNAの二重螺旋構造を発見したノーベル賞受賞者二人のうちの一人がクリック(もう一人はジェイムズ・ワトソン)。彼は、人と宇宙空間との関連をDNAの構造から類推しており、そうした考えをまとめた本。今日の「古代の宇宙人説」に共通するアイディアを科学者がきちんと演繹した本。そういう点では、スティーヴン・ホーキングの宇宙論に近いものを感じる。
『ギリシア悲劇全集』全4巻
古典文学だけど、発声することを前提にしている戯曲なので、意外にスラスラと読めるでしょう。
『転身物語』オウィディウス
ローマ神話に出てくる、人が動物などに変身(メタモルフォ―セス)する物語集成。創作の参考にしたい。
『黄金伝説』ヤコブス・デ・ウォラギネ
キリスト教カソリックの聖人伝説集成の第一巻。全巻揃えるのは経済的に大変なので、ここまでにするつもり。これも創作の参考にしたい。また、もしかするとご利益がある?いや、これと『聖書』を読破すれば、聖職者になれるかも知れない。
『Dracula』 Bram Stoker
ルーマニアにいるときに読みたかった「ドラキュラ」の英語原書。邦訳は中学3年の時に読んでいる。だから内容は良く知っているので、その日記風文体の効果を味わいたい。
『Duchamp, love and death, even』Juan Antonio Ramirez
20世紀最高の芸術家マルセル・デュシャンの研究本。関連したさまざまな画像や図を多数引用しているので、デュシャン研究に大いに参考になると思う。読了するまでに時間がかかると思うが、<書評>または<芸術一般>としてのデュシャン研究を掲載する予定。そういえば、瀧口修造はデュシャンから「ローズ・セラビー」のペンネームをもらっていた。岡本太郎も凄いけど、瀧口修造も同じくらいに凄い!
2.創作活動
(1)2022年のまとめ
昔書いたものを整理・修文し、データにできた。また短編を数本書いた。詩についての論文も一本書いた。ドビュッシーの曲を元にした散文詩を書いたが、これは自分で書いている時一番楽しかった。たぶん、脳内にドビュッシーの曲が流れていたからだと思う。また、ラグビーを題材にした物語を書かねばと思い、中編(13,000字=400字詰め原稿用紙で32枚)を書いた。内容は1980年代のラグビーを参考にしていて、今のラグビー風景ではない。
(2)2023年の抱負
短編、詩、論文をさらに書き続けたい。論文は、芸術関係、特に映画(キューブリックなど)をまとめてみたい。また、ヴィヴァルディ「四季」のうち「冬」を元にした散文詩を書きたいと思っている。なお、長編を書く予定はないし、将来も書かないと思う。僕はサリンジャーやラードナーのような短編作家と呼ばれたいから。詩に関する論文を書いた手前、詩も作りたいと思っている。
なお、私にとって恋愛青春メロドラマは(カラオケやアイドル芸能同様に)忌避する対象なので、絶対にテーマにはならない。そして、明確に意識しているのではないが、たぶん禅的な世界は「〇(まる、円)」であることを表現する方向にあると思っている。もし「色紙に何か書いてください」と依頼されたら、「人も世界も、〇」と書くと思う。
そう考えると、私は(個人的には「サンタクロース=聖ニコラス」だと思いたいが)キリスト教の聖職者よりも、禅僧の方が似合っているのかも知れない。目指すは、鈴木大拙か富岡鉄斎か?
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