<短編小説>「あるミサでの出来事」
これは、とあるフランス南部の田舎町に、中世から現代まで伝わる説話である。その町は、地中海に面していることから温暖な気候に恵まれ、また度重なる大きな戦乱に巻き込まれる機会が少なかったため、そこに住む人々は長く平和な時間を過ごしていた。そして、日々の生活は、農産物と漁業に恵まれ、牛や羊の畜産も盛んだったので、一年を通じて食べ物に困ることはない満ち足りたものだった。そうして素朴な生活しか知らない人々が貯え続けた財は、町の中心にある教会へ長年寄進され続けた。そのため、この素朴な田舎