ちょっと意外な「アレ」を使用する「ARトレーニング」は筋力向上にどれだけ有効か? ~比較実験から考える~
バーベル種目の1RM、つまりMax重量を伸ばすための手法の一つに「可変負荷トレーニング」というものがあります。
英語では「Accommodate Resistance Training」といい、パワーリフティングなどの分野では割と浸透している方法です。
簡単にいうと、バーベルなどの重りに、「ゴムバンド」や「鎖」を付加して挙上するトレーニング法のことです。
こんなスタイルのトレーニングですね。
以前の記事でも、紹介したものがあります。
その可変負荷トレーニングについて気になる論文を見つけたので、今日はその紹介と解説です。
2022年の研究です。
17人のパワーリフターを被験者に、9週間にわたって行われました。
期間中は、ロシアの有名なコーチであるボリス・シェイコ氏のウェーブトレーニング法に依拠しつつ、週4回のトレーニングを実施しました。
未邦訳ですが、シェイコ氏の著作も紹介しておきます。
実験の前と後で1RM、つまりMax重量を測定し、効果を確かめています。
被験者がパワーリフターということもあって、
スクワット
ベンチプレス
デッドリフト
の3種目で測定しています。
ちなみに、ウェーブトレーニングというのはプログラムないしピリオダイゼーションの手法の一つです。
たとえば、
第1週 70%
第2週 80%
第3週 90%
第4週 75%
第5週 85%
第6週 95%
第4週 80%
第5週 90%
第6週 100%
(%は1RMに対する比率)
といった具合に、一定の期間にわたり負荷を上昇させた後、いったん下げて、再び上昇させていくという手順を繰り返す手法です。
ただ一直線に負荷を増大させるよりも、変化に富む分だけ、停滞を防ぎやすいとされます。
ただ、その分プログラムが長期にわたる傾向があります。
どちらかといえば中級者、上級者向けの手法ですね。
ちなみに、この実験では1~5週でいったんピークを作り、6~9週で2度目のピークを作るというデザインでした。
そしてそのまま、9週目にMax重量の測定を行っています。
(実験前の1RM測定は0週目に行いました)
比較グループの分け方
さて、可変負荷トレーニングの効果を検証するということで、この実験では17人のリフターを2つのグループに分けています。
荷重のスタイルによって、
可変負荷あり =AR (Accommodate Resistance)グループ 9人
バーベルのみ =CPL(Classic Plate Load) グループ 8人
に分けました。
CPLグループは従来のバーベルのみ、
ARグループは バーベル + ゴムバンド or チェーン という構成です。
実験の様子は以下を参照ください。
ちょっと不鮮明ですが、雰囲気は伝わると思います。
一点補足しておくと、バーベルのみのCPLグループの負荷を100%とした場合、可変負荷のARグループは挙上完了位置での負荷が105%になるよう、設定されています。
バーベル80% + バンド or チェーン25%
の割合で、つまりCPLグループの重量設定が100㎏なら
ARグループは バーベル80㎏ + バンドorチェーン25㎏ としています。
(挙げ切ったポジションで25㎏相当です)
これは、可変負荷の特性が関係しています。
ふつう、バーベル種目で一番負荷がきついのはバーベルを下げ切った局面、いわゆるボトムポジションです。
筋肉に、もっとも強いストレッチがかかるポジションだからです。
なので、バーベルの重量設定というものは、基本的にこのボトムポジション付近の筋力が基準になります。
この辺りを越えられないと、挙上できず潰れてしまうからです。
しかし、ボトムポジションに対し動作の終わり付近、トップポジションでは、それよりも強い力を発揮することができます。
(より正確には動作の中間付近が最も強いと思います)
フルスクワットと比べて、ハーフスクワットの方が重い重量を扱うことができますよね。
ということは、挙上動作のトップ付近では、1RMの重量よりも強い力を発揮することができるのです。
こうした人間の動作特性を考えると、可変負荷トレーニングの重量設定は
「ボトムで弱く、トップでより強く」するのが理にかなっています。
そのため、この実験ではトップの負荷設定が105%なのです。
(逆にボトムでは、80%+α 程度になっていると思われます)
この、バーベルのみでは実現できない「トップ付近のより強い負荷」が記録の向上に有効だろうというのが、可変負荷トレーニングの理論的な根拠です。
さあ、実際の結果はどうなったでしょうか?
可変負荷 VS バーベル のゆくえ
【統制群】
バーベルグループ スクワット +5.3㎏ +2.8%
ベンチプレス +5.7㎏ +4.3%
デッドリフト -0.8㎏ +0.0%
BIG3トータル +10.2㎏ +2.1%
【実験群】
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