人生で初めて仮病を使った話
私は今日人生で初めて仮病を使った。仮病といっても肉体へのダメージが精神に来ており、とても平常通りの体調とは言えなかった。
原因は前日の体育の授業と急に入った塾の予定だ。マット運動のテストでブリッジから立ち上がった際に、普段使わない筋肉を使ったからなのだろうか、両太ももが走れなくなるほどに痛くなった。当然階段を上るのにも一苦労だ。また、個別指導塾に今後の授業の予定を取りに行ったら「今日の20時頃からのコマしか空いておらず、それ以降はいつ取れるかわからない」と言われてしまい仕方なく授業を取ることになってしまった。
それらによって溜められたストレスが私の心身を直撃した。体の疲れと心の疲れは繋がっている。だから筋トレ趣味のある人は他の人に筋トレを勧めるのだ。それを知っていた私は最近軽く筋トレを始めていた(と言っても腕立て伏せ10回スクワット10回程度だが)。しかし、体力の無い私にとって体の疲れは心の疲れに直結していた。
翌日起床。意識がはっきりとしないうちに漠然と「今日学校行きたくないな。3限目以降は実質HRと体育だし親に交渉しよう。」と考えた。今まで何回か「休みたい」と考えたことはあったが仮病を取ったことは無かった。気づいたら体が勝手に交渉に向かっていた。その日は朝から情緒不安定だった。何もしていないのに泣きそうになる、という精神状態が悪くなったことのある人にはよく共感の得られるような状態になっていた。精神状態の悪さで学校を早退するのは果たして仮病と呼べるのか?兎にも角にもブリッジと塾で精神諸共吹き飛ばされてしまう私の体力を呪うしかない。
親には反対されたものの2時間目までは授業を受けること、帰った後に勉強をすることを条件になんとか容認してくれた。本当ならもう少し理解を示して欲しかったが、情緒不安定なところをなんとか抑え込んでコミュニケーションを取っている私にそんな高等なことはできなかった。精神状態が悪いことを言っておけばよかったと後悔したが、残念ながら私は精神状態の悪さを他人に告白できるほど強い人間ではなかった。この日はお弁当の日だったので、そのお弁当を無下にしてしまったことは申し訳ないと思っている。
学校に着き、1、2時限の授業を受ける。2時間しか受けないと予め決めていたので集中して受けることが出来た。苦手なコミュ英も佳境に入っている現代文もいつもよりノートが進んでいた。
1時限目の終了後、早退に慣れている友人に早退の仕方を聞いた。保健室で診てもらい紙をもらい担任に渡せばいいようだ。私は嘘をつくのが下手だった。私が早退することを知った皆勤賞の友人からは否定的な意見を言われたが仕方ない。私の中に残っている理性で理由無く泣きそうになるのを抑え、適当にあしらった。休むと決めたものは休むのだ。弁当だって家に置いてある。
2時限目が終わり、保健室へ向かった。「すいません、昨日の夜からしんどくて登校してみたのですがダメでした」「倦怠感と頭痛みたいな感じかな?」「だいたいそんな感じです」「うーん熱は無いね、1回寝てみるか休むかどうする?」「ちょっと早退します」「この紙を担任の先生に渡してね、お大事に」
もしかしたら仮病を悟られてしまったかもしれないが、仮病をよく使う人なんてどこにでもいるのでセーフだろう。
無事教員室の担任の机に紙を置き任務完了。そうして私は早退に成功した。ブリッジのせいで満足に動いてくれない脚が少し動くようになった。体と心が繋がっていることを改めて実感した。
帰り道、今から大学に向かおうとする大学生でごった返していた。その日は雨だった。じめじめとした空気が包み込んでおり、それはまるで私の心境のようだった。心情描写が現実に存在することを私は初めて知った。
そして今私は帰りながらnoteを書いている。この出来事を残すために。