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リヨン美食紀行の思い出〜余りものに福は宿る、キッシュ風グラタン
我が家の週末は、Otto氏の定休日が日・月なこともあり、月曜日まで続く。
翌日火曜の買い出しに向けて、消費しなくてはならない、先週のマルシェで仕入れた野菜たち。
先週は、北から帰ってきたばかりで冷蔵庫が空っぽだったせいか、反動でいろいろな野菜を大量購入してしまった。夏の5大野菜、トマトにきゅうりにナス、ズッキーニ、パプリカ。果物はメロンにネクタリンに桃。あんなに飽き飽きしていたのに、じゃがいも3kg…。
冷蔵室では、平日に使いきれなかった野菜たちが、いまかいまかと出番を待っている。
リヨン美食紀行の思い出
インスピレーションはカメラロールから生まれる。
とは、かつてエンゲル係数がぶっ飛んでいた私の、現在のモットー。
献立を考えるときは大抵、過去にいただいた美味しいものたちを見返すことから始めている。
2016年の5月、あれはまだ鋼の胃袋を持ち合わせていたころ。
胃袋友Aちゃんとともに、仲の良かったご夫妻にご一緒する形で、世界的に名高いフレンチの巨匠のひとり、ポール・ボキューズの総本山を訪れる旅をした。
今でも語り継がれるリヨン・ブルゴーニュ美食紀行だ。
まるでイッツアスモールワールドを彷彿とさせる外観。高まるテンション。
このファーストインプレッションはただしく、最初から最後までまるでアトラクションに乗っているような高揚感の連続。
ボキューズ氏がまだご存命中の2016年に訪れたものなので、今はどうなっているかわからないけれど、当時いただいたコースに沿って、お皿たちの写真を。
まずはアミューズ。
前菜はオマール海老のサラダをチョイス。
Salade de homard à la française
メインの魚は、ルジェのポワレ、パリパリのジャガイモをうろこ。
Rouget barbet en écailles de pommes de terre croustillantes
メインの肉料理は、牛フィレのロッシーニ、ペリゴールソース。
Filet de bœuf Rossini, sauce Périgueux
胸躍るチーズワゴンをはさんで、
きましたデザートワゴン。
私は滅多にデザートはとらないけれど、このときばかりはせっかくなので、いただくことに。しかもショコラ系。
なぜならこちらのデザート、リヨンにしかない老舗ショコラトリーBernachonと提携している。
ちなみに、2019年にフランスに戻ってきてみたら、パリにもBernachonが出来ていて驚いた。
チョコ好きはぜひ一度、こちらのパレドールを食べてみてほしい。
そんなチョコ好きでない私でも、目をかっぴらいてしまうくらいの美味しさ。
このページに詳しくリポートされている。
食後、ワインカーヴも探検させてもらった
いやあ、今見返してみても、この小さいからだのどこにこれだけの量が収納できるんだろう、と不思議でならない。でも、この頃はこれらをすべて平らげていた。
さらに翌日は辻調グループのリヨン校へお邪魔した後、一路ブルゴーニュへ足を伸ばす。
ディナーはボーヌという街にある、パリの深酒系友達Aちゃんがオーナーをつとめるレストラン、Le Benatonへ。こちらでもフレンチのコースを平らげた。
Le Benatonも、美味しく素晴らしいレストランなので、いつか紹介したいと思う。
ああ、書いているだけなのにお腹がふくれてくる。
まさに美食食い倒れの旅だった。
ちなみに、こんなに食べまくったというのに、パリに帰ってきて体重が減っていたのにはもっと驚いた。食べるってカロリーを使うんだな…。
ずっと気になっていた、じゃがいものウロコ
さて、ボキューズでのディナー、メインの魚でチョイスしたのが、じゃがいものパリパリうろこがついたこちらの逸品だ。月並みな言葉で申し訳ないが、すごく美味しかった。
自宅でもこんな風にじゃがいもをうろこにして何かにのっけてみることはできまいか・・・。
今日の余りものごはんで実験してみることにした。
大量買いしたパプリカも消費したかったので、今日気合いを入れてつくるのは豪華に2品としよう。
じゃがいもうろこの実験となるキッシュ的なものとバスク地方の家庭料理ピペラッドだ。
結論からいうと、この実験的キッシュ的なもの。
