- 運営しているクリエイター
記事一覧
星芒鬼譚5「ビジネスチャンス、きちゃったかも」
イギリスの郊外にある、屋敷の二階。
黒いドレスをまとった淑女が、ティータイムを楽しもうとしていた。
窓際の小さなテーブルにはケーキスタンドが置かれ、その上にはスコーンが並べられている。
淑女は頬杖をつき、満足そうにそれを眺めている。
「さあ、紅茶が入りましたよ」
執事然とした大男が、ソーサーにのったティーカップをテーブルに置いた。
ふわっとフルーティーな香りが漂う。
「うん、ありがと。今日は
星芒鬼譚7「例の連続失踪事件。あれを解決しちゃおーってこと」
空港は、今日もさまざまな人種が行き交っている。
入国ゲートを抜けた先には、和風のお土産屋にカフェ、寿司屋におでん屋…と多彩な店が軒をつらねていた。
アマニータは11時間ものフライトで固まった体を伸ばすように、大きく伸びをした。
「来たわ~日本!イエーイ!ピースピース!ほら、写真!!」
その後ろに、大きな荷物を持たされたフランケンとマルコが続く。
これだけ、ある意味混沌とした空間であれば、彼らの
星芒鬼譚9「そろそろ決着をつけさせてもらおうか、玉藻」
夏美は通信機を左手で押さえ、耳を澄ました。
が、武仁も光太郎も声を発しない。
これでは、向こうで何が起きているのかわからない。ただ、何かが起きていることは明白だった。
と、妖怪探知機のブザーがけたたましく鳴り出し、そのあまりの音量に耳鳴りがした。
『『わーーーーー!!!』』
光太郎と武仁の声が重なる。武仁が取り落としたのか、探知機のブザーが急に途切れた。
「今度は何だ!?」
夏美の声にも焦
星芒鬼譚10「…己の分を知るが良いわ」
晴明の傍らには薄紫の装束の華奢な女性がたたずみ、鉄扇を携えたもう一人の男ーーー蘆屋道満の足元には、派手な格好の野良猫のような少女がしゃがんでいた。
「式神と…管狐か」
玉藻は目を細める。
「こいつらには心の迷いなんてものありませんからねぇ」
「そゆこと!あんたの得意技は通用しないぜ」
道満の言葉にのっかるように、少女は得意気に言った。
「あるじ様、いかがいたしましょう」
華奢な女性が、
星芒鬼譚11「待って不死身の人多すぎない?」
「ここまで来れば大丈夫かと…って大丈夫ですか?」
賀茂が振り返ると、京極はぜぇはぁと息を荒げていた。
なんなら、げほげほと噎せている。
「だ、大丈夫じゃないけど…とりあえず、大丈夫…」
京極はベンチに倒れ込むように座った。
賀茂も、少し間を開けて腰を下ろす。
夜の公園には誰もいない。外灯がジジッと音を立てて点滅した。
しばらく続いた沈黙を、賀茂が破る。
「…京極さん。昨日のことですけど」
星芒鬼譚12「この街の平和は僕たちが守るのです!」
源探偵事務所の社用車は、鞍馬山へと向かっていた。
わずかに開けた窓から入ってくる風に、ひよりの頭の上の耳がぴこぴこと動く。
「いや~、狸に化かされたのは初めてでしたよ」
助手席の光太郎がバックミラー越しに見ながら言った。
ひよりは邪魔にならないように前に抱えた大きなしっぽを、きゅっと抱き締めた。
「隠していてごめんなさい。でも、探偵さんなんにも聞かないんですもの」
「普段から人間の姿で生活し
星芒鬼譚13「これは失礼したな。我が名は玉藻。いずれこの世のすべてを手に入れる者」
悟浄と八戒は、緑の中を歩いていた。
八戒はタピオカのカップを片手にご機嫌な様子でずんずんと進んでいく。
悟浄も同じカップを持って周りを見回しながらついていく。
と、八戒が急停止し、その大きな背中にぶつかった悟浄は一人で弾き飛ばされた。
「ぐわっ」
「ねぇ悟浄」
悟浄はよろよろと立ち上がる。
「なんだよ…」
八戒は、神妙な面持ちで振り向いた。
「ここってどこだと思う?」
悟浄は思わずずっ
星芒鬼譚14「バカ言うな。ただの勘違いだよ」
光太郎は袋に入った刀を担ぎ、灯籠の明かりも消え真っ暗な石段をずんずんと降りていた。
「光太郎。待て」
後ろから夏美が何度も声をかける。
「待てと言ってる!」
ようやく歩みを止めると、光太郎は振り向いた。
「…何だよ」
怒ったような拗ねたような顔をしていた。
やはり武仁と何かあったんだな。夏美は確信した。
だが、当人から聞かなければ何があったのかなど知りようもない。
「何かあったなら、