“なんにもない”の中にしかない豊かさ
お盆休みは、祖父母の家やその周辺で過ごしました。
祖父母が住む地域は過疎化が進んでおり、「遊びに行くよ」と伝えるたびに「こっちにはなんにもないよ」と言われます。
たしかに都会には、若者が集う場所や美味しい飲食店で溢れています。ビジネスのレベルも高ければ、交通の利便性も地方が勝てるわけがない。
人はそれを“豊か”と呼ぶのかもしれないけれど、その分都会には"不要なモノ"も多い気がします。
もはや都会ではなくても在宅ワークが普及し、私生活と仕事の境目がなくなったり、毎日多くの情報を目にして取捨選択を強いられたり。
現代社会は一見便利に思えますが、本当に豊かなのかと言われると自信を持てません。
「便利=豊か」という方程式は、おそらく成り立たないと私は思っています。
そこで、今回過ごした「なんにもない」場所について見ていこうと思います。
“生きる”を丁寧に。
私は祖父母が住む地域を「何もない」と思ったことは生まれてから一度もありません。なぜなら、人間が本来生きるために必要なものがすべて揃っているからです。
豊かな自然と、おじいちゃんの畑がある。畑で採れた野菜を、おばあちゃんが丁寧に料理する。包丁とまな板の音を聴きながら、夏の風で揺れるカーテンをぼーっと眺める。
これ以上の幸せがどこにあるんだろう。
祖父母自身も、「なんにもない」ことを楽しんでいるように感じます。のんびりと暮らしているようで、洗濯物を干したり、野菜を洗ったり。近所のスーパーに買い物に行って、たまたま会った知り合いと井戸端会議をしたり。
いつもせかせかと動き回っているのは、“生きること”に集中しているからでしょう。
祖父母の家に行くと必ず食卓に並ぶのは、おじいちゃんの畑で採れた野菜と魚の粕漬け。もちろん料理は祖母の手作りで、世界で最も美味しいのではないかと思っています。
この日は、おじいちゃんの畑で採れた枝豆や、トマトの漬物などもありました。
日々の生活の中で余裕がなくなると、ついウーバーイーツやコンビニ飯で済ませてしまうことがあるけれど、「ご飯を食べること」に時間をかけ、丁寧に味わうことの大切さを痛感します。
何もない生活の中で、一つひとつの瞬間を大切にすることが「本当の豊かさ」なのでしょう。
豊かな自然と、虫の声と、風の音がある。
祖父母の住む地域は自然豊かで、少し車を走らせると様々な景色が私たちを迎えてくれます。そんな自然を見ていると、仕事に忙殺されている日々が嘘なのではないか、と感じるのです。
人間には到底かなわない大きな存在を目の当たりにすると、日々の小さなことがどうでもよく思える傾向があります。
自分がやるべきタスクとか、果たすべき役割とか。現実に戻って、ちゃんと考えればどうでも良くないんだけど。「考えすぎなくていいよ」という声が、どこからか聞こえてきそうな気がして。ボーッと一点を眺めてしまいます。
私は趣味を聞かれると「仕事」と答えるくらい仕事が好き。しかし、祖父母の家を離れるときは、いつも少しだけ寂しくなります。
次に訪れるときを心待ちにしながら、目まぐるしい生活にしっかり戻るのです。
そもそも“豊か”とはなにか
一般的に「豊かさ」と聞くと、情報が簡単に手に入ることや、便利なサービスを手軽に楽しめることを思い浮かべる方が多いはず。
しかし、それが本当に豊かさと言えるのでしょうか。便利さやモノ豊富さが、私たちを心から満たしてくれているのでしょうか。
“物質的”な豊かさを追い求めるあまり、「なぜか心が満たされない」と感じるのはなぜでしょうか。
物質的な豊かさは、たしかに一時的な満足感を与えてくれるかもしれません。新しいモノを手に入れた瞬間や、便利さを実感した瞬間は純粋に「嬉しい」「楽しい」と感じるでしょう。
しかし、それだけでは「心が満たされないこと」が厄介なのです。
人によって「何で心が満たされるか」も「豊かさの定義」も異なりますが、個人的には人との繋がりや、自分自身に正直になることから心が豊かになると思っています。
人と会うことで感じるぬくもりや温かさ。自然に触れることで感じる人間としての本能。静けさの中で出会う本当の自分。
心の豊かさとは、こういったところから生まれるのではないでしょうか。
本当の豊かさは「なんにもない」場所にある
ここまで色々と書いてきましたが、「なんにもない」ことの中にこそ、本当の豊かさがあると思っています。
「なんなもない」とはつまり、「必要なものだけがあり、不要なものは存在しない概念」のこと。
何もないからこそ、目の前に存在する自然や人との繋がりに向き合うことができる。そして何よりも、自分自身と向き合うことができるのです。
情報で溢れる現代社会で「心の余裕が奪われている」と感じる方は、必要以上のもので溢れていない空間で、頭をからっぽにしてみてはいかがでしょうか。
もしくは、思い切って必要のないものを切り捨ててみるのもおすすめ。何かを手放したり、何もない空間にいったりすることでしか見つけられない幸せに気付くことができるでしょう。
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