これまでの経験と勘をもとに適当に作ったところ、不覚にもOtto氏から「今までのタルト系で一番うまい」と太鼓判をいただいた。
なんとなんと…また偶然の産物系か。
キッシュの要領で作ったのだけど、氏いわく「これはグラタンだ」とのことで、キッシュ風グラタンと命名。
完全我流のレシピなのだけど、備忘録的に残しておこうと思う。
(なお、ピペラッドについては、大量に出来たため今週また何かの付け合わせにでもしようと思うので、またそのときに)
余りものでつくるじゃがいものキッシュ風グラタン
【具の材料】
・じゃがいも:大1個
・片栗粉:大さじ1
・玉ねぎ:2個
・ハムなど肉類:ハムを50gほど、余っていた生ハムを2枚使用
・カマンベールチーズ:1/4個
・あればローズマリー、タイムなど
【アパレイユ】
・卵:2個
・牛乳:120cc
・塩、胡椒、ナツメグ
【キッシュ風の生地】
卵が少なかったので、卵なしバージョンで。もちろん市販のものでも。
・薄力粉:170g
・塩:小さじ1/2
・バター:80g
・ぬるま湯:40ccから45cc
1、生地をつくる。薄力粉と塩をボウルにいれて混ぜ、バターを加えてスケッパーなどで切るように粉と一体化させたのち、両手のひらですり合わせるようにしてサラサラな状態にする。
その後、ぬるま湯を少しずつ加えてかき混ぜ、生地をまとめ、冷蔵庫で1時間くらい休ませる。なお、文明の利器フードプロセッサーがある方はこちらを使うと一発。
2、生地を休ませている間に、じゃがいものうろこと具の準備をする。スライサーでじゃがいもを均一の薄さに切ったのち、くりぬき器でくりぬく。
使用する型に並べてみて、だいたいの必要数を把握。今回は長方形の型を採用することにしたので、外側だけ並べてみて計算。
今回は、縦7枚、横16枚くらいで表面をカバーできそうなので、7×16=112枚、予備含めても120枚あればよさそうなことがわかる。
数が把握できたら、ひたすらくりぬき、水に浸しておく。ちょうどじゃがいも1個分ジャストで120枚できた。
くり抜いたあとに余った部分も無駄にせず、具の中にいれてしまおう。ということで、こちらも水に浸しておく。
具はシンプルに玉ねぎとハムなどの肉類、そしてこの余ったじゃがいもを使う。
フライパンにオリーブオイルを熱して、玉ねぎとハム、そしてじゃがいもの水気を切って投入し、しんなりするまでいためて軽く塩胡椒をしておく。
3、生地の空焼きをしている間に、アパレイユを作る。
型にクッキングシートをしき、冷蔵庫から出した生地を型に合わせて伸ばして敷き詰める。底面にフォークでランダムに穴をあけ、重石をして180度のオーブンで15分くらい空焼きする。
オーブンに入れる前の生地
アパレイユは、生クリームを切らしているので、牛乳で軽めに。卵2つをボウルに割り入れてよく溶きほぐし、牛乳120ccを入れてよく混ぜ、軽めの塩と胡椒、ナツメグを加えておく。
4、空焼き後の生地に、具材を詰めていく。
まずはフライパンで炒めた玉ねぎとハムを敷き詰める。
次に、アパレイユを流し込み、カマンベールチーズを適当に小さく切ってのせる。
生ハムもあったからのせてしまおう。
最後に、水にさらしておいたうろこの水をよく切って、片栗粉をまとわせ、上に敷き詰めていく。
ローズマリーとともにオーブンに入れて、200度で40分から45分くらい焼く。
案の定、液に隠れてうろこが見えなくなってしまったけど、焼けた。ローズマリーを散らしてみた。
余りもので構成された週末ごはん、ボナペティ
今日の食卓は、キッシュ風グラタンとともに、パプリカで作ったピペラッド、余りものの野菜たち、そしてバゲット。
こんな感じでよそって、いただきます。
個人的には目玉だった、ボキューズ風じゃがいものうろこが隠れてしまったのが悔やまれるが、たしかにOtto氏がいうように、いつものキッシュよりなぜか美味しい。
生クリームを牛乳にしたから?それとも生地に卵をいれなかったから??
それとも単にカマンベールのおかげ・・・??
こうして日々の実験と偶然の産物によって、料理は進化を重ねていくのだなあと、身を以て体感する月曜の夜。
じゃがいものうろこ、隠れない方法でまたリベンジしたいと思う。
フルヴィエールの丘よりリヨンの街並みを見下ろす
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