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【日本一周 京都・滋賀編12】 初日最後の銀閣寺


・メンバー

明石、尾道

・疲労の色も見えない  筆者:明石


 次はいよいよ初日最後の目的地である銀閣寺。京博からだと50分近くバスに揺られることになるため、ゴールデンスランバーを堪能するつもりだった。しかし、その願いはむなしく水泡に帰した。


 後ろの席に大学生らしき女子二人組がやってきて、「最近韓国ドラマばっかり見てるわー」と女子大生の雛形のような会話をし始めた。さらに、「そのせいで二外(大学生の履修する第二外国語の略)の中国語よりも、韓国語の方がわかるかも」とこれまた定型的なオチをつけている。


 しかし、常識の範疇における女子大生トークを展開したのはここまであって、彼女たちは自らのポテンシャルを隠していたに過ぎなかった。


 「あ、でもこれくらいならわかるかも」と、バス内で流れる中国語を日本語で同時通訳し始めたのだった。その後も、留学先での面白エピソードやハーバードからのデキる留学生の話など、到底我々の次元の及ばないトークが繰り広げられていた。


 そうして彼女たちは、京都大学へ消えていった。全然眠れなかった。


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向月台


 気をとりなおして銀閣寺へやってきた。閉門時間が近いというのもあるが、境内はほぼ貸し切りだった。地味に好きなプリン型の向月台や銀沙灘のオードブルを済ませ、メインディッシュたるひっそり閑とした銀閣を仔細に見物した。


 2階の釣鐘型の障子窓や、曲線的な欄干、こけら葺きの繊細な屋根など、肩の力の抜けたデザインはいかにも生活に馴染みそうだ。


 銀閣という名前と金閣との対比によって地味な建物と捉えられがちだけれども、噛めば噛むほど美味しい、味のある魅力に富んでいるといえるだろう。将来の我が家にとりいれたい細部の意匠を、じっくりと脳裏に焼きつけた。


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教科書の画角の銀閣寺


 尾道が金閣寺用に持ってきた三島由紀夫の「金閣寺」を手に、保険としてここでもパシャリ。


 そのあとは西日に照らされてきらきら光る洗月泉をぼんやり鑑賞した。「下の岩にたいして水の当たる位置がずれることで音が変わる。3パターンくらいあるね」と暇つぶしの極地といった会話に興じた。


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3通りの音を使いわける清水


 尾道が行ったことがなかったため、参道から少しそれて哲学の道を散歩した。桜も咲いていない哲学の道は、京都で最も侘び寂びを感じられる場所といっていいだろう。要するになにもない。


 尾道を被写体として「思索に更ける文学青年」風の写真をどうにかこうにか撮ろうとしたが、コメディから逸脱することは叶わなかった。


・An ambiguous concept ,WABISABI  筆者:尾道


 慈照寺に続く土産屋通りは、コロナ禍の影響で大半が休業していた。明石から、バスの後部座席に座っていた京大生二人組の話を聞かされつつ目的地に向かう。


 優秀な留学生に対する劣等感を吐露していたとのことだが、留学生との交流経験がない身としては、微塵も共感できぬ話題であったので、テキトーな相槌で時間を埋めた(すまん)。


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 窓口に到着し、チケットを購入。手渡されたそれは、一般的なサイズを大きく上回るもので、縦長の御朱印と言うほうが正確である。


 明石曰く、順路通りに進行しても良いが、奥の諸々は見るに足らないとのことだったので、しょっぱなから慈照寺が誇る景勝スポットに留まることにした。


※こんな事をしているくせに未だ未読です


 早速シャッターを切ってみる。なるほど、錦鏡池の向こうに銀閣が慎ましくそびえ、その両脇から松の木が顔を出す、という簡素な東山文化を象徴する一枚が撮れた。


 ついでなので、わざわざ持参した三島由紀夫の「金閣寺」(のカバーを付けた「今日の芸術」)を手に、写真を撮ってもらった。無論、金閣寺で行うのが理にかなってはいるが、明日の旅程からして鹿苑寺に行けない可能性が多分にあったため、保険の一枚を収めたというわけである。


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 満足いくまでそこでの景色を堪能したのち、一応奥の諸々も見学することにした。岩を穿つ滝の音が、放尿のそれに似ているなぁという詫び寂びもくそもないことを考えていたのは、疲労の蓄積が故である。


 明石の言葉通り、目ぼしい何かを見つけるわけでもなく、只々回遊式庭園を一周し見学を終えた。


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 帰路。「哲学の道」という聞き覚えだけはあるスポットが近所にあることを知り、惰性で立ち寄った。


 夙川公園に似た雰囲気を醸す、小川沿いの歩道であった。見る人が見れば大層な感動を享受するのであろうが「善の研究」未読の私にとっては、住宅街に溶け込む、なんてことない景色にとどまった。


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