【日本一周 北関東編7】 JAXA潜入レポ
・メンバー
明石、尾道、釧路、宮島
・夢が生きている場所 筆者:明石
入り口がわからないままぐるぐるあたりを彷徨い、やっとのことでJAXAに入り込む。この時点で予約時間は10分ほど過ぎていて、でもそこまで気にしないで入場受付へ進むと警備員のおじさんに「あと少ししかないよ!」とせき立てられた。
どうやら見学時間は30分厳守のようで、すでに10分を消化してしまった僕たちには20分しか残されていないらしい。
あ、やばいな。おじさんの焦りが感染したように今更になって焦り出した。入場チケット代わりのリストバンドを急いでもらうと、展示スーペスへと走った。
展示室内は実際に使われていたと思われる衛星や探査機があちこちに展示してあった。
キャプションも読みたかったけど、そんな暇はない。ビジュアルだけの鑑賞に留められたが、それでも少年心をくすぐられるには充分過ぎた。小中学生のときに来ていたら、冗談ではなく宇宙飛行士を志したかもしれない。
衛星はどれも断熱材として金属光沢のある膜で覆われている。手でびりっと破れてしまいそうなこのひ弱に見える素材が、宇宙空間では大きな役割を担っているという、地球と異なる環境を想定してそのために作られているという限定性が強く心を惹いた。
一見して不格好なのに、その存在理由を知ると一気に格好良く見えるものだ。
また、宇宙船の部品のひとつに、必要性をほしいままにエイリアンの脳味噌のように複雑化、膨張したものがあった。硬質な金属で作られたパイプは飴細工のようにぐにゃりと曲げられており、合理的とは言い難い道筋で絡み合っている。
到底キレイなもの、心地よいものとは思えない。しかし、なぜか強く心を惹きつけられてしまう。これは坂口安吾が「日本文化私観」で述べていたような「美しくするために加工した美しさが、一切ない」美しさと同じ文脈で語ることができる。
川崎の工場夜景クルーズはリピーターが大半を占めるように、必要性が優先されて生まれる異質さは人を魅了する。
これは僕たちの体がホメオスタシスを維持するために絶妙な兼ね合いで組織を機能させており、進化の過程でその難しさも心得ている。そのため、目的をなしとげるための無骨さに愛おしさを感じてしまうからだろうか。
あっというまに見学時間が終わると、今度は売店でお土産を買うための列に並んだ。待機場所となる廊下には、NASAの宇宙飛行士のプロジェクトグループごとの集合写真が飾ってあったのだが、これが「宇宙兄弟」で語られていた通り、本当にふざけた写真ばかりだった。
スターウォーズのジェダイのコスプレをはじめとする映画のポスター風のショットで埋め尽くされている。
国を挙げてのプロジェクトでここまでふざけられる心意気は、日本にはないなぁ。お土産は散々悩んで宇宙飛行士選抜試験の題材として有名な真っ白のジグソーパズルと宇宙食のプリンにした。
プリンは基本的にサクサクとした甘いお菓子、言われてみればプリンと気づくような、プリン味のうすいプリンであった。ジグソーパズルに関しては、いまだに引き出しの奥で静かに眠っている。
・貴重な10分 筆者:尾道
さて、知識がなくて軽く絶望した植物園であったが、熱帯雨林の植生や、食虫植物なんかを見ることはそうそうないので、見学自体は予想を超える盛り上がりを見せた…が、そのせいで後に控える筑波宇宙センターの予約時間が刻一刻と迫るのだった。
大急ぎで車を出し、現地に到着したのは、10時40分。
10時半の予約回だったので、10分の遅刻で済んだわけだが、この10分がめちゃめちゃ大きな失態だった。
現地に到着してから知る事実なのだが、ここの見学は厳密な時間区切りが敷かれていて、我々は11時までに完全撤退しなければならなかった。スタッフのおじさんに「もったいないことしたねぇ」と言われたが、本当にその通り。展示は20分で見学できるような情報量ではなかった。
スペースドームという展示館では、歴代の人工衛星やロケットのモデルの数々が、開発秘話とともに紹介されていた。遅刻しちまったせいで、あいにくキャプションまで読み込む余裕はなかったが、飛行機を見るときに抱く感情しかり、機能性だけを徹底追及した末に到達する洗練された格好良さは十分感受できたつもりだ。
足早にあれこれを見て回り、11時手前でどうにか一通りの見学を終えた。
お土産コーナーでは友人に宇宙食プリンを買った。せっかくなら自分用にも買って帰ろうかななんて思いが一瞬頭をかすめたが、パワポで作れそうなくらいにはチープなパッケージから漂う、「宇宙食ビジネス」に興ざめの感を抱き、買わずに車に戻った。
この類のお土産は、もちろん興味こそ引かれるものの、お金を出してまで食べたいかと言われたら全くそんなことはない。人から貰うくらいが丁度よいお土産だと思う。いつか誰かくれねぇかな。